4 / 7
雪
目覚めて
しおりを挟む
(寒い……)
ほぅ、と目を閉じたまま息をはく。
寒い?いや、熱いのかもしれない。身体全体が火照っていて、それに何だか頭が重い気がする。口を開けて声を出そうとするけども、それは酷く掠れていて声にはならなかった。喉を痛めてしまっているのか。何処と無く風邪の症状に似ている……いや、あんな所に薄い布一枚で長い間歩いていたのだから風邪をひくのも当たり前かしら。
(……なに、が? あったの? 雪の森に行って、大木に寄りかかって……謎の声が、それで)
謎の声?
雪の森で何があったか、どうしてこうなったのかを痛む頭で考える。そうだ、罪人として雪の森に連れてこられて、大木で眠ってしまったんだ。
思い出すと、一気に意識が覚醒していく。まぶたをゆっくりとあげると、そこは建物の中だった。先程までいた雪の森ではなく、私はどうやら柔らかいベットに寝かされているようだ。
状況が理解できず、視線だけをキョロキョロと動かす。部屋はそこまで広くない。私が寝ているベットと、その横に椅子と小さな丸いテーブル。あとは長方形の大きなテーブルとソファ、本棚とクローゼットがあるくらい。
ベットサイドのテーブルには桶に汲まれた水が入っているようで、これは汗を拭くようなのか。誰かがあのまま助けてくれたらしい。そういえば服もワンピースではなくなっていてちゃんとした服になっている。
(あの声の人が助けてくれたの? どういうこと。何故私は生きているの)
幻聴ではなかったのか。
なぜあの森に人間がいたのか分からないけれども、国の罪人を匿っているなんてバレたら国から追われてしまうことになる。きっと偶然あの森に入ったんだ、じゃないとあんな所に近づく人なんていない。助けてくれたのに、迷惑なんてかけられない。意識はある程度ハッキリしているし、今日中に出ていかないと。
ゆっくりと身体に力を入れて上半身を起こす。頭痛が酷いが、このくらいどうにでもなる。行く場所は……ないけれど、死に場所くらい最後に選びたいわね。
起き上がってのそのそと床に足をつけて立ち上がろうとしたとき、部屋の扉がコンコンと控えめにノックされた。
「こんにちは、もう起きているか? 返事がないからまだ寝ているのか……」
「ぁ……」
突然のことに立ち上がろうとしたままの姿で一瞬固まる。返事をしようにも声がでない。私が何も応えないままベットにいるとそのまま部屋の扉は開かれた。
「おや、大人しそうに見えて……熱はまだ下がっていないのだから助けもなしに動いてはいけないよ。でも目覚めてよかった、おはよう。名前を聞いても?」
そこには、黒曜石のような色をした綺麗な髪を結んだ男性が立っていた。男性は淡い水色の瞳を細めて私に笑いかける。
「ぁ、ぅ」
「もしかして喋れないのか。君は高熱で三日ほど眠っていたんだ。ゆっくりでいいから水を飲めるか?」
男性は扉からベットの横にある椅子に移動し、座る。
そして手に持っていたコップを私の口もとまで持っていき、そのままふちを私の唇につけると、飲みやすいように傾ける。どうやら、男性は私に水を飲ませようと持ってきていたらしい。手に力が入らないので、このまま甘えておこう。
「けほっ……は、あの……ここは」
喉が潤い、なんとか声が出るようになった。聞きたいことは沢山ある。
「私の名前はサキシア。私の友人がここまで君を運んでくれたんだけど覚えてないか?」
「運んでくれた……」
そういえば、なんとなく助けてくれるようなことはあの謎の声が言っていた。謎の声の人とこの人は違うのか。
「意識を失う前だったので曖昧ですが、おぼ、えてます。私の名前はハリシュアルと申します」
「ハリシュアル? 振る舞いが貴族のようなのだけれど、貴族じゃないのか?」
「あ、いや……」
「あぁ、ごめん。気にしないで、ハリシュアル。嫌なことを思い出させてしまったなら謝る。すまない」
「いえ、いいんです。終わったことですし」
どうしても声が弱々しいものになってしまう。
そうだ、もう終わったこと。今頃、父様はあることないこと言われて国中の人から嫌われてしまうのだろう。罪人とはそういうものだ。今更、私一人が頑張ろうとしたところでどうにもならない。家族のことだけが気掛かりだけれども貴族に引き取られたのなら殺されることはないわ。飼い殺しと一緒だもの。
「君を助けた男は一階にいる。二階は客室と私とあの男の部屋しかないんだ。店をやっていてね、彼は店番中だ」
「そう、なんですね。お礼を言わないと」
サキシアさんは私を支えるようにして私の名前は背中に手をあてると、そのままぐっとベットから引いてくれた。
「君の事情はある程度把握しているつもりだ。安心してくれ、酷いことはしないさ。これからのことをちゃんと話そう」
「……はい」
事情を知っているとは、どこまでなのかしら。
震えそうになる身体を自分の腕で抱き締める。全て話すことはできないけれども、ちゃんと話さないと。一緒に長くいることは、この人と助けてくれた彼に迷惑がかかってしまう。
弱くなっては駄目なのに。
彼らから突き放されることを考えると、とても辛い。
ほぅ、と目を閉じたまま息をはく。
寒い?いや、熱いのかもしれない。身体全体が火照っていて、それに何だか頭が重い気がする。口を開けて声を出そうとするけども、それは酷く掠れていて声にはならなかった。喉を痛めてしまっているのか。何処と無く風邪の症状に似ている……いや、あんな所に薄い布一枚で長い間歩いていたのだから風邪をひくのも当たり前かしら。
(……なに、が? あったの? 雪の森に行って、大木に寄りかかって……謎の声が、それで)
謎の声?
雪の森で何があったか、どうしてこうなったのかを痛む頭で考える。そうだ、罪人として雪の森に連れてこられて、大木で眠ってしまったんだ。
思い出すと、一気に意識が覚醒していく。まぶたをゆっくりとあげると、そこは建物の中だった。先程までいた雪の森ではなく、私はどうやら柔らかいベットに寝かされているようだ。
状況が理解できず、視線だけをキョロキョロと動かす。部屋はそこまで広くない。私が寝ているベットと、その横に椅子と小さな丸いテーブル。あとは長方形の大きなテーブルとソファ、本棚とクローゼットがあるくらい。
ベットサイドのテーブルには桶に汲まれた水が入っているようで、これは汗を拭くようなのか。誰かがあのまま助けてくれたらしい。そういえば服もワンピースではなくなっていてちゃんとした服になっている。
(あの声の人が助けてくれたの? どういうこと。何故私は生きているの)
幻聴ではなかったのか。
なぜあの森に人間がいたのか分からないけれども、国の罪人を匿っているなんてバレたら国から追われてしまうことになる。きっと偶然あの森に入ったんだ、じゃないとあんな所に近づく人なんていない。助けてくれたのに、迷惑なんてかけられない。意識はある程度ハッキリしているし、今日中に出ていかないと。
ゆっくりと身体に力を入れて上半身を起こす。頭痛が酷いが、このくらいどうにでもなる。行く場所は……ないけれど、死に場所くらい最後に選びたいわね。
起き上がってのそのそと床に足をつけて立ち上がろうとしたとき、部屋の扉がコンコンと控えめにノックされた。
「こんにちは、もう起きているか? 返事がないからまだ寝ているのか……」
「ぁ……」
突然のことに立ち上がろうとしたままの姿で一瞬固まる。返事をしようにも声がでない。私が何も応えないままベットにいるとそのまま部屋の扉は開かれた。
「おや、大人しそうに見えて……熱はまだ下がっていないのだから助けもなしに動いてはいけないよ。でも目覚めてよかった、おはよう。名前を聞いても?」
そこには、黒曜石のような色をした綺麗な髪を結んだ男性が立っていた。男性は淡い水色の瞳を細めて私に笑いかける。
「ぁ、ぅ」
「もしかして喋れないのか。君は高熱で三日ほど眠っていたんだ。ゆっくりでいいから水を飲めるか?」
男性は扉からベットの横にある椅子に移動し、座る。
そして手に持っていたコップを私の口もとまで持っていき、そのままふちを私の唇につけると、飲みやすいように傾ける。どうやら、男性は私に水を飲ませようと持ってきていたらしい。手に力が入らないので、このまま甘えておこう。
「けほっ……は、あの……ここは」
喉が潤い、なんとか声が出るようになった。聞きたいことは沢山ある。
「私の名前はサキシア。私の友人がここまで君を運んでくれたんだけど覚えてないか?」
「運んでくれた……」
そういえば、なんとなく助けてくれるようなことはあの謎の声が言っていた。謎の声の人とこの人は違うのか。
「意識を失う前だったので曖昧ですが、おぼ、えてます。私の名前はハリシュアルと申します」
「ハリシュアル? 振る舞いが貴族のようなのだけれど、貴族じゃないのか?」
「あ、いや……」
「あぁ、ごめん。気にしないで、ハリシュアル。嫌なことを思い出させてしまったなら謝る。すまない」
「いえ、いいんです。終わったことですし」
どうしても声が弱々しいものになってしまう。
そうだ、もう終わったこと。今頃、父様はあることないこと言われて国中の人から嫌われてしまうのだろう。罪人とはそういうものだ。今更、私一人が頑張ろうとしたところでどうにもならない。家族のことだけが気掛かりだけれども貴族に引き取られたのなら殺されることはないわ。飼い殺しと一緒だもの。
「君を助けた男は一階にいる。二階は客室と私とあの男の部屋しかないんだ。店をやっていてね、彼は店番中だ」
「そう、なんですね。お礼を言わないと」
サキシアさんは私を支えるようにして私の名前は背中に手をあてると、そのままぐっとベットから引いてくれた。
「君の事情はある程度把握しているつもりだ。安心してくれ、酷いことはしないさ。これからのことをちゃんと話そう」
「……はい」
事情を知っているとは、どこまでなのかしら。
震えそうになる身体を自分の腕で抱き締める。全て話すことはできないけれども、ちゃんと話さないと。一緒に長くいることは、この人と助けてくれた彼に迷惑がかかってしまう。
弱くなっては駄目なのに。
彼らから突き放されることを考えると、とても辛い。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる