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第3章 恋してはいけない相手
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【新校舎1年A組の教室】
教室に入ると、何だかクラスメイトの視線が一斉に集まってるけど…
「ねえ、瀬戸君達が魔族をやっつけたって本当?」
「えっ?」
遠山さんが何で知ってるんだろう?
「ワイワイ、ガヤガヤ」
そうか、昨日の戦い誰かに見られてたみたいだ。
「本当に魔族が出たの?」
「ああそうだ、俺たちがやっつけた」
「ほらね、やっぱり魔族は居たんだ。お父さんが言った通りよ。警察の人達じゃ手に負える相手じゃなくて困ってたの」
遠山さんのお父さん刑事なんだね。
「勇者様は?来なかったの?」
大岡さんは勇者が大好きらしい。
「ねえ、勇者様よ、勇者様。助けに来てくれた?」
「はっ、だりぃ。勇者なんて居るかよ」
「なーんだ。魔族倒したの勇者様じゃないんだ。本当にあんた達なの?信じられなーい」
「悪かったな、勇者じゃなくて」
「魔族をやっつけるのは、勇者様じゃなくちゃねぇ」
そりゃ僕達は勇者じゃないですけど…
でも、カプセルに選ばれたんだから、これから戦って行かなくちゃならないんだ。
【カフェ】
《ランチを食べる大河、翔、司、蓮》
今日は先生達の都合で特別クラスまでまだ時間が有る。
「何で僕は、ランチまでお前達と一緒にしなければならんのだ」
「だりぃ、誰も頼んでないぞ」
「鬼嫁の弁当じゃねえのかよ?」
「そんな物は無い」
「頼めば作ってくれるんじゃないの?」
「良いか大河。女子なら頼まれなくても作るものだ」
そうなの?
何か昔の男みたいだね、蓮君。
まあ、僕も古典の世界で育ったから人の事言えないけど、女性のこと「こう有るべき」っていうのはあんまり無いな。
そりゃあ、理想は有るけどね。
「美味っ」
「翔、ガツガツ食べるな、行儀悪い。ほら、こぼしたぞ」
蓮君、翔の事も名前で呼んだ。
何だかんだ言いながら、仲良くなって来てるよな、僕達。
《スマホの通知音が鳴る》
「何だ?大河。女からのメールか?」
司はすぐそういう事言うし。
《スマホを見る大河》
「女性には違い無いけど…」
お婆ちゃまからだ。
え?今度のおさらい会の序開き?
僕が踊るの?
梅の春か…
清元は唄の間が取りにくいんだよな。
今の僕にはまだ難しいよ、梅の春は。
メール
「千代の友鶴ではいけませんか?常磐津なら弾けるから踊りやすいです」
メール
「友鶴で良いです。しっかりさらっておきなさい。お休みには帰って来るのよ。見てあげるから」
メール
「はい」
とは言ったものの、女の踊りは得意じゃないんだよな。
梅の春は男だから、家元はそっちが良いと思ったんだろうけど…
やっぱり清元より常磐津の方が踊りやすい。
お稽古は厳しいんだよね。
普段は優しいお婆ちゃまなんだけど。
「なあなあ、これからどっか行かねえか?」
「だりぃ」
「ったあく、司は「だりぃ」しか言わねえな」
「僕は勉強が有る。一年坊主に付き合ってる暇など無い」
「ああ、そうですかっ?大河は?」
「ごめん」
「んだよ、皆して」
【旧校舎の講堂】
ここは板の間だから、トンしたら響きそうだね。
まあ、床の下に瓶は入れてないだろうけどね。
トンしたらちゃんと響かないと踊りにくい。
さて、お稽古しますか。
「チャチャチャチャーン、チャンチャン。霞たーぁぁ、つーぅーチーンチンチンチンチンチンチンそらのどーぉぉかなるーぅぅぅぅぅー」
【廊下】
《トントンと床を踏む音が聞こえる》
「何の音かしら?」
《音のする方へ歩く優里香先生》
【講堂】
《優里香先生は入り口から中を見るとハッとして足を止める》
「(大河君?…踊ってる…何か歌いながら…)」
《踊る大河を見ている優里香先生》
「(何だか不思議な空間に迷い込んだみたい。ちょっと、声をかけづらい感じね)」
