『アルマンドの騎士1』“魂の伴侶、それは魂の片割れツインレイ”

大輝

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第10章 セージの発明品

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【道具屋】

「アッサムちゃん、いらっしゃい」

コリアンダーの母カモミールだ。

いい加減「ちゃん」はやめてほしいものだが…

「今日は、何が必要だい?」

「傷薬と解毒剤を貰おうか」

「はいよ」

「アッサムく~ん。良い物が出来たんだけど、試してみてよ」

コリアンダーの兄のセージだ。

「これね、ギルドの飛竜達に使ってみてほしいんだけど」

【魔獣の小屋】

「あら、お兄ちゃん」

「こっちの赤いのがルナちゃんで、緑のがミストラル君のね~」

「あ、それ出来たのね」

「これを、ルナちゃんの首にかけて、この笛を吹くと」

「ガゥー」

「訓練すれば、遠くから呼べるようになるはずなんだけど」

「はずね」

「やってみようよ」

「ガォー」

「ミストラル君のは、これだよ」

「ガォガォー」

「じゃあ、僕はルナ。マスターはミストラルお願いね」

「了解した」

ルナとミストラルを、少し離れた場所に待たせて呼び笛を吹いてみた。

「ルナ、おいで!」

何度かやると覚えたようで、笛を吹くと飛んで来た。

「次は、ミストラルだな」

同じようにやると、ミストラルは一度で覚えた。

「お利口さんね」

「ミストラル君は、お兄ちゃんだからね~」

ルナを見ていてわかったようだ。

「ガゥー」

「ルナちゃんも、お利口さんね」

「ガゥガゥ」

「お兄ちゃん。この笛、どのぐらい遠くまで聞こえるの?」

「だから、試してみてよ」

「なるほどね。いつものやつか」

「じゃあ、今日は2頭を連れて出かけようよ」

「ルナちゃんも連れて行って大丈夫かしら?」

「まだ戦力にはならないけどね」

飛竜種とは言え、ルナはまだ生後2カ月だ。


【ギルド・レ・シルフィード】

「今日の依頼は、東の湖に出かけて戻らない人の捜索なんですけど」

「魔物に襲われたのかな?」

「山に入ったのかも知れないぜ」

湖のほとりには、北の山ほど高くはないが、小さな山が有る。

「ケガをしてるといけなから、私も行くわ」

「俺も行くぜ」

「あら、今回は食べる事言わないのね」

「人が行方不明って言うから、遠慮したんだけど」

バジルは、そう言いながら肉焼き機を用意している。

「こいつは魚も焼けるからな。勿論食うぜ」

「骨と鳴き声以外は、何でも食べそうだね」

「魚は、骨だって食える」

「ガゥー」

「ガォー」

「良し良し、一緒に行こうね」

【東門の外】

北に下れば洞窟で、その向こうには神殿が有り、ここから東に向かえば湖が有る。

この辺りの魔物は、ミストラルの姿を見るだけで逃げ出すものも居るし、ルナだって相手に出来る。

私達は、湖へと急いだ。

【湖のほとり】

「一周してみたけど、人なんて居ないわね」

「モンスターに食われたか?」

「山に入ったのかな?」

「ミストラル」

「ガォー」

ミストラルが風を纏って舞い上がる。

「ガゥー」

「ルナも行くって」

2頭は、山へ向かった。

「見つかるかしら?」

【東の山】

「ガゥー」

「ガォー」

〈山の上を飛び回る2頭の飛竜〉

【湖のほとり】

「遅いな、あいつら」

「呼んでみたら?」

2頭の姿は、こちらからは見えない。

呼び笛を使って、呼び戻す事にした。

私は緑の笛でミストラルを、タイムは赤い笛でルナを呼んだ。

「本当に、その笛で戻って来るのか?」

「お兄ちゃんの発明だから、怪しいけど」


「姿が見えたぞ」

遠くの空を、2頭の飛竜がこちらへ向かって飛んで来る。

「道具は、ちゃんと使えてるみたいね」

「ガゥー」

「ガォー」

「ルナ。居たかい?」

「ガゥ」

ミストラルは、湖が気になるようだ。

「ミストラル。行くが良い」

「ガォー!」

ミストラルは、風を纏い翼を広げると、再び舞い上がり、湖の上を飛んで行った。

【湖の小島】

「飲み水はもう無いか…」

(湖からは魚の化け物が襲って来るし、空からは怪鳥だ…助けてくれよ)

「うわっ、今度は何が来たんだ?」

〈空から2頭の飛竜が近づいて来る〉

「りゅ、竜だ、わ、わ、わっ、来るな!来ないでくれ!」

「ガゥ」

「ガォ」

「来るな、俺なんか食っても旨くないぞ」

【湖のほとり】

「旋回してるな」

「あ、戻って来る」

「ガォー」

「ガゥ」

ミストラルは、私に何か言いたいようだが…?

