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分厚い岩でできた天井がアシュレイを見下ろしている。この閉塞感はダンジョン特有のものだ。
アシュレイはクライヴと共に、転移石の力によってダンジョンの15階に到達した。
フロアを見渡せば、フライングレコーダーが壁際を飛んでいた。そして、フライングレコーダーの下に、リッキーの姿があった。
「リッキー、助けに来たぞ!」
クライヴがリッキーのもとに駆け出した瞬間、フロアに耳障りな咆哮が響き渡った。
声の主はキマイラだった。頭部はヤギ、胴体はライオン、そして尻尾は蛇。さまざまな動物のパーツが集まってできた合成獣である。
キマイラは火を吐いてアシュレイとクライヴを威嚇した。
アシュレイはお返しとばかりに、氷でできたニードルを放った。スピードに乗って氷のニードルが中空を飛んでいく。しかしキマイラは体をしなやかに動かして、攻撃をかわした。
「リッキー、元気を出せ!」
クライヴは地べたに這いつくばっていたリッキーに近づくと、体力と魔力が回復するポーションを飲ませた。
「ありがとうございます……」
リッキーがゆらりと立ち上がった。その動きは弱々しく、体の軸が定まっていない。クライヴがリッキーの背中に腕を回した。
「すみませんっ! 俺が功を焦ったばかりに……」
「反省会は後回しだ。今はあの化け物を倒すぞ」
「あいつの機動力をなんとかしないといけない。リッキー、行動遅延の魔法は使えるか?」
アシュレイが尋ねると、リッキーが「はい!」とうなずいた。
「俺が魔法で作った泥を塗りつけてやれば、相手はスロー状態になります」
「フロアの中心部に、泥を喚び出してくれ。俺が囮になってキマイラを呼び寄せる」
「大丈夫か? アシュレイ」
「ああ。俺はこんなところでは死なない。クライヴはリッキーを守ってやってくれ」
「俺、補助魔法は得意です!」
リッキーが土魔法を発動した。フロアの中心部に泥の沼が現れる。
アシュレイは浮遊石を使って、レビテーション状態になった。泥の沼の上に移動して、キマイラを挑発する。
キマイラが大きく口を開けて、火を吐き出した。
アシュレイは氷でできた盾を召喚して、紅蓮の炎を無力化した。
「くらえっ!」
中空に巨大な氷塊が現れて、キマイラの体を上から押さえつけた。そして、キマイラは泥の沼に沈み、全身が茶色になった。
「ギィィッ、アァァッ!」
キマイラの怒りの咆哮がフロアに反響した。泥まみれになったキマイラは再び立ちあがろうとしたが、そのスピードは先ほどよりも大幅に減速している。
「よーし。あとはとどめを刺すだけだな」
クライヴが鞘から片手剣を引き抜いた。流水のようになめらかな体捌きで、キマイラの頭部に斬りかかる。
研ぎ澄まされた刃が、キマイラの首を切り落とした。頭部と胴体がそれぞれ地べたに転がる。
蛇の形をした尻尾が蠢いていたが、その動きもやがて止まった。
クライヴは足元に転がっているキマイラのコアを握り潰した。
『瘴気、消失。クエストの完了を確認。帰還してください』
リッキーのギルドカードが輝き始めた。
ステータス画面を確認したリッキーは裏返った声で言った。
「け、経験値がこんなに……!? 俺は逃げてただけなのに」
「補助魔法が評価されたんだろ。よかったじゃねーか」
クライヴがリッキーの肩を叩く。
「あの……クライヴさん。俺、ともかく強くなりたくて、それで……」
「俺にもそういう時期があったよ。B級からA級になかなか上がれなかった時に、無茶なクエストに挑んでしまった」
「怒らないんですか?」
「ああ。俺が説教なんてしなくても、おまえは身をもって学んだだろう? 格上のモンスターをソロ討伐するのがいかに無謀なことか」
リッキーの瞳が潤み始める。
「クライヴさん……! 俺、クライヴさんに一生ついていきます!」
「そう言ってもらえるのは嬉しいが、いつかは独り立ちしろ」
ふたりのやりとりを見ていて、アシュレイはクライヴの懐の広さに感銘を受けた。 クライヴは頭ごなしに叱りつけるのではなく、リッキーの気持ちを理解しようと努めている。どんな説教よりもクライヴの優しさがリッキーの心に響いたことだろう。
クライヴは傲慢な男ではない。人の弱さに寄り添うことができる、繊細な感情の持ち主だ。
そのことに気づいた瞬間、鼓動が高鳴った。クライヴの笑顔を見ているだけで胸がいっぱいになる。
なんだろう、この感覚は? 心臓がトクントクンと忙しなく動いている。
「アシュレイ。酒場に帰還しよう」
「……ああ」
「どうした? ボーッとして。疲れたのか?」
「俺は大丈夫だ。リッキー。クエスト完了の記念に、キマイラの尻尾を持って帰るといい」
「えぇっ!? 俺がもらっちゃっていいんですか」
「きみの補助魔法がなければ、キマイラを倒せなかった」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
「ほらよ、リッキー!」
クライヴが、キマイラの尻尾を根元から切断した。
リッキーはキマイラの尻尾を拾い上げると、フライングレコーダーに笑顔を向けた。
「今回は先輩方にヘルプに入ってもらったけど、次回は……いつになるか分かりませんが、自力で討伐したいと思います!」
「よし。それじゃあ、酒場に向かうとしよう」