「優里香、何してるの?」
「しーっ」
《優里香先生と紗羅先生に気付かず集中して踊る大河》
「歌舞伎?女みたいね」
《と小声で言う紗羅先生》
「恵ぃの、末ぇやー、契ぃるーらーぁぁ、んーんーんーーん」
《パチパチパチ拍手する紗羅先生と優里香先生》
「あ…」
見られちゃった。
「いつからそこに?」
「結構前から見てたわよー」
「気付かなかった」
「凄い集中力だわ」
「でも、何で日本舞踊なワケー?」
「おさらい会が有って、序に踊らないといけなくて…」
「習ってるのー?日本舞踊」
《興味津々で根掘り葉掘り聞く紗羅先生》
「家元の孫に生まれちゃったから…」
はあ…
紗羅先生の質問攻め。
《答える大河に目を丸くする二人》
「踊りが好きとか嫌いとか考える前に、当たり前に毎日の生活の中にお稽古が有ったと言うか…」
「へー、そうなんだー」
「あ、先生時間」
「わっ、本当」
「そろそろ教室に行きましょう」
【旧校舎の教室】
僕が教室に戻ると、もう皆んな揃っていた。
「何だよ大河。先生達と一緒に来やがった」
そこ、突っ込まないで。
「さあ、始めるわよー」
紗羅先生が分厚い歴史書を持っ来て開いた。
昔天界で精霊と魔族の戦いが有った事。
天界で負けた魔族が地に降りて来た事。
この地は一度壊滅状態になった事。
勇者が現れて魔族を退治した事など、ここでは魔族達との戦いの歴史を勉強したり、現在の魔族の事を先生達から報告されたりするんだ。
武器の手入れなんかもここでする。
これは昔勇者が使っていた物だそうだ。
精霊から貰ったんだって。
武器の手入れが終わったら、裏庭に出て訓練だ。
【裏庭】
僕も早くスキルを身に付けないと。
戦闘用アンドロイド相手にバトルする。
本当こんな物まで有る時代に、この武器は確かに古臭いけど、魔族にはこれしか通用しないんだから仕方ない。
でも、何だか蓮君の杖初めの時と少し変わった気がするよね。
スキルを覚えた時赤く光ってだけど、あれは宝石みたいなのが輝いてたんだよな。
「さーて、次にスキルを覚えるのは誰かしらねー」
「俺俺、ぜってえ俺が覚えてやっかんな」
「ふっ、だりぃ。順番なんてどうでも良い」
「この僕が2つ目のスキルを覚えるという事も有りうるな」
僕だって、頑張るんだ。
優里香先生魔族とのバトルの時毎回来るつもりなのかな?
だったら僕がしっかり守らないと。
僕はガーディアンなんだ。
でも…
僕、本当に優里香先生の事好きになっちゃったのかな?
もしそうなら、お婆ちゃまに知られたら大変だぞ。
師弟関係の恋愛はいけない、っていつも言われているんだ。
まあ、僕は家元がお婆ちゃまだから有り得ないけど、代稽古の姉弟子がそれに当たる。
「弟子が師匠に恋をするのは、簡単だ。でもそれは芸に惚れているのだから、弟子に手を付けたりしちゃいけないよ」って、お弟子さんを持っている名取さん達にそう言っている。
「魔族、いつ来ても良いぞ。俺がやっつけてやっかんな」
「でも、何だか可哀想な気がするな」
「はあ?お前はバカか?何故魔族などに情けをかける?」
「大河は甘いんだよ」
「魔族だって、僕達と同じように家族とか居るのかな?って」
「居るわよー。だから増えてるのよー」
「ボスのような者が居るのならば、そいつを叩けば早いのではないか?」
「ボスねえ、魔王が居るわよー」
「魔王だあ?ゲームじゃあるめえし、魔王だ勇者だって、バカバカしい」
「魔王がこの世界を自分達の物にしようとしてるのよー」
「だって、勇者が倒したんじゃねえのかよ?」
「ゲームだってー、倒しても倒しても復活するでしょーう?」
「するな、三度は。倒す度にバージョンアップして。はあ、だりぃ、マジ生きてたのかよ魔王」
「ええ、生きていたの。そして残った魔族達と再建を始めた」
「この世界をって、他に行くとこねえのかよ?」
「元は天に居たのよねー、悪い事するもんだから、精霊に追い出されたってわけよー。だ・か・らー、行き場所は無いのねー」
