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21その頃勇者エルヴィンのパーティでは5
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勇者エルヴィンのパーティはようやくダンジョンの第6層を突破した。それもその筈だ。ダニエル侯爵の私兵の騎士団員5名に守られながらの攻略だからだ。才能はないとは言っても騎士の職業を持つ5名もの兵士に守られながら戦うと楽に勝てる。
「勇者様、オーク・チャンピオン です!!」
ダンジョンを進む斥候役の騎士が上位の魔物が現れた事を告げる。
騎士三人が前衛を務めると、その後ろに剣聖フィーネ、剣豪アンネリーゼと続く、もちろん勇者エルヴィンは一番後ろだ。そして中央に後衛職の騎士二人、賢者シャルロッテ、司祭ナディヤと言う布陣だ。
騎士達が前面で戦い、フィーネやアンネリーゼが隙をついて強烈な一撃を浴びせる。そして、勇者エルヴィンは勇者専用の魔法を唱えた。
「地の精霊王よ 火の精霊王 水の精霊王 風の精霊王 大いなる主神よ 我が四囲に五芒星をあげたり天より御下りて我に力を与えん! 黄金光鉄槌!」
勇者エルヴィンが唱えた魔法が完成する。地、火、水、風の鉄槌が、雨のように魔物たちに降り注ぐ。そして、既に騎士団と他のメンバーに弱らされていた魔物が滅びていく。
「この方法は美味いな…」
冒険者パーティなら喧嘩になりかねない卑怯なやり方で、次々とレベルを上げていくエルヴィン。
しかし、
「エルヴィン様、今日はこの辺で一旦帰還した方が良いのではないでしょうか?」
意見を言ったのは司祭のナディヤだ。賢明な判断だ。主戦力の騎士団は疲弊している。連日のダンジョン攻略の上、勇者エルヴィンだけ安全なところにいて、それどころか美味しい経験値稼ぎのみを行っているのだ。騎士達の士気も高い筈がなかった。
「ナディヤ、俺に意見する気か?」
「いや、そういう訳ではございませんが…」
この頃、勇者パーティではエルヴィンが絶対的な権力を握っていた。騎士団を引き入れたのはエルヴィンの成果だ。そして騎士団はエルヴィンの言う事だけを聞く。だから、エルヴィンの言う事を聞かないと、命に関わりかねないのだ。
「今日は更に先、第7層に行くぞ」
第7層に進むが、一気に苦戦する様になる。それに、勇者パーティは迷子になっていた。何度も攻略した第7層のマップを覚えていたのはアルだったのだ。
一気に魔物が強くなる事で、騎士団の傷が増え、疲労が貯まり、後衛職の魔力も底が見え始めてきた。
「……大丈夫だろうか?」
ナディヤは一人呟く。
この状態で強い魔物が現れれば、騎士団に被害者が出るかもしれない。騎士団への治癒魔法はエルヴィンから禁じられていた。騎士団は騎士団の回復術士の魔法のみ頼りだったが、既に騎士団の回復術士の魔力は尽きていた。当然身体強化魔法も使えない。
こんな時に強力な魔物が現れたら…
「ロイヤル・ミノタウロスだ!!」
遂に第7層の強敵、ロイヤル・ミノタウロスが現れた。
前衛の騎士団は必死で戦うが、既に限界を超えていた。
「うあぁぁあああ!!」
遂に騎士団の一人がミノタウロスのこん棒の餌食になってしまった。ナディヤは慌てて治癒魔法を唱えるが…
「ナディヤ、勿体ない。騎士団に治癒魔法なんて使うな」
エルヴィンに制止される。
「しかし、このままでは!!」
「今、俺が魔法で倒してやる」
再びエルヴィンの攻撃魔法がロイヤル・ミノタウロスを襲うが、止めを刺せない。
そして、ミノタウロスは攻撃魔法を避ける為、左右に移動した前衛を突き抜けて、エルヴィンまっしぐらに目指して、走ってきて、こん棒をエルヴィンに振り下ろした。
ガキン
と、大きな音が響いた。剣聖フィーネの剣がミノタウロスのこん棒を受けたのだ。こん棒の一撃は凄まじい威力だったのか、フィーネの剣の柄を握る手からは血が滴り落ちる。
そして、
斬っ!