「ガォガォガォー」

いきなり私を咥えて背中に乗せた。

「私を連れて行くと言うのか」

「ガォー」

風竜の纏う風の中に入れるのは私だけだと、ミストラルはちゃんと知っている。

私を乗せ舞い上がると、湖の上を飛んで行く。

小さな島が見えてきた。

「わ、戻って来たぞ。た、助けてくれ」

「そこに誰か居るのか?!」

「え?竜が喋った?違う、人?」

「居たら返事をしろ!」

「人だ。助かった。おーい!」

ミストラルは、小島に舞い降りた。


「大丈夫か」

「魚を取りに来たら、化け物に襲われて、ボートがやられちまったんだ」

今はミストラルが居るので近づけんだろうが、湖には巨大魚も居るし、山の方からは、コカトリスなども襲って来るだろう。

「ガォー」

「うわっ」

「乗れと言っている」

ミストラルは、一度身体の周りの風を止めた。

「本当に、乗って大丈夫なんだろうな?」

男が乗ると、再び風を纏った。

「うわっ、わ、わ、落ちる」

「しっかり掴まっていろ」

「んな事言ったって、わっ」

「大丈夫だ。私が掴まえている」

「ガォガォー」

ミストラルが翼を広げた。

「うわっ、わっ」

「行くぞ」

「ガォー」

ミストラルは、振り落とさないように慎重に運んでいる。

【湖のほとり】

「戻って来たわ」

「ガゥー」

「ガォー」

「誰か乗ってるぞ」

「見つかったみたいだね」

ミストラルは、舞い降りると風を消して、体を低くした。

「降りろと言っている」

「腰が抜けて…」

「どれ?俺が下ろしてやるよ」

「だいぶ消耗してるわね。そこに寝かせて」

「ケガもしてるぞ」

「先に、エネルギーチャージするから」

「ガゥガゥ」

「ルナちゃん心配してるの?大丈夫よ。タイム。水を飲ませて」

「はい飲んで。少しずつ、ゆっくりね」

タイムが水を飲ませると、少し落ち着いた。

コリアンダーが傷の手当てを済ませたら、街に連れて帰れそうだ。


【修道院】

「今日から、8日間の黙想に入ります。沈黙を守って過ごしなさい。日常の生活から離れて、神様だけに向かうのです」

(意識の深いところで神様と出会い交わる為の沈黙…今はダメよ。お願いアッサム。離れていて)

〈沈黙のまま聖書を読む修道女達。そして、沈黙のまま祈りを捧げる〉

〈沈黙のまま食事をし、沈黙のまま後片付けをする〉

〈廊下ですれ違っても、沈黙のまま挨拶をする修道女達〉

【ローズマリーの部屋】

(お願いアッサム。今は神様だけに向かっていないといけないの。貴方の事は忘れなくては…忘れさせて下さい神様)

「ミャー」

〈猫がローズマリーの膝の上に上がる。猫を抱き上げ顔をつけるローズマリー。甘えて頭を擦り付ける猫〉

(忘れ…させて…)

【アッサムの部屋】

彼女のエネルギーが弱い…

しばらく手紙も来ていないが…

こちらから続けて手紙を出す事は無いので、もうしばらく待ってみるか。

〈アッサムの足に擦り擦りする猫。ベッドに飛び乗り甘える猫を抱くアッサム〉

「ワーオン」

「良し良し」

出来るものなら、今すぐにでも会いに行きたい。

君は離れて居て平気なのか?

そう言えば、私をどう思っているのかまだ聞いていなかった…

聞けるはずがない。

たとえ彼女も私と同じ気持ちでいてくれたとしても、言えるはずがないのだから…

言えるものなら…許されるなら、私の方から言っている。

君を愛していると…

一生涯君だけを愛し抜くと誓う。

ツインレイなのだから、巡り会ってしまったらもう2度と他の人を愛する事など出来ないのであろう。

私は、そう思う。

私は、この世に生まれた時から君を探していた。

私のこの人生で、愛する人はただ1人だ。


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