「共存する事出来ないのかな?戦わないで」
「本当大河君は甘いわねー。人が襲われてるの。向こうは共存なんて考えてないわよ。人間を全て殺して、この世界を魔族の物にしようとしてるの。昔みたいに」
「あの時勇者が現れなければ、人間は絶滅して、この世界は魔族の物になっていたでしょうね」
「勇者は人間だから死んじまったけど、魔王は生きてたってか。どんだけ長生きなんだよ」
【学生寮】
翔と司と蓮君は夕食を食べに外に出たけど、僕はちょっとストレスが有るから…
お婆ちゃまの会で序の舞を踊るのは、ちょっとだげストレスになってるみたいだ。
だから、ストレス解消に音楽を聴いてる。
僕の初恋のピアニスト、マリア・マルタさんのシューマン。
初恋の人なんだ、本当に。
お婆ちゃまより年上なんだけど、そんなの知らなかった。
僕が12歳の時初めて彼女のショパンコンクールの時の第1コンチェルトを聞いて、名前と演奏しか知らなかったけど恋してしまったんだ。
あんなに美しい女性だなんて、後から知った。
お年を召されても美しくて、素敵なお婆様だよね。
ああ、この弾き方…
もう、そこが彼女なんだよ。
素敵だよな、本当に。
はあ…ついため息が出てしまう。
《シューマンのピアノコンチェルトを最後まで聴いて余韻に浸る大河》
はあ、気持ち良い。
さて、僕もお腹が空いて来たぞ。
夕食を食べに行くかな。
どうしよう?
取り敢えずキッチンに行ってみるか。
何か適当に作って食べよう。
【キッチン】
うーん、ご飯は有るか…冷たいけど。
冷蔵庫は…卵と、豚肉。
野菜は有るかな?
玉ねぎと人参と…
良し。
フライパンに油を引いて温めてと。
豚肉に火が通ったら野菜を入れて塩胡椒だな。
ご飯を入れて少し炒めたらもう一度味を整えて…
僕はここでケチャップは使わないんだ。
「美味しそうな匂いがしてるわね」
《ニコニコしながら優里香先生がやって来る》
「食べる?」
「え?良いの?」
「二人分ぐらい作れるよ」
「そう?じゃあ頂こうかしら。フフフ」
卵にマヨネーズを入れると、ふっくら焼けるんだよな。
後はトマトソースをかけてオムライスの出来上がり。
「こっちも出来たわよ~」
優里香先生がサラダとスープを作ってくれた。
本当に手際良くサッと作るよな。
慣れてるんだね。
あ、誰かの為に作ったりするのかな?
羨ましいぞ。
【ダイニングテーブル】
《食事をする優里香先生と大河》
「男の子にお料理作ってもらったの初めてだわ」
「え?作ってくれないの?」
「誰?」
「彼氏」
「そんな人居ないもの」
「良かった。ライバルが少なくて」
「少なくて?」
「先生結構男子に人気だから」
「あら、知らなかったわ。フフフ」
教師と生徒だけど、この特別クラスでは先生と僕達は一つのチームなんだって。
だから、ここでは友達みたいに話すように言われている。
作法にうるさく育ったから、最初は戸惑ったけど、だいぶ慣れて来た。
勿論目上の人なのだから、敬意を払う必要が有ると僕は思っているけどね。
「美味しい。お料理はお母様から?」
「内弟子さんから。母親は居ないんだ」
「まあ…ごめんなさい」
「良いよ、謝らなくても。僕が小さい時離婚して家を出て行った」
「そう…」
「普通の暖かい家庭って、どんなだろうな…」
「大河君…」
「優しいお父さんとお母さんに可愛い子供…女の子が良いな。優里香先生はどっちが欲しい?」
「え?」
「そんな家庭を二人で築きませんか?」
「あら、プロポーズなら大人になってから聞くわ」
「あ、今のセリフ忘れないよ。大人になったらもう一度言うからね」
「良いわよ。その時本当に私の事好きになってくれていたら」
「あ、その言い方は信じてないな」
「だって、今の貴方は本気じゃないでしょう?からかわれてるとしか思えないもの」
「うーん…」
「(本気になられても困るけれど…教師と生徒だもの)」
やっぱり心のどこかに、好きになってはいけないというブロックが有るのかな?