フィーネの剣戟がミノタウロスを屠る斬り、止めを刺す。だが、
「大丈夫ですか? エルヴィン様?」
「何をするんだぁ! この雌豚がぁ!」
「きゃぁああ!?」
命の恩人のフィーネの手を払いのけ、雌豚扱いするエルヴィン、何を怒り狂ったのか、フィーネを蹴飛ばした。
「い、痛い……エルヴィン様…」
「なんで俺の経験値稼ぎを邪魔する! お前が経験値を稼いでどうする!」
「やめてください。エルヴィン様、フィーネお姉ちゃんが怪我をしてしまいます」
勇者の力は人外だ。エルヴィンに蹴飛ばされたフィーネはかなりの怪我をした。
騎士団からは軽蔑の目が向けられていた。
「もう嫌だ……!!」
一人の騎士が言い出した。
「そうだ、いくら何でもこの様な扱いは! シュナイダーが死んでしまった。頼むから帰還してくれ!」
エルヴィンは薄ら笑いを浮かべ、こう言った。
「お前達の代わりはいくらでもいるんだよ。俺の為に死ね」
「……」
騎士団も勇者パーティのメンバーも二の句が告げられない。あまりのクズぶりに…
司祭ナディヤは決意した。先輩であるアルベルトがいなくなったこのパーティにいるべきではない。こんなパーティに魔王が倒せる訳が無いのだ。最近セリアの街に魔族を倒したパーティがあると聞く、彼女はそのパーティに参加しようと思った。そちらの方が魔王戦により近いと思えた。こんな処にいては駄目だ。彼女の双眸に決意の光が宿った。
「勇者様、オーク・チャンピオン です!!」
ダンジョンを進む斥候役の騎士が上位の魔物が現れた事を告げる。
騎士三人が前衛を務めると、その後ろに剣聖フィーネ、剣豪アンネリーゼと続く、もちろん勇者エルヴィンは一番後ろだ。そして中央に後衛職の騎士二人、賢者シャルロッテ、司祭ナディヤと言う布陣だ。
騎士達が前面で戦い、フィーネやアンネリーゼが隙をついて強烈な一撃を浴びせる。そして、勇者エルヴィンは勇者専用の魔法を唱えた。
「地の精霊王よ 火の精霊王 水の精霊王 風の精霊王 大いなる主神よ 我が四囲に五芒星をあげたり天より御下りて我に力を与えん! 黄金光鉄槌!」
勇者エルヴィンが唱えた魔法が完成する。地、火、水、風の鉄槌が、雨のように魔物たちに降り注ぐ。そして、既に騎士団と他のメンバーに弱らされていた魔物が滅びていく。
「この方法は美味いな…」
冒険者パーティなら喧嘩になりかねない卑怯なやり方で、次々とレベルを上げていくエルヴィン。
しかし、
「エルヴィン様、今日はこの辺で一旦帰還した方が良いのではないでしょうか?」
意見を言ったのは司祭のナディヤだ。賢明な判断だ。主戦力の騎士団は疲弊している。連日のダンジョン攻略の上、勇者エルヴィンだけ安全なところにいて、それどころか美味しい経験値稼ぎのみを行っているのだ。騎士達の士気も高い筈がなかった。
「ナディヤ、俺に意見する気か?」
「いや、そういう訳ではございませんが…」
この頃、勇者パーティではエルヴィンが絶対的な権力を握っていた。騎士団を引き入れたのはエルヴィンの成果だ。そして騎士団はエルヴィンの言う事だけを聞く。だから、エルヴィンの言う事を聞かないと、命に関わりかねないのだ。
「今日は更に先、第7層に行くぞ」
第7層に進むが、一気に苦戦する様になる。それに、勇者パーティは迷子になっていた。何度も攻略した第7層のマップを覚えていたのはアルだったのだ。
一気に魔物が強くなる事で、騎士団の傷が増え、疲労が貯まり、後衛職の魔力も底が見え始めてきた。
「……大丈夫だろうか?」
ナディヤは一人呟く。
この状態で強い魔物が現れれば、騎士団に被害者が出るかもしれない。騎士団への治癒魔法はエルヴィンから禁じられていた。騎士団は騎士団の回復術士の魔法のみ頼りだったが、既に騎士団の回復術士の魔力は尽きていた。当然身体強化魔法も使えない。
こんな時に強力な魔物が現れたら…
「ロイヤル・ミノタウロスだ!!」
遂に第7層の強敵、ロイヤル・ミノタウロスが現れた。
前衛の騎士団は必死で戦うが、既に限界を超えていた。
「うあぁぁあああ!!」
遂に騎士団の一人がミノタウロスのこん棒の餌食になってしまった。ナディヤは慌てて治癒魔法を唱えるが…
「ナディヤ、勿体ない。騎士団に治癒魔法なんて使うな」
エルヴィンに制止される。
「しかし、このままでは!!」
「今、俺が魔法で倒してやる」
再びエルヴィンの攻撃魔法がロイヤル・ミノタウロスを襲うが、止めを刺せない。
そして、ミノタウロスは攻撃魔法を避ける為、左右に移動した前衛を突き抜けて、エルヴィンまっしぐらに目指して、走ってきて、こん棒をエルヴィンに振り下ろした。
ガキン
と、大きな音が響いた。剣聖フィーネの剣がミノタウロスのこん棒を受けたのだ。こん棒の一撃は凄まじい威力だったのか、フィーネの剣の柄を握る手からは血が滴り落ちる。
そして、
斬っ!
フィーネの剣戟がミノタウロスを屠る斬り、止めを刺す。だが、
「大丈夫ですか? エルヴィン様?」
「何をするんだぁ! この雌豚がぁ!」
「きゃぁああ!?」
命の恩人のフィーネの手を払いのけ、雌豚扱いするエルヴィン、何を怒り狂ったのか、フィーネを蹴飛ばした。
「い、痛い……エルヴィン様…」
「なんで俺の経験値稼ぎを邪魔する! お前が経験値を稼いでどうする!」
「やめてください。エルヴィン様、フィーネお姉ちゃんが怪我をしてしまいます」
勇者の力は人外だ。エルヴィンに蹴飛ばされたフィーネはかなりの怪我をした。
騎士団からは軽蔑の目が向けられていた。
「もう嫌だ……!!」
一人の騎士が言い出した。
「そうだ、いくら何でもこの様な扱いは! シュナイダーが死んでしまった。頼むから帰還してくれ!」
エルヴィンは薄ら笑いを浮かべ、こう言った。
「お前達の代わりはいくらでもいるんだよ。俺の為に死ね」
「……」
騎士団も勇者パーティのメンバーも二の句が告げられない。あまりのクズぶりに…
司祭ナディヤは決意した。先輩であるアルベルトがいなくなったこのパーティにいるべきではない。こんなパーティに魔王が倒せる訳が無いのだ。最近セリアの街に魔族を倒したパーティがあると聞く、彼女はそのパーティに参加しようと思った。そちらの方が魔王戦により近いと思えた。こんな処にいては駄目だ。彼女の双眸に決意の光が宿った。
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