転移石の白い輝きが三人を包み込んだ。
アシュレイはクライヴと共に、転移石の力によってダンジョンの15階に到達した。
フロアを見渡せば、フライングレコーダーが壁際を飛んでいた。そして、フライングレコーダーの下に、リッキーの姿があった。
「リッキー、助けに来たぞ!」
クライヴがリッキーのもとに駆け出した瞬間、フロアに耳障りな咆哮が響き渡った。
声の主はキマイラだった。頭部はヤギ、胴体はライオン、そして尻尾は蛇。さまざまな動物のパーツが集まってできた合成獣である。
キマイラは火を吐いてアシュレイとクライヴを威嚇した。
アシュレイはお返しとばかりに、氷でできたニードルを放った。スピードに乗って氷のニードルが中空を飛んでいく。しかしキマイラは体をしなやかに動かして、攻撃をかわした。
「リッキー、元気を出せ!」
クライヴは地べたに這いつくばっていたリッキーに近づくと、体力と魔力が回復するポーションを飲ませた。
「ありがとうございます……」
リッキーがゆらりと立ち上がった。その動きは弱々しく、体の軸が定まっていない。クライヴがリッキーの背中に腕を回した。
「すみませんっ! 俺が功を焦ったばかりに……」
「反省会は後回しだ。今はあの化け物を倒すぞ」
「あいつの機動力をなんとかしないといけない。リッキー、行動遅延の魔法は使えるか?」
アシュレイが尋ねると、リッキーが「はい!」とうなずいた。
「俺が魔法で作った泥を塗りつけてやれば、相手はスロー状態になります」
「フロアの中心部に、泥を喚び出してくれ。俺が囮になってキマイラを呼び寄せる」
「大丈夫か? アシュレイ」
「ああ。俺はこんなところでは死なない。クライヴはリッキーを守ってやってくれ」
「俺、補助魔法は得意です!」
リッキーが土魔法を発動した。フロアの中心部に泥の沼が現れる。
アシュレイは浮遊石を使って、レビテーション状態になった。泥の沼の上に移動して、キマイラを挑発する。
キマイラが大きく口を開けて、火を吐き出した。
アシュレイは氷でできた盾を召喚して、紅蓮の炎を無力化した。
「くらえっ!」
中空に巨大な氷塊が現れて、キマイラの体を上から押さえつけた。そして、キマイラは泥の沼に沈み、全身が茶色になった。
「ギィィッ、アァァッ!」
キマイラの怒りの咆哮がフロアに反響した。泥まみれになったキマイラは再び立ちあがろうとしたが、そのスピードは先ほどよりも大幅に減速している。
「よーし。あとはとどめを刺すだけだな」
クライヴが鞘から片手剣を引き抜いた。流水のようになめらかな体捌きで、キマイラの頭部に斬りかかる。
研ぎ澄まされた刃が、キマイラの首を切り落とした。頭部と胴体がそれぞれ地べたに転がる。
蛇の形をした尻尾が蠢いていたが、その動きもやがて止まった。
クライヴは足元に転がっているキマイラのコアを握り潰した。
『瘴気、消失。クエストの完了を確認。帰還してください』
リッキーのギルドカードが輝き始めた。
ステータス画面を確認したリッキーは裏返った声で言った。
「け、経験値がこんなに……!? 俺は逃げてただけなのに」
「補助魔法が評価されたんだろ。よかったじゃねーか」
クライヴがリッキーの肩を叩く。
「あの……クライヴさん。俺、ともかく強くなりたくて、それで……」
「俺にもそういう時期があったよ。B級からA級になかなか上がれなかった時に、無茶なクエストに挑んでしまった」
「怒らないんですか?」
「ああ。俺が説教なんてしなくても、おまえは身をもって学んだだろう? 格上のモンスターをソロ討伐するのがいかに無謀なことか」
リッキーの瞳が潤み始める。
「クライヴさん……! 俺、クライヴさんに一生ついていきます!」
「そう言ってもらえるのは嬉しいが、いつかは独り立ちしろ」
ふたりのやりとりを見ていて、アシュレイはクライヴの懐の広さに感銘を受けた。 クライヴは頭ごなしに叱りつけるのではなく、リッキーの気持ちを理解しようと努めている。どんな説教よりもクライヴの優しさがリッキーの心に響いたことだろう。
クライヴは傲慢な男ではない。人の弱さに寄り添うことができる、繊細な感情の持ち主だ。
そのことに気づいた瞬間、鼓動が高鳴った。クライヴの笑顔を見ているだけで胸がいっぱいになる。
なんだろう、この感覚は? 心臓がトクントクンと忙しなく動いている。
「アシュレイ。酒場に帰還しよう」
「……ああ」
「どうした? ボーッとして。疲れたのか?」
「俺は大丈夫だ。リッキー。クエスト完了の記念に、キマイラの尻尾を持って帰るといい」
「えぇっ!? 俺がもらっちゃっていいんですか」
「きみの補助魔法がなければ、キマイラを倒せなかった」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
「ほらよ、リッキー!」
クライヴが、キマイラの尻尾を根元から切断した。
リッキーはキマイラの尻尾を拾い上げると、フライングレコーダーに笑顔を向けた。
「今回は先輩方にヘルプに入ってもらったけど、次回は……いつになるか分かりませんが、自力で討伐したいと思います!」
「よし。それじゃあ、酒場に向かうとしよう」
転移石の白い輝きが三人を包み込んだ。
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