でも、人を好きになる時って、好きになろうとしてなるものじゃないし、いけないとわかっていても好きになってしまうものだよ。
教室に入ると、何だかクラスメイトの視線が一斉に集まってるけど…
「ねえ、瀬戸君達が魔族をやっつけたって本当?」
「えっ?」
遠山さんが何で知ってるんだろう?
「ワイワイ、ガヤガヤ」
そうか、昨日の戦い誰かに見られてたみたいだ。
「本当に魔族が出たの?」
「ああそうだ、俺たちがやっつけた」
「ほらね、やっぱり魔族は居たんだ。お父さんが言った通りよ。警察の人達じゃ手に負える相手じゃなくて困ってたの」
遠山さんのお父さん刑事なんだね。
「勇者様は?来なかったの?」
大岡さんは勇者が大好きらしい。
「ねえ、勇者様よ、勇者様。助けに来てくれた?」
「はっ、だりぃ。勇者なんて居るかよ」
「なーんだ。魔族倒したの勇者様じゃないんだ。本当にあんた達なの?信じられなーい」
「悪かったな、勇者じゃなくて」
「魔族をやっつけるのは、勇者様じゃなくちゃねぇ」
そりゃ僕達は勇者じゃないですけど…
でも、カプセルに選ばれたんだから、これから戦って行かなくちゃならないんだ。
【カフェ】
《ランチを食べる大河、翔、司、蓮》
今日は先生達の都合で特別クラスまでまだ時間が有る。
「何で僕は、ランチまでお前達と一緒にしなければならんのだ」
「だりぃ、誰も頼んでないぞ」
「鬼嫁の弁当じゃねえのかよ?」
「そんな物は無い」
「頼めば作ってくれるんじゃないの?」
「良いか大河。女子なら頼まれなくても作るものだ」
そうなの?
何か昔の男みたいだね、蓮君。
まあ、僕も古典の世界で育ったから人の事言えないけど、女性のこと「こう有るべき」っていうのはあんまり無いな。
そりゃあ、理想は有るけどね。
「美味っ」
「翔、ガツガツ食べるな、行儀悪い。ほら、こぼしたぞ」
蓮君、翔の事も名前で呼んだ。
何だかんだ言いながら、仲良くなって来てるよな、僕達。
《スマホの通知音が鳴る》
「何だ?大河。女からのメールか?」
司はすぐそういう事言うし。
《スマホを見る大河》
「女性には違い無いけど…」
お婆ちゃまからだ。
え?今度のおさらい会の序開き?
僕が踊るの?
梅の春か…
清元は唄の間が取りにくいんだよな。
今の僕にはまだ難しいよ、梅の春は。
メール
「千代の友鶴ではいけませんか?常磐津なら弾けるから踊りやすいです」
メール
「友鶴で良いです。しっかりさらっておきなさい。お休みには帰って来るのよ。見てあげるから」
メール
「はい」
とは言ったものの、女の踊りは得意じゃないんだよな。
梅の春は男だから、家元はそっちが良いと思ったんだろうけど…
やっぱり清元より常磐津の方が踊りやすい。
お稽古は厳しいんだよね。
普段は優しいお婆ちゃまなんだけど。
「なあなあ、これからどっか行かねえか?」
「だりぃ」
「ったあく、司は「だりぃ」しか言わねえな」
「僕は勉強が有る。一年坊主に付き合ってる暇など無い」
「ああ、そうですかっ?大河は?」
「ごめん」
「んだよ、皆して」
【旧校舎の講堂】
ここは板の間だから、トンしたら響きそうだね。
まあ、床の下に瓶は入れてないだろうけどね。
トンしたらちゃんと響かないと踊りにくい。
さて、お稽古しますか。
「チャチャチャチャーン、チャンチャン。霞たーぁぁ、つーぅーチーンチンチンチンチンチンチンそらのどーぉぉかなるーぅぅぅぅぅー」
【廊下】
《トントンと床を踏む音が聞こえる》
「何の音かしら?」
《音のする方へ歩く優里香先生》
【講堂】
《優里香先生は入り口から中を見るとハッとして足を止める》
「(大河君?…踊ってる…何か歌いながら…)」
《踊る大河を見ている優里香先生》
「(何だか不思議な空間に迷い込んだみたい。ちょっと、声をかけづらい感じね)」
「優里香、何してるの?」
「しーっ」
《優里香先生と紗羅先生に気付かず集中して踊る大河》
「歌舞伎?女みたいね」
《と小声で言う紗羅先生》
