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第20章 北の国境の戦い再び
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【修道院】
「ニャー」
「アルテミス」
〈ローズマリーは猫を抱く〉
(あの人のエネルギーが、私の中に入って来る。2人の魂が溶け合って一つになってゆく。だいぶ統合が進んでいるみたい)
「ローズマリー、何をぼんやりしているのです」
「院長様」
「何か悩み事が有るのなら、お話しなさい」
「何でも…有りません」
「あなたまさか、男の方を思っているのではないでしょうね?」
「いえ、院長様」
【エルダーの家】
相変わらず魂の浄化が続いているらしく、手のひらが焼けるように痛い。
今日は、コリアンダーの師匠エルダーに、ヒーリングを受けている。
「まだ杭が出てるね」
そう言うと、エルダーは私の手から杭を取ってくれた。
私には見えないのだが…
「ああ、来てるね、シスターの生き霊」
「本当だわ」
コリアンダーにも見えるのに、私には見えない。
ただエネルギーが感じられるだけだ。
「彼女何か言ってる」
「わかって、と何度も言ってるね」
そう言われても…
何をどうわかれと言うのだ。
「さあ、ハーブティーを飲みなさい」
「沢山飲んで、沢山出して浄化するのよ」
明日はまた、北の国境に遠征に行く。
北の国サラバンドが、不穏な動きを見せているのだ。
近隣諸国と同盟を結び、アルマンドを狙っている。
【修道院 ローズマリーの部屋】
「ローズマリー。騎士団が、また北の国境へ遠征に出かけたわね」
「そう」
「アッサムさんも、行ったそうよ」
「私には関係無いわ」
(もうあの人の事は忘れたいの)
(私は、あの人を愛していないの、最初から愛していなかったのよ)
「ミャー」
「アルテミス、いらっしゃい」
〈アルテミスは、ローズマリーの膝に飛び乗る〉
(どうして涙が出るのかしら?もうあの人とは関わりたくないのに、どうしてこんなに切ないの?)
(無事に…帰って来て)
【北の砦】
「騎士団が到着したぞ!」
早朝、砦に到着した。
「装備を整えておけ!」
「敵はまた、魔獣を使ってくるのだろうな」
「アッサムの竜を連れて来れたら戦いも楽だろうが」
アルマンドの軍隊には、魔獣使いは居ない。
魔獣使いには、タイムのように優しい者が多い。
そうでなければ、中々魔獣が懐かないからだ。
魔獣を戦争に使えば、敵国のように捨て駒にする事も有るだろう。
いざという時魔獣の命を優先すると、かえって戦いが不利になるからと、軍は魔獣使いの入隊を許さないのだ。
【戦場】
「戦闘配備に着け!」
やはり、敵軍は魔獣を使ってきた。
「グリフォンとサラマンダーだ」
「毎度お馴染みだな」
ドラゴンを捕まえるのは、容易ではないからな。
滅多にお目にかかれるものではないし、戦い捕獲するのも難しい。
たとえ捕獲出来たとしても、中々懐かないだろう。
ルナは、卵から孵化させたので懐いてくれたのだし、ミストラルが懐いてくれたのは奇跡に近い。
ケガをしていて治療した事で、気を許してくれたのであろう。
【敵陣】
「ディル様、あの白馬の騎士をご覧下さい」
「あれは…あの時の指揮官。おのれ、生きておったか」
「魔獣との戦いに長けているようですな」
「今度こそ息の根を止めてやるわ!」
【アルマンド軍】
「魔獣は、私とルバーブが相手になる!」
「私も参ります!」
「良し!チャイブも来い!」
地上からサラマンダーが突進して来る。
我々は、奴の吐く炎を避けながら攻撃する。
上空からは、グリフォンが襲いかかって来る。
弓隊が矢を射かける。
グリフォンがつついて来る。
私は、ランスで下から突き上げる。
【敵陣】
「何をしておる!あの白馬の騎士を殺せ!」
「グリフォン!足で掴んで高く飛べ!」
【アルマンド軍】
グリフォンが、私を捕まえようと接近してきた。
今だ!
