雪の青年と血を継ぐ令嬢

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バハンデーズ

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「バハンデーズ一族は、"成功する一族"って呼ばれているんだ」



* 
 千年前、バハンデーズという少女がいた。少女は貴族でありながらも他の令嬢と違い美しくなく、誇れるほどの知識もなく、剣も扱えない人間であった。傲慢な貴族の親から産まれた彼女は有能な兄と比べられ「才能がない出来損ない」として扱われ愛されず、満足な食事も与えられず、日々を泣き声を殺しながら過ごしていた。

 ある日、ついに少女は森に捨てられた。そこは大人も近づかない手入れもされない暗く、冷たい雪降る森だった。
 満足な食事を与えられていなかった少女は餓死寸前の状態だった。捨てられた少女は歩いて森を抜けることも出来ないまま死ぬ……筈だったのだ。

 少女は、たまたま森のなかを歩いていた"魔力"と呼ばれる不思議な力を持った青年に救われた。食事を与えられ、睡眠をよくとって少女は少しずつ回復していった。青年とも仲良くなり、毎日話したり色々な場所に出掛けていったり段々、少女は青年に惹かれていった。命を救ってくれ、初めて愛を与えてくれた人。初めて自分を見てくれた人。魔力なんてものを少女は恐れなかった。魔力なんて少女には関係がなかった。


 そして二人は結ばれて恋人になり、夫婦になった。
 魔力は青年にしか使えない特別な力であった。少女は青年と協力して人のために色々なことをした。少女は昔の自分のような苦しい思いをしている人を助けたいと思ったのだ。

 そうした人達を集め二人は国をつくった。不幸だった少女は国民から愛され、幸せになった。
  
 その運命を少女の子は継いだ。不幸から始まる幸せな運命を。その運命はバハンデーズの血をひく人間全員にあるのだ。

今は青年の魔力で攻撃を無効にする膜のようなものを少女の国は張っている。青年は妻を、バハンデーズ一族を、そして国民を守るために国を隠して生きている。

*

「もしかして私の父様は……」
「間違いなくバハンデーズの血をひいている。だってあり得ないでしょ? 孤児から公爵になんて普通はなれないよ」 
「じゃあその力を利用して、父様は」


 今までの功績は父様自身の力ではなかったの。
 私は父様の姿を幼い頃からずっと見てきた。朝から夜中になるまで働いて貴族からの言葉に耐えながら国のために動いていたのに。その全てが父様の力ではなかったのだとしたら、父様は一体なんのために。

 私の考えていることが分かったのかサキシアさんは優しく宥めるように言う。
「いや、ちゃんと君のお父様の力もあるんじゃないか? 幸せになるだけなら結婚して子を作って暮らすだけでも幸せになれるだろう?」

「バハンデーズは成功する未来しか約束されてないよ。それ以外はきっとバハンデーズの子が頑張ったからだね」

「そう、ですか……」

 良かった。父様の努力はこれで証明された。

「で! 僕的にはハリシュアルをバハンデーズの元に連れて行きたいんだよねー、これからのこととか、バハンデーズのこととかもっと知りたいでしょ? お祖母様に会いたくはないかな?」
「えっ、でも話では千年前って。バハンデーズ様は生きていらっしゃるんですか?」

「あぁ、魔力持ちと結婚すると不老になるんだよ。死なない訳じゃないけどねぇ。本当に反則級の力だよねぇ」

 
 どうやら、魔力というものは本当に凄い力らしい。不老になるだなんて、まるでお伽噺みたい。不老になってバハンデーズ様はどう過ごしていらっしゃるのだろう。

「バハンデーズからすると君は多分孫だから、きっとバハンデーズも喜ぶよ。孫を見るのは初めてなんじゃないかなぁ? やぁ、会わせるのが楽しみだよ、僕はね!」


 その言葉を聞いてはっとする。そうだ私は今、国に追われている身で罪人だ。このままだと二人に迷惑がかかってしまう。会いたい、だなんて思えない。このままついて行くのは無理だわ。


「あの、私!」
「ハリシュアルは何も心配しないで。国なんかよりバハンデーズ一族の方が大切だよ、僕は君のことを守れないけど、サキシアが守ってくれるさ!」
「人任せなのか……」

 テドさんはバハンデーズの方が大切だというけれども、私がバハンデーズの血をひいているという証拠はなにもない。それなのにどうして信じてくれるのだろう。どうして罪人と呼ばれる私を連れていってくれるの。


「私が、その、国から追われる身でも良いのですか?」
「バハンデーズ一族ってさ、必ず成功するからバハンデーズ一族の周りにいる人間も幸せになれるんだ。僕も幸せだしね。逆に恨まれてたら……って考えたくないねぇ」
「バハンデーズ一族には良いところもあるけど悪いところもあるんだ。命を狙う者、利用しようとする者、だから私たちが守るんだよ」 


「ハリシュアルと僕たちの出会いもね、きっとバハンデーズのものだよ。だから心配しないで、そうだなぁ。そんなに気になるのなら、僕達が幸せになるために君を守るんだ」


 分かる、きっとテドさんは私が二人から離れようとしていたのに気づいていたのだろう。罪人だということも知っていて、それでも守ってくれると言ってくれている。正直、バハンデーズ一族の運命というものがそんなに凄いものなのか半信半疑だけれども、父様のことを考えると信じるしかない。


 それに、助けてもらったの。少しだけでもいいから、私の体を流れるこの血で恩を返せるのなら……。


「わかりました。サキシアさん、テドさん。私をバハンデーズ様の元へ連れていって下さい、お願い致します」
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