「恵ぃの、末ぇやー、契ぃるーらーぁぁ、んーんーんーーん」
《パチパチパチ拍手する紗羅先生と優里香先生》
「あ…」
見られちゃった。
「いつからそこに?」
「結構前から見てたわよー」
「気付かなかった」
「凄い集中力だわ」
「でも、何で日本舞踊なワケー?」
「おさらい会が有って、序に踊らないといけなくて…」
「習ってるのー?日本舞踊」
《興味津々で根掘り葉掘り聞く紗羅先生》
「家元の孫に生まれちゃったから…」
はあ…
紗羅先生の質問攻め。
《答える大河に目を丸くする二人》
「踊りが好きとか嫌いとか考える前に、当たり前に毎日の生活の中にお稽古が有ったと言うか…」
「へー、そうなんだー」
「あ、先生時間」
「わっ、本当」
「そろそろ教室に行きましょう」
【旧校舎の教室】
僕が教室に戻ると、もう皆んな揃っていた。
「何だよ大河。先生達と一緒に来やがった」
そこ、突っ込まないで。
「さあ、始めるわよー」
紗羅先生が分厚い歴史書を持っ来て開いた。
昔天界で精霊と魔族の戦いが有った事。
天界で負けた魔族が地に降りて来た事。
この地は一度壊滅状態になった事。
勇者が現れて魔族を退治した事など、ここでは魔族達との戦いの歴史を勉強したり、現在の魔族の事を先生達から報告されたりするんだ。
武器の手入れなんかもここでする。
これは昔勇者が使っていた物だそうだ。
精霊から貰ったんだって。
武器の手入れが終わったら、裏庭に出て訓練だ。
【裏庭】
僕も早くスキルを身に付けないと。
戦闘用アンドロイド相手にバトルする。
本当こんな物まで有る時代に、この武器は確かに古臭いけど、魔族にはこれしか通用しないんだから仕方ない。
でも、何だか蓮君の杖初めの時と少し変わった気がするよね。
スキルを覚えた時赤く光ってだけど、あれは宝石みたいなのが輝いてたんだよな。
「さーて、次にスキルを覚えるのは誰かしらねー」
「俺俺、ぜってえ俺が覚えてやっかんな」
「ふっ、だりぃ。順番なんてどうでも良い」
「この僕が2つ目のスキルを覚えるという事も有りうるな」
僕だって、頑張るんだ。
優里香先生魔族とのバトルの時毎回来るつもりなのかな?
だったら僕がしっかり守らないと。
僕はガーディアンなんだ。
でも…
僕、本当に優里香先生の事好きになっちゃったのかな?
もしそうなら、お婆ちゃまに知られたら大変だぞ。
師弟関係の恋愛はいけない、っていつも言われているんだ。
まあ、僕は家元がお婆ちゃまだから有り得ないけど、代稽古の姉弟子がそれに当たる。
「弟子が師匠に恋をするのは、簡単だ。でもそれは芸に惚れているのだから、弟子に手を付けたりしちゃいけないよ」って、お弟子さんを持っている名取さん達にそう言っている。
「魔族、いつ来ても良いぞ。俺がやっつけてやっかんな」
「でも、何だか可哀想な気がするな」
「はあ?お前はバカか?何故魔族などに情けをかける?」
「大河は甘いんだよ」
「魔族だって、僕達と同じように家族とか居るのかな?って」
「居るわよー。だから増えてるのよー」
「ボスのような者が居るのならば、そいつを叩けば早いのではないか?」
「ボスねえ、魔王が居るわよー」
「魔王だあ?ゲームじゃあるめえし、魔王だ勇者だって、バカバカしい」
「魔王がこの世界を自分達の物にしようとしてるのよー」
「だって、勇者が倒したんじゃねえのかよ?」
「ゲームだってー、倒しても倒しても復活するでしょーう?」
「するな、三度は。倒す度にバージョンアップして。はあ、だりぃ、マジ生きてたのかよ魔王」
「ええ、生きていたの。そして残った魔族達と再建を始めた」
「この世界をって、他に行くとこねえのかよ?」
「元は天に居たのよねー、悪い事するもんだから、精霊に追い出されたってわけよー。だ・か・らー、行き場所は無いのねー」
「共存する事出来ないのかな?戦わないで」
「本当大河君は甘いわねー。人が襲われてるの。向こうは共存なんて考えてないわよ。人間を全て殺して、この世界を魔族の物にしようとしてるの。昔みたいに」