ランスで足を突くと落下した。
グリフォンの頭を狙ってランスで突く。
【敵陣】
「何をしている!お前は、ろくに魔獣を操れんのか!馬鹿者め!」
「申し訳ありませんディル様」
「あの騎士を殺せ!」
【ギルドの魔獣の小屋】
「ガォー、ガォー」
「ガゥー」
「大丈夫だよ。マスターは必ず無事に帰って来るから」
【ギルド・レ・シルフィード】
「サラバンド軍と戦争をしているのかしら?」
「ミストラル達が吠えてるな」
「マスターを心配してるんでしょうか?」
「また、檻を破って飛んで行くんじゃねえだろうな」
「あんなに遠くまで?」
【戦場】
〈アルマンド軍とサラバンド軍の歩兵隊が戦う。後ろから弓隊が矢を射かける〉
「サラマンダーの炎は、厄介だな」
「ルバーブ殿は、後ろから攻撃して下さい。私が囮になります」
〈サラマンダーは、チャイブに炎を吐き掛ける。ルバーブが後ろから剣で斬りつける〉
「やー!」
「やりました!」
「アッサムを援護する!」
「はっ!連隊長殿!援護します!」
「すまぬ!」
グリフォンの翼が起こす風で、チャイブが馬上でバランスを崩す。
「うわっ」
落馬したチャイブを狙い上空から来るグリフォンを、ランスで突くと落下した。
チャイブが下敷きになっている。
「チャイブ!」
「大丈夫…です」
グリフォンの下から這い出して来た。
見ると、チャイブの剣がグリフォンの体に刺さっている。
「ミューズ!」
「ヒヒーン!」
私は、ミューズと一緒にランスで突進した。
「つぇーい!」
「やったな」
チャイブは、グリフォンから剣を抜いている。
「合流するぞ!」
「了解した!」
「了解です!」
【敵陣】
「白馬の騎士が、こちらに来ます!」
「おのれ、一騎打ちで倒してやる!」
「ディル様!無茶です!敵は相当の遣い手」
「黙れ!」
連隊と合流すると、我々が少し優勢に見えた。
「我が名はディル!白馬の騎士よ!一騎打ちを申し込む!」
「我が名はアッサム!受けて立つ!」
その時、彼女のエネルギーを感じた。
忘れていた。
いつもそばに居る事を。
【修道院】
「ローズマリー、大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ、フェンネル」
(あの人の痛みを感じる。戦っているはずなのに、エネルギーが穏やかになったわ)
【戦場】
〈距離を置いて向き合うアッサムとディル〉
彼女のエネルギーが、私の胸の前に煙のように張り付いている。
君を守らなければいけないな。
【修道院】
(精神集中しているみたい…あれは…敵の武官…またあの人の目を通して見ているみたいに風景が浮かぶの)
(何が始まるの?)
(敵の武官と向き合っている…一騎打ち?!)
