『アルマンドの騎士1』“魂の伴侶、それは魂の片割れツインレイ”

大輝

文字の大きさ
12 / 26

第12章 生死の境

しおりを挟む
【道具屋】

〈道具屋は、戦場から負傷して戻った兵士達で溢れていた〉

「傷薬をくれ」

「俺は、解毒剤だ」

「セージ。コリアンダーに薬を調合してもらってきておくれ」

「は~い」

【コリアンダーのサロン】

「コリアンダー。傷薬も、解毒剤も品切れなんだけど」

「薬草が足りないの。重症の人は、ここへ連れて来て」

「良いのか?凄い数だよ」

〈ゾロゾロと負傷者が入って来る〉

「マスターは、僕が見てるよ」

「お願いね、タイム」

(こいいう時は、何か忙しくしている方が良いの…アッサムお願い…死なないで)

〈ベッドに眠っているアッサムの汗を拭くタイム〉

【ギルドの魔獣の小屋】

〈壊れた檻に戻っているミストラル〉

「ガゥガゥ」

〈ルナがミストラルの傷を舐めてやる〉

「ガォガォ」

【コリアンダーのサロン】

「早く俺も診てくれよ」

「次は、私の番だ」

「ちゃんと並べよな」

「順番を守れ」

「コリアンダー!取って来たぞ!」

〈大量の薬草をバサッと置くバジル〉

「これで良いんだろう?」

「ええ、そう、これよ。ありがとう。お兄ちゃん!手伝って!」

「は~い。何をすれば良いんだい?」

「この薬草を、お兄ちゃんの作った装置で乾燥させてほしいの」

「これ、全部?」

「全部よ」

「おいおい、セージの作った装置だって?大丈夫か?」

「大丈夫だよ…たぶん」

「また、たぶんかよ」

「やってみるしかないでしょ?ダメなら急いて改良して」

「かわいい妹の為だからね、頑張るよ」

〈騎士達の治療をするコリアンダー〉


【乾燥装置】

〈大量の薬草を運ぶバジル〉

「ここに入れて~」

「良し」

〈バジルは、装置の中に薬草を入れた〉

「僕は、力仕事は苦手で….」

「こいつで、肉や魚も干せそうだな」

「そんな事したら匂いが移って、コリアンダーに怒られちゃうよ」

「なるほど」

【修道院】

〈部屋で眠るローズマリー〉

【門の外】

「貸してもらえるまで、帰れない」

〈馬の蹄の音〉

「ミント嬢!」

「ルバーブさん」

「やはり、貸してはもらえぬか」

「はい…どうしたら」

「開門!我が名はルバーブ。王命である!開門せよ!」

【修道院の中】

「国王陛下の許可ですって?」

「それなら、お貸しできるわね」

「シスター・フェンネル。聖杯を」

「はい、院長様」

〈聖杯と聖水を運ぶフェンネル〉

「どうぞ、お持ちなさい」

「ありがとうございます。必ずお返ししますので」

「急ごう」

「はい」

【門の外】

〈ミントを馬に乗せて走るルバーブ〉

【ローズマリーの部屋】

〈目を覚まし、ベッドに座るローズマリー〉

(あの人のエネルギーを感じられない…まさか!嫌よアッサム)

(いいえ、あの人は生きているわ。ただエネルギーを感じなくなっただけよ。きっとそうだわ)


【コリアンダーのサロン】

〈ミントが駆け込んで来る〉

「通して下さい。お願いそこを通して」

「道を開けよ!」

〈ルバーブの一声で道が出来る〉

「コリアンダーさん!聖杯と聖水」

「借りれたのね、良かった」

「俺達の治療は、どうなるんだよ」

「薬を塗るだけなら、おばちゃんに任せなさい」

【サロンの奥の薬棚】

「薬草の乾燥出来たよ~」

〈薬草を煎じるコリアンダー〉

【サロン】

〈ベッドの上でうなるアッサムの汗を拭くミント〉

【薬棚】

〈薬を容器で潰し粉にすると、聖杯に入れ聖水と煎じた薬を混ぜる〉

「出来たわ」

【サロン】

「さあ、アッサム、口を開けて….お願いこれを飲んで」

〈アッサムの口を開けて、スプーンで薬を飲ませる〉

【修道院】

〈祭壇の前1人祈るローズマリー〉

(エネルギーが感じられない…でも…生きているはずだわ。だって、死んだら統合するからわかるもの)

【コリアンダーのサロン】

「熱が下がってきたわね。後は意識が戻れば…」

「う…う…」

「何?アッサム」

「う…」

【修道院】

(きっと、まだ苦しんでいるのだわ。何もしてあげられないのね…私)

(貴方のそばに居たい…許されるなら…神がお許しになるなら、今すぐ貴方の所へ…)

「え?」

〈赤い霧のようなエネルギー体が、ローズマリーに近づいて来る〉

(ダメよ、アッサム、来てはダメ…幽体離脱?ダメよ、戻って!お願いだから)

【コリアンダーのサロン】

「次も…一緒に…転生…しよう」

「はっ、中間世?!ダメよ!そっちに行っちゃダメ!戻って!!」

「おい!アッサム!」

「アッサムさん」

「マスター」


【修道院】

(まさか…統合?!)