「あの時勇者が現れなければ、人間は絶滅して、この世界は魔族の物になっていたでしょうね」
「勇者は人間だから死んじまったけど、魔王は生きてたってか。どんだけ長生きなんだよ」
【学生寮】
翔と司と蓮君は夕食を食べに外に出たけど、僕はちょっとストレスが有るから…
お婆ちゃまの会で序の舞を踊るのは、ちょっとだげストレスになってるみたいだ。
だから、ストレス解消に音楽を聴いてる。
僕の初恋のピアニスト、マリア・マルタさんのシューマン。
初恋の人なんだ、本当に。
お婆ちゃまより年上なんだけど、そんなの知らなかった。
僕が12歳の時初めて彼女のショパンコンクールの時の第1コンチェルトを聞いて、名前と演奏しか知らなかったけど恋してしまったんだ。
あんなに美しい女性だなんて、後から知った。
お年を召されても美しくて、素敵なお婆様だよね。
ああ、この弾き方…
もう、そこが彼女なんだよ。
素敵だよな、本当に。
はあ…ついため息が出てしまう。
《シューマンのピアノコンチェルトを最後まで聴いて余韻に浸る大河》
はあ、気持ち良い。
さて、僕もお腹が空いて来たぞ。
夕食を食べに行くかな。
どうしよう?
取り敢えずキッチンに行ってみるか。
何か適当に作って食べよう。
【キッチン】
うーん、ご飯は有るか…冷たいけど。
冷蔵庫は…卵と、豚肉。
野菜は有るかな?
玉ねぎと人参と…
良し。
フライパンに油を引いて温めてと。
豚肉に火が通ったら野菜を入れて塩胡椒だな。
ご飯を入れて少し炒めたらもう一度味を整えて…
僕はここでケチャップは使わないんだ。
「美味しそうな匂いがしてるわね」
《ニコニコしながら優里香先生がやって来る》
「食べる?」
「え?良いの?」
「二人分ぐらい作れるよ」
「そう?じゃあ頂こうかしら。フフフ」
卵にマヨネーズを入れると、ふっくら焼けるんだよな。
後はトマトソースをかけてオムライスの出来上がり。
「こっちも出来たわよ~」
優里香先生がサラダとスープを作ってくれた。
本当に手際良くサッと作るよな。
慣れてるんだね。
あ、誰かの為に作ったりするのかな?
羨ましいぞ。
【ダイニングテーブル】
《食事をする優里香先生と大河》
「男の子にお料理作ってもらったの初めてだわ」
「え?作ってくれないの?」
「誰?」
「彼氏」
「そんな人居ないもの」
「良かった。ライバルが少なくて」
「少なくて?」
「先生結構男子に人気だから」
「あら、知らなかったわ。フフフ」
教師と生徒だけど、この特別クラスでは先生と僕達は一つのチームなんだって。
だから、ここでは友達みたいに話すように言われている。
作法にうるさく育ったから、最初は戸惑ったけど、だいぶ慣れて来た。
勿論目上の人なのだから、敬意を払う必要が有ると僕は思っているけどね。
「美味しい。お料理はお母様から?」
「内弟子さんから。母親は居ないんだ」
「まあ…ごめんなさい」
「良いよ、謝らなくても。僕が小さい時離婚して家を出て行った」
「そう…」
「普通の暖かい家庭って、どんなだろうな…」
「大河君…」
「優しいお父さんとお母さんに可愛い子供…女の子が良いな。優里香先生はどっちが欲しい?」
「え?」
「そんな家庭を二人で築きませんか?」
「あら、プロポーズなら大人になってから聞くわ」
「あ、今のセリフ忘れないよ。大人になったらもう一度言うからね」
「良いわよ。その時本当に私の事好きになってくれていたら」
「あ、その言い方は信じてないな」
「だって、今の貴方は本気じゃないでしょう?からかわれてるとしか思えないもの」
「うーん…」
「(本気になられても困るけれど…教師と生徒だもの)」
やっぱり心のどこかに、好きになってはいけないというブロックが有るのかな?
でも、人を好きになる時って、好きになろうとしてなるものじゃないし、いけないとわかっていても好きになってしまうものだよ。
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