【戦場 一騎打ち】
「参る!」
「来い!」
(白馬の騎士め、アッサムと言ったか。覚えておくまでの事もないわ。この手で息の根を止めてやる)
〈一騎打ち、両者馬を走らせる。すれ違いざまアッサムのランスにかかり、ディルが落馬〉
「やったぞ!」
「一騎打ちでアッサムに勝てるはずがない」
「ディル様!」
「お…おのれ、打て!」
敵の弓隊が矢を射かけてくる。
私は、ランスで矢を受けた。
「ヒヒーン」
「ミューズ!」
「卑怯者め!」
「退却!退却だ!」
「逃げて行くぞ」
「連隊長殿!腕が!」
〈アッサムの腕に矢が刺さっている〉
【修道院】
〈腕を押さえてうずくまるローズマリー〉
(また酷いケガをしたのね。意識が…遠のいていく)
【戦場】
「また毒矢にやられたか!」
「解毒剤を!」
「大丈夫だ…ミューズにも…解毒剤を…」
【修道院】
「ローズマリー、ローズマリーしっかりして」
「…私…気を失っていたのね」
【北の砦】
〈ベッドに横たわるアッサム〉
「…う…」
「アッサム」
「ミューズ…は?」
「まだ動いてはいけません」
「離してくれ!ミューズ!」
「完全に毒が抜けるまで、動かないで下さい」
【ギルド・レ・シルフィード】
「アッサムは、まだ戻らないの?」
「戦争は勝ったと、新聞に出てたのに」
「先に帰って来た騎士も居るぞ」
「あ、ルバーブさん」
「アッサムは?アッサムはどうしたの?」
「毒矢にやられたので、少し帰りが遅れている」
「また毒矢?前の戦争の時みたいな事はないでしょうね」
「心配はいらんよ。ただ馬が助かるかどうかだが」
「何ですって?遠隔ヒーリングするわ!」
数日後、私はアルマンドに戻った。
【アッサムの屋敷】
「アッサム様。お城に上がる時間ですよ」
「うーん」
「何がそんなにお嫌なのか」
【王宮】
〈礼装で叙勲を賜るアッサム〉
【ギルドの馬屋】
「だいぶ元気になったな」
「ヒーリングするわよ、ミューズ」
【騎士団】
「また出世したな、アッサム」
「あまり嬉しそうでは有りませんね」
「いつもの事だな」
「聖騎士になられたのに」
「聖騎士になったからと言って、良い気になるなよ」
「またキャラウェイ殿か」
「3年目で聖騎士とは生意気な」
「構わぬ、言わせておけ」
【ギルド・レ・シルフィード】
私がギルドに戻ると、料理が並べられ、皆んなが待っていてくれた。
「マスターが、聖騎士になったお祝いだよ」
「よーし、食うぞ」
「さーて、呑むわよ」
「マスターは、地位や身分を嫌がるけど、聖騎士はやっぱりカッコいいよ」
やはり私は、騎士団に居るより、ギルドの仲間と一緒に居た方が楽しい。
「お祝~い、僕も呑むよ~」
「お兄ちゃんの発明も、最近少しは役に立ってるわよね」
「少し~?酷いよ~」
「俺もギルドの役に立ってるかい?」
「オレガノさんは、ルナ達の防具を作ってくれて、助かるよ」
「喜んでもらえて、嬉しいよ。さ、俺も呑むぞ」
「本当に飲兵衛ギルドですね」
飲兵衛ギルドでなければ、食いしん坊ギルドだな。
「アッサムも、呑みなさいよねー」
あの修道院で作られたワイン…
来月は、星のカーニバルだ。
彼女と巡り会って、1年になる。
ローズマリーが最後の手紙に「二度と私の前に現れないで」と書いて来てから会っていない。
いつも、偶然の出会いしか許されないのだが…
たとえ許されたとえしても、今の彼女が会ってくれるとも思えんが。
ツインレイのパニック。
ツインレイの女性は、相手と巡り会うと、今迄知らなかった自分や、抑え込んでいた自分を見せられて、パニックになると言う。
そして、相手を拒絶する。
愛し合った事実も、相手の存在さえも自分の中から消してしまいたくなるのだそうだ。
彼女の事は、もう忘れてしまおうか?
