13 / 18
13
しおりを挟む
玲司と暮らし始めてから、三日が経った。
お互い夜遅くまで仕事があるので、玲司のマンションで一緒に過ごす時間は少なかった。玲司は書評の締め切りを抱えていて、タブレットにセットしたキーボードを夢中で叩いている。
真剣な表情に見惚れてしまう。
ひとつ屋根の下にいるのに、玲司の手が陽翔の体に伸びてくることはなかった。それだけ大事にされているんだと思いつつも、寂しくてたまらない。
でも、もっと構ってほしいと玲司に言うことはできなかった。いい大人が子どものように甘えてきたら興醒めだろう。
リビングの壁際に置かれたラックには、小さなサボテンが飾られている。
これだと陽翔は思った。
与えられる水が少なくても平気なサボテンのように、自分も強くなればいい。ほんの少しの愛情でも平気な自立した存在、サボテン系男子を目指そう。
陽翔はソファに座ると、ワイヤレスイヤホンを身につけた。そして、今日のプロ野球のハイライトをまとめた動画をスマートフォンで視聴した。ジュラシックスは渕上の活躍により勝利を収めている。
動画が終わりに差しかかった時、玲司がソファにやって来た。陽翔の隣に座る。
「渕上、今日も打ったみたいだね」
「はい。三安打五打点です」
「すごいなあ。さすが、陽翔くんの推しだね」
腕と腕が触れ合った。玲司の体温を感じる。陽翔は肩を預けたくなったが、踏みとどまった。自分はサボテン系男子になるのだ。ベタベタして、玲司に甘えるわけにはいかない。
「陽翔くん、なんだか顔つきが変わったね。すごくキリッとしてる」
「俺、目標ができたんで。頑張ります」
陽翔はソファから立ち上がった。
「シャワー浴びてきます」
「うん」
バスルームで陽翔は全身を清めた。もしかしたら今夜、玲司に求められるかもしれない。
いや、そんな風にエッチなことをされたいと期待するのはサボテン系男子としてはいかがなものか。性欲なんてありませんという態度を貫くべきである。
バスルームを出ると、陽翔は玲司に声をかけた。
「先に休みますね」
「分かった。おやすみ」
「おやすみなさい」
ダブルベッドに身を投げ出す。広々としたベッドにひとりでいると、寂しさが募ってきた。
どうして自分はこんなにも弱いのだろう。玲司は手を出してこないけれども、一緒にいてくれるではないか。
目を閉じて、砂漠の風景を思い描く。
サボテン系男子への道のりはなかなかに険しかった。
お互い夜遅くまで仕事があるので、玲司のマンションで一緒に過ごす時間は少なかった。玲司は書評の締め切りを抱えていて、タブレットにセットしたキーボードを夢中で叩いている。
真剣な表情に見惚れてしまう。
ひとつ屋根の下にいるのに、玲司の手が陽翔の体に伸びてくることはなかった。それだけ大事にされているんだと思いつつも、寂しくてたまらない。
でも、もっと構ってほしいと玲司に言うことはできなかった。いい大人が子どものように甘えてきたら興醒めだろう。
リビングの壁際に置かれたラックには、小さなサボテンが飾られている。
これだと陽翔は思った。
与えられる水が少なくても平気なサボテンのように、自分も強くなればいい。ほんの少しの愛情でも平気な自立した存在、サボテン系男子を目指そう。
陽翔はソファに座ると、ワイヤレスイヤホンを身につけた。そして、今日のプロ野球のハイライトをまとめた動画をスマートフォンで視聴した。ジュラシックスは渕上の活躍により勝利を収めている。
動画が終わりに差しかかった時、玲司がソファにやって来た。陽翔の隣に座る。
「渕上、今日も打ったみたいだね」
「はい。三安打五打点です」
「すごいなあ。さすが、陽翔くんの推しだね」
腕と腕が触れ合った。玲司の体温を感じる。陽翔は肩を預けたくなったが、踏みとどまった。自分はサボテン系男子になるのだ。ベタベタして、玲司に甘えるわけにはいかない。
「陽翔くん、なんだか顔つきが変わったね。すごくキリッとしてる」
「俺、目標ができたんで。頑張ります」
陽翔はソファから立ち上がった。
「シャワー浴びてきます」
「うん」
バスルームで陽翔は全身を清めた。もしかしたら今夜、玲司に求められるかもしれない。
いや、そんな風にエッチなことをされたいと期待するのはサボテン系男子としてはいかがなものか。性欲なんてありませんという態度を貫くべきである。
バスルームを出ると、陽翔は玲司に声をかけた。
「先に休みますね」
「分かった。おやすみ」
「おやすみなさい」
ダブルベッドに身を投げ出す。広々としたベッドにひとりでいると、寂しさが募ってきた。
どうして自分はこんなにも弱いのだろう。玲司は手を出してこないけれども、一緒にいてくれるではないか。
目を閉じて、砂漠の風景を思い描く。
サボテン系男子への道のりはなかなかに険しかった。
30
あなたにおすすめの小説
ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー
紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。
立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。
※攻めと女性との絡みが何度かあります。
※展開かなり遅いと思います。
十年越しの恋心、叶えたのは毒でした。
碓氷雅
BL
支配や管理で愛情を伝えんとするDomとそれに応えることで愛情を伝えんとするSub。
そんなDom/Subユニバースの世界。
十年、忘れることはなかった初恋の相手を、とある会場で見かける。
「ワインのすべてに青酸カリを入れた!」その一言でパニックに陥った中のことだった。その相手はワイングラスを傾けていて――?!
▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀
第二章を書き終わりましたので小出しにしていこうと思います。
死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる
ユーリ
BL
魔法省に悪魔が降り立ったーー世話係に任命された花音は憂鬱だった。だって悪魔が胡散臭い。なのになぜか死神に狙われているからと一緒に住むことになり…しかも悪魔に甘やかされる!?
「お前みたいなドジでバカでかわいいやつが好きなんだよ」スパダリ悪魔×死神に狙われるドジっ子「なんか恋人みたい…」ーー死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる??
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
恋なし、風呂付き、2LDK
蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。
面接落ちたっぽい。
彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。
占い通りワーストワンな一日の終わり。
「恋人のフリをして欲しい」
と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。
「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
記憶喪失から始まる、勘違いLove story
たっこ
BL
事故に遭い目が覚めると、自分が誰かもわからなくなっていた陽樹。同居していたという同僚の月森との生活を始める。
職場でも家でも一緒、さらに休日までも一緒に過ごしているうちに、陽樹は月森を意識し始める。
そんなとき、月森に振られた記憶を不意に思い出して……。
●年齢制限ありの回は ※
軽い表現の回は * を表示します。
描写は物語の終盤になる予定です。
《今作品は完全に不定期の更新となります。ご了承くださいませ》
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる