無能と追放されたおっさん、ハズレスキルゲームプレイヤーで世界最強になった上、王女様や聖女様にグイグイ迫られる。え?追放したの誰?知らんがな

島風

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23聖女ちゃんの事情

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「グァッ!」 

「おじさま! 素敵!」 

大通りに向かって歩き出した途端、聖女ちゃんを狙うアッサシンから攻撃があったので撃退した。 

「本当に聖女様なんでやすね?」 

「……信じてくれないのかな?」 

「ははは。すいやせん。いくらなんでも空から聖女様が落ちてくるとは思いやせんから」 

聖女様は上から来る系だった。 

今まで困ってる人を助けたことはあるけど、空から逃亡中の聖女様が落ちてきたのは初めてのパターンだった。 

「ところで、聖女様はなぜ逃亡してるんでやすかい?」 

「聖女様っていうの、やめよ。ミアって呼び捨てがいいな」 

「い、いや、聖女様を呼び捨てになんてできねえです」 

ミアさんが聖女だったというのはびっくりしたけど、確かに聖女様が失踪した頃とミアさんがパーティーに加入した時期と一致する。 

……それにアッサシンに狙われるのが普通の女の子な訳がねぇ。 

「わかりやした。ミアさんって、前と同じでいいですかい?」 

「おじさま、今はそれでいいよ。いつか呼び捨てで呼んでもらうように頑張るね」 

なんて謙虚なんだ。 

やっぱり、ミアさんは聖女だ。 

盗賊ごときの俺なんかにも呼び捨てにされる位、気さくでいたいんだ。 

「で、話は戻りやすが、何で逃亡なんて?」 

「……反抗期……かな?」 

「……かな?」 

「……自分でも分からないから疑問形」 

ミアさんの年頃なら反抗期と言うのも頷けるか……俺は孤児だったから、反抗期になんかなってる余裕は無かったから、よく分からねえ。 

「なるほど。ところでミアさん」 

「なに?」 

「さっきから10分おきにアッサシンから狙われてやすが、これまでどうやって生き延びてやした?」 

疑問だった。 

回復役の聖女ちゃんが、どうやってこれまで? 

「ん? 単に殴って、爆散してもらってたよ」 

ケロッと恐ろしいこと言うな。 

「聖女って、回復役のイメージあるけど、私は殴る系の聖女なの———そりゃ!」 

ドコンという爆音と共に俺が殴り飛ばそうかと思っていた、短剣握りしめた通りすがりのアッサシンを殴り飛ばす。 

「……なるほど、ところでミアさん、さっきから同じ所をグルグルしてることになんか意味があるんですかい?」 

「……むぅ……」 

作り笑顔のままでわかりにくいが、拗ねてるな。 

「ていうか、ミアさん、逃亡者に致命的に向いてないんじゃ?」 

「……むう、おじさま、優しいのに、こういうとこ手厳しいね」 

「すいやせん。ちょっと、心配なもんで、はっきり言った方がいいかと」 

「ううん……おじさま、いい人過ぎるよ。はっきり言ってくれる方が本当の親切」 

「周りにはっきり言ってくれる人はいないのですかい?」 

「……うん。私が聖女だから、みな、機嫌をとったり、顔色を窺ったりする人ばかり……そのくせ。『ニコニコしてるけど何を考えているのか分からない』とか、『笑ってばかりで不気味』とか。そんな感じ」 

「そりゃ、ミアさんが不器用なだけですぜ。わかる人にはわかりやすいですぜ」 

「えっ……?」 

俺の言葉に、ミアさんは驚いた顔をする。 

「ミアさんは相手のことを気遣い過ぎて、いつもニコニコしてるんでさ。前のパーティでも自分の気持ちを押し殺して、気遣って、ニコニコしてやしたから……俺にはわかりやすいですぜ」 

そうだ。この子はいつもそうだった。いつも笑顔を絶やさないで、相手のことを気遣って……前のパーティでも、嫌なことを押し付けられても嫌な顔もせず。 

俺にだって、こんなおっさんの相手するの嫌だろうけど、すごく気遣ってくれた。 

「……おじさま……私のこと分かり易いの?」 

「へい。ニコニコしてても怒ったり、拗ねたり。俺は気がついてましたぜ。嫌なことでも、相手をいつも気遣って……とても素敵な女の子ですぜ」 

「……分かりやすい……はじめて言われた」 

「今までみんな聖女様だって人間だってこと、忘れてたんじゃないですかい」 

「……ふふっ。そうだね」 

驚いた顔が、ふっと笑顔になる。 

作り笑顔じゃなくて、多分、本当の聖女ちゃんの笑顔。 

「いい笑顔ですぜ」 

「……もう、おじさま。好きになっちゃう♡」 

聖女ちゃんは更に素敵な笑顔になった。 

やばい、可愛いとか思っちまった。 

何故かお嬢様の顔がよぎる。何で? 

「なんか……久しぶりに笑ったような気がする」 

「ミアさんの上品な笑顔は素敵ですぜ。だけど、今の普通の女の子みたいな笑顔も魅力的ですぜ。……俺は普通の女の子みたいな笑の方が好きですぜ。多分、そんな普通の女の子みたいな笑顔を見せたら、ミアさんも普通の女の子だって……陰口も消えてしまいやすぜ」 

「私のこと……好き」 

「へい。俺はミアさんのこと好きですぜ」 

何故か下を向いてしまった聖女ちゃん。 

やべえ、いくら気さくだからと言って、ズケズケ言い過ぎて、機嫌を損ねたか? 

「ねえ。おじさま。お願いがあるんだけど」 

「なんですかい?」 

「これから海に連れて行って……お願い」 

どうやら機嫌を損ねた訳ではないことでホッとした。 

「わかりやした」 

「……ありがとう。おじさま」 

聖女ちゃんは何故か満足げに更に素敵な笑顔を向けると、俺に手を絡ませて……む、胸当ててくるの止めて! おっさんも男だぞ! いくら年端もいかない女の子でも、メロンサイズのグイグイ押し当てられたら、理性が保たねえ!
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