自分の心に問うと、心は即答する。
忘れる事など出来ない、と。
たとえ一生届かなくても、あの魂と巡り会ってしまった以上、もう、他の人を愛する事など出来ないのであろうと、私は思う。
このまま離れ離れで居ても、私は永遠に君を愛し続けるだろう。
【修道院】
「ダメ…」
(抱き締めないで…神様お願いです。あの人のエネルギーを私から離して下さい)
(私は、神にこの身を捧げたの。貴方を受け入れる事は出来ないのよ)
(こんな事なら、貴方を知らな方が良かったわ。巡り会わなければ良かったのよ)
(もう、終わりにしましょう。今生の2人の魂の学びは終わり。お願いだから離れて、アッサム)
(ダメ…入って来ないで!また、2人のエネルギーが交わり、魂が一つになる…宇宙に光が放射されてゆく…)
「ニャー」
「アルテミス」
〈ローズマリーは猫を抱く〉
(あの人のエネルギーが、私の中に入って来る。2人の魂が溶け合って一つになってゆく。だいぶ統合が進んでいるみたい)
「ローズマリー、何をぼんやりしているのです」
「院長様」
「何か悩み事が有るのなら、お話しなさい」
「何でも…有りません」
「あなたまさか、男の方を思っているのではないでしょうね?」
「いえ、院長様」
【エルダーの家】
相変わらず魂の浄化が続いているらしく、手のひらが焼けるように痛い。
今日は、コリアンダーの師匠エルダーに、ヒーリングを受けている。
「まだ杭が出てるね」
そう言うと、エルダーは私の手から杭を取ってくれた。
私には見えないのだが…
「ああ、来てるね、シスターの生き霊」
「本当だわ」
コリアンダーにも見えるのに、私には見えない。
ただエネルギーが感じられるだけだ。
「彼女何か言ってる」
「わかって、と何度も言ってるね」
そう言われても…
何をどうわかれと言うのだ。
「さあ、ハーブティーを飲みなさい」
「沢山飲んで、沢山出して浄化するのよ」
明日はまた、北の国境に遠征に行く。
北の国サラバンドが、不穏な動きを見せているのだ。
近隣諸国と同盟を結び、アルマンドを狙っている。
【修道院 ローズマリーの部屋】
「ローズマリー。騎士団が、また北の国境へ遠征に出かけたわね」
「そう」
「アッサムさんも、行ったそうよ」
「私には関係無いわ」
(もうあの人の事は忘れたいの)
(私は、あの人を愛していないの、最初から愛していなかったのよ)
「ミャー」
「アルテミス、いらっしゃい」
〈アルテミスは、ローズマリーの膝に飛び乗る〉
(どうして涙が出るのかしら?もうあの人とは関わりたくないのに、どうしてこんなに切ないの?)
(無事に…帰って来て)
【北の砦】
「騎士団が到着したぞ!」
早朝、砦に到着した。
「装備を整えておけ!」
「敵はまた、魔獣を使ってくるのだろうな」
「アッサムの竜を連れて来れたら戦いも楽だろうが」
アルマンドの軍隊には、魔獣使いは居ない。
魔獣使いには、タイムのように優しい者が多い。
そうでなければ、中々魔獣が懐かないからだ。
魔獣を戦争に使えば、敵国のように捨て駒にする事も有るだろう。
いざという時魔獣の命を優先すると、かえって戦いが不利になるからと、軍は魔獣使いの入隊を許さないのだ。
【戦場】
「戦闘配備に着け!」
やはり、敵軍は魔獣を使ってきた。
「グリフォンとサラマンダーだ」
「毎度お馴染みだな」
ドラゴンを捕まえるのは、容易ではないからな。
滅多にお目にかかれるものではないし、戦い捕獲するのも難しい。
たとえ捕獲出来たとしても、中々懐かないだろう。
ルナは、卵から孵化させたので懐いてくれたのだし、ミストラルが懐いてくれたのは奇跡に近い。
ケガをしていて治療した事で、気を許してくれたのであろう。
【敵陣】
「ディル様、あの白馬の騎士をご覧下さい」
「あれは…あの時の指揮官。おのれ、生きておったか」
「魔獣との戦いに長けているようですな」
「今度こそ息の根を止めてやるわ!」
【アルマンド軍】
「魔獣は、私とルバーブが相手になる!」
「私も参ります!」
「良し!チャイブも来い!」
地上からサラマンダーが突進して来る。
我々は、奴の吐く炎を避けながら攻撃する。
上空からは、グリフォンが襲いかかって来る。
弓隊が矢を射かける。
グリフォンがつついて来る。
私は、ランスで下から突き上げる。
【敵陣】
「何をしておる!あの白馬の騎士を殺せ!」
「グリフォン!足で掴んで高く飛べ!」
【アルマンド軍】
グリフォンが、私を捕まえようと接近してきた。
今だ!
ランスで足を突くと落下した。
グリフォンの頭を狙ってランスで突く。
【敵陣】
「何をしている!お前は、ろくに魔獣を操れんのか!馬鹿者め!」
「申し訳ありませんディル様」
「あの騎士を殺せ!」
【ギルドの魔獣の小屋】
「ガォー、ガォー」
「ガゥー」
「大丈夫だよ。マスターは必ず無事に帰って来るから」
【ギルド・レ・シルフィード】
「サラバンド軍と戦争をしているのかしら?」
「ミストラル達が吠えてるな」
「マスターを心配してるんでしょうか?」
「また、檻を破って飛んで行くんじゃねえだろうな」
「あんなに遠くまで?」
【戦場】
〈アルマンド軍とサラバンド軍の歩兵隊が戦う。後ろから弓隊が矢を射かける〉
「サラマンダーの炎は、厄介だな」
「ルバーブ殿は、後ろから攻撃して下さい。私が囮になります」
〈サラマンダーは、チャイブに炎を吐き掛ける。ルバーブが後ろから剣で斬りつける〉
「やー!」
「やりました!」
「アッサムを援護する!」
「はっ!連隊長殿!援護します!」
「すまぬ!」
グリフォンの翼が起こす風で、チャイブが馬上でバランスを崩す。
「うわっ」
落馬したチャイブを狙い上空から来るグリフォンを、ランスで突くと落下した。
チャイブが下敷きになっている。
「チャイブ!」
「大丈夫…です」
グリフォンの下から這い出して来た。
見ると、チャイブの剣がグリフォンの体に刺さっている。
「ミューズ!」
「ヒヒーン!」
私は、ミューズと一緒にランスで突進した。
「つぇーい!」
「やったな」
チャイブは、グリフォンから剣を抜いている。
「合流するぞ!」
「了解した!」
「了解です!」
【敵陣】
「白馬の騎士が、こちらに来ます!」
「おのれ、一騎打ちで倒してやる!」
「ディル様!無茶です!敵は相当の遣い手」
「黙れ!」
連隊と合流すると、我々が少し優勢に見えた。
「我が名はディル!白馬の騎士よ!一騎打ちを申し込む!」
「我が名はアッサム!受けて立つ!」
その時、彼女のエネルギーを感じた。
忘れていた。
いつもそばに居る事を。
【修道院】
「ローズマリー、大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ、フェンネル」
(あの人の痛みを感じる。戦っているはずなのに、エネルギーが穏やかになったわ)
【戦場】
〈距離を置いて向き合うアッサムとディル〉
彼女のエネルギーが、私の胸の前に煙のように張り付いている。
君を守らなければいけないな。
【修道院】
(精神集中しているみたい…あれは…敵の武官…またあの人の目を通して見ているみたいに風景が浮かぶの)
(何が始まるの?)
(敵の武官と向き合っている…一騎打ち?!)