〈ローズマリーの身体の周りを赤いオーラのような物がまとわりついていく〉

「アッサムダメよ!戻って!」

【道具屋】

「お母さん、新しい薬ここ置くよ~」

「はいよ。アッサムちゃんはどうだい?」

「まだ生死の境をさまよってるよ」

「アッサムちゃんが死ぬわけないんだからね、あの元気坊主のアッサムちゃんが」

【コリアンダーのサロン】

「う…う…」

「アッサム」

「コリアンダー…か…港…は?修道院は?」

「皆んな無事よ」

「アッサム、分かるか?私だ。ルバーブだ」

「ルバーブ…敵は…」

「逃げ帰ったよ。お前の竜に助けられた」

「あ、そうだ私、ミストラルも治療しに行かなきゃ」

「お母さんが傷薬つけて、解毒剤飲ませてたよ~さっき見て来たけど、ピンピンしてた~」

「コリアンダーさんも、少し休んだ方が良いですよ。寝ずに治療してたんですから」

「うんうん。マスターは、僕達が見てるからそうしてよ」

「私は、大丈夫よ」

〈立ち上がり、フラフラするコリアンダーをバジルが抱き止める〉

「大丈夫じゃないだろ」

「バジルったら、離してよ」

「皆んなが心配してる。ちゃんと休めよ」

「わかったわよ。そうさせてもらうわ」

「あ、そうだ。俺、ミストラルの小屋直して来る」

【ギルドの魔獣の小屋】

「ミストラル。ちょっと出ててくれよ。小屋を直してやるからな」

「ガォガォ」

「ミストラルちゃん、どうだい?ちょっとケガを見せてごらん」

「ガォー」

「だいぶ良くなってるね。良い子だね、薬を塗るから大人しくしてるんだよ」

「ガォガォ」

「ガゥー」

「ルナちゃんはケガしてないんだから、良いんだよ。それともミストラルちゃんが心配なのかい?」

「ガゥガゥ」


「おばちゃん、竜が怖くないの?」

「初めは怖かったけどさ、慣れたら可愛いもんだよ。まだ子供だしね」

「アッサムさんがやられて、怒ったこいつが、敵の船全部沈めたらしいよ」

「そうかい。そりゃ、恐ろしい力が有るだろうよ、風の竜だからね。竜の中でも一二を争う強さだ、って言うじゃないか」

「確かに魔獣は人を襲うけど、一番恐ろしい生き物は人間かも知れないな」

「そうだね」

「俺だって、魔獣が人を襲ったりしなかっら殺したくないよ。それを、敵国の連中は、味方のグリフォンまで毒矢で殺しやがったって言うじゃないか」

「かわいそうに…あちらの魔獣使いは、それで平気なのかね?」

「代わりはいくらでも居るってか?」

「この子たちの代わりなんて、どこにも居やしないよ。同じ命なんて無いんだからね」

「うちの魔獣使いは優しいから良かったな」

「本当、この子達の世話をするのが、タイムちゃんで良かったよー」

「ほら、お前の小屋直ったぞ。もう壊すなよ…緊急事態以外はな」

「ガォガォー」

「はい、傷の手当ても終わりだよ」

「ガォガォ」

〈自分で小屋に入るミストラル〉

「こんなに利口なんだから、小屋に入れる必要ないのにな」

「野良竜と間違われて、殺されでもしたら可哀想だからね」

「ハハハ、野良竜か」

【コリアンダーのサロン】

「まだ食べるのは無理ね。聖水だけでも飲んで」

〈アッサムに聖水を飲ませるコリアンダー〉

「この聖なる泉の水は、自然治癒力を高めるのよ」

「無くなったら、ルナ達と取りに行ってくるからね」

「そうね、お願いタイム」

「了解、了解」

〈微笑むタイム〉

(僕だって、ルナ達さえ居れば、皆んなの役に立てるんだから)

【修道院】

(弱いけど、アッサムのエネルギーが感じられる…)

(こんなに心配させて、もう嫌よ…もう、貴方のような危ない仕事をする人を思っているのは嫌)

(私達って、地上で巡り会うと、どうしていつもこうなの?雲の上で2人で居る時が一番幸せだわ)


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

処理中です...