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キスもペッティングもしないまま、三週間が経った。
玲司は仕事の準備や読書、書評の執筆で忙しそうにしている。
朝晩のごはんは一緒に食べるけれども、寝るところは別。スキンシップはなし。これではまるで倦怠期のカップルだ。自分たちは付き合ってまだ数ヶ月。もっと甘い雰囲気になってもいいのではないか。
玲司のつれない態度に対して、不満が募ってくる。
しかし、自分はサボテン系男子になると決めたのだ。玲司がそばにいてくれるだけで満足しないといけない。
円福飯店に出勤した陽翔は、仕事に没頭した。
中華鍋を夢中で振っていると、余計なことを考えずに済んだ。
「今日のまかないはグリーンチャーハンです!」
アイドルタイムに、野沢が彩りのいいチャーハンを作ってくれた。サヤエンドウとレタス、そしてパセリを使ったらしい。陽翔はヘルシーな見た目のチャーハンをスプーンで口に運んだ。
野菜の水分によってごはんがベタッとしている。それに、醤油がちょっと足りない。
「どうですか、陽翔さん。お味の方は。正規メニューになれますかね?」
「……申し訳ないけど、まだまだ改良の余地があると思う。お客様がチャーハンに期待するのはヘルシーさじゃない。ガツンとした食べ応えだ。もうちょっと炒めてごはんをパラパラにしないと、売り物にはならないと思う」
陽翔の感想を聞いたあと、野沢は目に見えて不機嫌になった。
「随分とハッキリ言ってくれますね。プライドが傷つきましたよ」
その瞬間、陽翔は悟った。
言葉は時に凶器となり、相手を傷つける。それなのに陽翔は、思ったことを馬鹿正直に言語化してしまった。自信家の野沢には、もっと褒め言葉を交えたフィードバックを送った方がよかった。
「陽翔さん、なんだか最近顔つきがキツいですよね。プライベートでいろいろあるのかもしれないけど、私に当たるのはやめてください」
「まあまあ、野沢くん。そのぐらいで。明日またチャレンジすればいいじゃない」
雅代がフォローしてくれたが、野沢の表情は晴れなかった。
陽翔は顔面蒼白になった。この先、野沢とどうやってコミュニケーションを取ればいいだろう。
玲司に対しても、寂しいと思っていることを率直に告げたら嫌われてしまうかもしれない。
陽翔は自分の気持ちを言葉にすることに対して、臆病になってしまった。
玲司は仕事の準備や読書、書評の執筆で忙しそうにしている。
朝晩のごはんは一緒に食べるけれども、寝るところは別。スキンシップはなし。これではまるで倦怠期のカップルだ。自分たちは付き合ってまだ数ヶ月。もっと甘い雰囲気になってもいいのではないか。
玲司のつれない態度に対して、不満が募ってくる。
しかし、自分はサボテン系男子になると決めたのだ。玲司がそばにいてくれるだけで満足しないといけない。
円福飯店に出勤した陽翔は、仕事に没頭した。
中華鍋を夢中で振っていると、余計なことを考えずに済んだ。
「今日のまかないはグリーンチャーハンです!」
アイドルタイムに、野沢が彩りのいいチャーハンを作ってくれた。サヤエンドウとレタス、そしてパセリを使ったらしい。陽翔はヘルシーな見た目のチャーハンをスプーンで口に運んだ。
野菜の水分によってごはんがベタッとしている。それに、醤油がちょっと足りない。
「どうですか、陽翔さん。お味の方は。正規メニューになれますかね?」
「……申し訳ないけど、まだまだ改良の余地があると思う。お客様がチャーハンに期待するのはヘルシーさじゃない。ガツンとした食べ応えだ。もうちょっと炒めてごはんをパラパラにしないと、売り物にはならないと思う」
陽翔の感想を聞いたあと、野沢は目に見えて不機嫌になった。
「随分とハッキリ言ってくれますね。プライドが傷つきましたよ」
その瞬間、陽翔は悟った。
言葉は時に凶器となり、相手を傷つける。それなのに陽翔は、思ったことを馬鹿正直に言語化してしまった。自信家の野沢には、もっと褒め言葉を交えたフィードバックを送った方がよかった。
「陽翔さん、なんだか最近顔つきがキツいですよね。プライベートでいろいろあるのかもしれないけど、私に当たるのはやめてください」
「まあまあ、野沢くん。そのぐらいで。明日またチャレンジすればいいじゃない」
雅代がフォローしてくれたが、野沢の表情は晴れなかった。
陽翔は顔面蒼白になった。この先、野沢とどうやってコミュニケーションを取ればいいだろう。
玲司に対しても、寂しいと思っていることを率直に告げたら嫌われてしまうかもしれない。
陽翔は自分の気持ちを言葉にすることに対して、臆病になってしまった。
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