【戦場 一騎打ち】
「参る!」
「来い!」
(白馬の騎士め、アッサムと言ったか。覚えておくまでの事もないわ。この手で息の根を止めてやる)
〈一騎打ち、両者馬を走らせる。すれ違いざまアッサムのランスにかかり、ディルが落馬〉
「やったぞ!」
「一騎打ちでアッサムに勝てるはずがない」
「ディル様!」
「お…おのれ、打て!」
敵の弓隊が矢を射かけてくる。
私は、ランスで矢を受けた。
「ヒヒーン」
「ミューズ!」
「卑怯者め!」
「退却!退却だ!」
「逃げて行くぞ」
「連隊長殿!腕が!」
〈アッサムの腕に矢が刺さっている〉
【修道院】
〈腕を押さえてうずくまるローズマリー〉
(また酷いケガをしたのね。意識が…遠のいていく)
【戦場】
「また毒矢にやられたか!」
「解毒剤を!」
「大丈夫だ…ミューズにも…解毒剤を…」
【修道院】
「ローズマリー、ローズマリーしっかりして」
「…私…気を失っていたのね」
【北の砦】
〈ベッドに横たわるアッサム〉
「…う…」
「アッサム」
「ミューズ…は?」
「まだ動いてはいけません」
「離してくれ!ミューズ!」
「完全に毒が抜けるまで、動かないで下さい」
【ギルド・レ・シルフィード】
「アッサムは、まだ戻らないの?」
「戦争は勝ったと、新聞に出てたのに」
「先に帰って来た騎士も居るぞ」
「あ、ルバーブさん」
「アッサムは?アッサムはどうしたの?」
「毒矢にやられたので、少し帰りが遅れている」
「また毒矢?前の戦争の時みたいな事はないでしょうね」
「心配はいらんよ。ただ馬が助かるかどうかだが」
「何ですって?遠隔ヒーリングするわ!」
数日後、私はアルマンドに戻った。
【アッサムの屋敷】
「アッサム様。お城に上がる時間ですよ」
「うーん」
「何がそんなにお嫌なのか」
【王宮】
〈礼装で叙勲を賜るアッサム〉
【ギルドの馬屋】
「だいぶ元気になったな」
「ヒーリングするわよ、ミューズ」
【騎士団】
「また出世したな、アッサム」
「あまり嬉しそうでは有りませんね」
「いつもの事だな」
「聖騎士になられたのに」
「聖騎士になったからと言って、良い気になるなよ」
「またキャラウェイ殿か」
「3年目で聖騎士とは生意気な」
「構わぬ、言わせておけ」
【ギルド・レ・シルフィード】
私がギルドに戻ると、料理が並べられ、皆んなが待っていてくれた。
「マスターが、聖騎士になったお祝いだよ」
「よーし、食うぞ」
「さーて、呑むわよ」
「マスターは、地位や身分を嫌がるけど、聖騎士はやっぱりカッコいいよ」
やはり私は、騎士団に居るより、ギルドの仲間と一緒に居た方が楽しい。
「お祝~い、僕も呑むよ~」
「お兄ちゃんの発明も、最近少しは役に立ってるわよね」
「少し~?酷いよ~」
「俺もギルドの役に立ってるかい?」
「オレガノさんは、ルナ達の防具を作ってくれて、助かるよ」
「喜んでもらえて、嬉しいよ。さ、俺も呑むぞ」
「本当に飲兵衛ギルドですね」
飲兵衛ギルドでなければ、食いしん坊ギルドだな。
「アッサムも、呑みなさいよねー」
あの修道院で作られたワイン…
来月は、星のカーニバルだ。
彼女と巡り会って、1年になる。
ローズマリーが最後の手紙に「二度と私の前に現れないで」と書いて来てから会っていない。
いつも、偶然の出会いしか許されないのだが…
たとえ許されたとえしても、今の彼女が会ってくれるとも思えんが。
ツインレイのパニック。
ツインレイの女性は、相手と巡り会うと、今迄知らなかった自分や、抑え込んでいた自分を見せられて、パニックになると言う。
そして、相手を拒絶する。
愛し合った事実も、相手の存在さえも自分の中から消してしまいたくなるのだそうだ。
彼女の事は、もう忘れてしまおうか?
自分の心に問うと、心は即答する。
忘れる事など出来ない、と。
たとえ一生届かなくても、あの魂と巡り会ってしまった以上、もう、他の人を愛する事など出来ないのであろうと、私は思う。
このまま離れ離れで居ても、私は永遠に君を愛し続けるだろう。
【修道院】
「ダメ…」
(抱き締めないで…神様お願いです。あの人のエネルギーを私から離して下さい)
(私は、神にこの身を捧げたの。貴方を受け入れる事は出来ないのよ)
(こんな事なら、貴方を知らな方が良かったわ。巡り会わなければ良かったのよ)
(もう、終わりにしましょう。今生の2人の魂の学びは終わり。お願いだから離れて、アッサム)
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