「チートでも目立たずにスローライフを送るための」実践講座

蛍さん

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2、ペットを愛でよう!

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「えー、ドラゴンさん。
あなたの飼い主は私という認識でよろしいでしょうか?」

木の葉で少し盛り上がっている場所で座り込む小さなドラゴンに、リグは何故か敬語で話しかける。

(座り込んでる姿も無茶苦茶可愛いな…って、さっきは良く見えなかったけど、この子の翼なんかフサフサしてない?


触ってみたい…)

声を聞いて、小さなドラゴンはリグの方に体を向けた。
リグの不躾な目線に少し怯えたような表情を見せたものの、攻撃する様子も特にない。

(小さいけど、一応魔物の中で一番強いドラゴンなわけだし、一応警戒しておいて損はないよね。見たことない容姿だし。

なんかこんな可愛い生物に警戒って凄く罪悪感があるんだけど…)

リグがそんなことを考えている間に、小さなドラゴンは、翼を広げて羽ばたかせた。

(飛ぶ!)

リグは瞬時に剣の柄に手をかけた。
ドラゴンの飛行能力は非常に高く、目で追うことも難しい種さえ存在する。
今の状況で襲われば、魔法では間に合わない可能性があった。

そして、小さなドラゴンは、予想通り飛び上がった。
進行方向は、真っ直ぐリグの方。
しかし、リグは剣の柄から手を離していた。
その手は、自然に口元へと持っていかれる。

小さなドラゴンの飛行速度は…とても、遅かった。

(と…飛んでいる…

一生懸命翼動かしてるうううううう!
おっそい!
おっそいけど!そこが良い!

寧ろそれが全てでしょ!

天使かよ…)

口元を手で覆っていても分かる程のにやけ顔をさらけ出しながら、膝をついて悶え始める。
一通りのたうち回って、座り込んだ状態で顔を上げると、すぐ側に小さなドラゴンの姿があった。
ドラゴンは、進むわけでもなくその場ではばたき続いている。
心無しかしんどそう見えなくもない。

(近い!眩しい!

って…どうすれば良いんだろう、これ。

えっと…膝に乗せれるように、座り方変えてみる…とか?)

最早、警戒するとかそういった考えはとっくに焼却炉で燃やし尽くされ、胡座になって迎い入れる姿勢を見せる。
すると、早速ドラゴンはリグの膝に入り込んで、位置が気になるのかもぞもぞと動き出す。
しばらくは動き続けた後、リグと同じ向きに体制を直して、尻尾を丸めた。
その表情はどことなしに満足そうだ。

(可愛ッ!

えっ何この生命物体。
可愛すぎだろ。
これはもう悟り開くわ…というか最早開いたわ…

鱗の感触気持ち良すぎるんだけど…

これって、最初の質問に対する肯定なのかな?)

悟ったように真顔でドラゴンを見つめるリグが、丸まってうとうととし始めたドラゴンに話かける。

「えっと…ドラゴンさん。

それで、君の飼い主は僕ってことで大丈夫かな?」

小さなドラゴンは、答える代わりに、リグの指の位置まで移動して、それに額を擦りつけて甘えた。

(は~

うん、もう死ぬかもしれない。

後悔なく浄化されそう。)

リグは内面を一切悟らせない完璧なポーカーフェイスで、笑顔を浮かべ続ける。
というか、もう停止していた。

小さなドラゴンは、指を甘噛みし始めていた。

しばらく放心状態だったリグが夢の世界から帰ってきて、指を慎重に動かしながら、ドラゴンに話しかけた。

「うん、それじゃあ名前も決めないとね。

今考えた候補挙げていくから、気に入ったのがあったら反応するんだよ?」

ドラゴンは甘噛みをやめて、リグの顔を見上げた。

「じゃあ行くよ。

コク
クロ
マクロ
ブラク
ジェット
インキー
ノワール
シュバルツ
プレート
ネーロ
プレート
アーテル
漆黒に抱かれし天空の覇者
…」

いくら挙げても、小さなドラゴンは首をかしげるばかり。
一向に反応を見せようとはしない。

その様子に、リグは、もしかして、と一つの言葉を口にした。

「…ドラゴンさん」

小さなドラゴンは嬉しそうに顔を上げて、声を出した。

「ぴぎゅ!」

(うん、もう、名前とか大丈夫かな。

この尊さを人類が表すことは出来なかったんだ。

ほんと反則でしょ。

ぴぎゅって、ぴぎゅって言ったよあの子。

はー、尊い。)

膝を動き続けるドラゴンさんは、未だに鳴き続けている。

(可愛いけど、やっぱりそのまま連れ出す訳には行かないよね。

ドラゴンなわけだし。

可哀想だけど、人目のあるところでは鞄の中で大人しくしてもらうしかないかな。

防音の魔法かけとけば、鞄の中の音は周りにもれないだろうし、大丈夫かな。)

「わかった。じゃあ君はドラゴンさん…はちょっと長いから、ドラさんだ。

ドラさん、よく聞いてね?
人目のつくところで、ドラさんを出す訳には、いかないんだ。
この鞄の中で、大人しくしててくれる?」

リグが、最初から持っている、肩からかけるタイプの鞄を、ドラさんが入りやすいように大きく口を拡げてみせた。

ドラさんは、少し嫌そうな顔をしたけれど、心を鬼にしたリグが撤回するつもりがない事を察すると、大人しく鞄の中に入った。

(この鞄も初期装備で、ぼろぼろだし、すぐ買い替えないと。

それにしても、鞄に入る時のドラさん可愛いかったな~

でも、流石にずっとこのまま居させる訳にもいかないし、早く街に入らなきゃ。)

鞄の中では、ドラさんがいいポジションを取れたのか、動かなくなった。

(でも、街に入るのにも色々コツが必要なんだよね。

最初にやらなきゃいけない事は…)

リグは、ドラさんがおとなしくなったのを確認すると、気合いを入れるように声を上げた。


「一狩り行こうぜ!」


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