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84シスターエミリアとリナ

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僕は故郷に帰って、フィーネの事を調べたい欲求にかられたが、今は先にやる事があった。フィーネの事は気になる…フィーネが生きていた? でも、フィーネは僕の知っているフィーネではなくなっていた。ましてや、フィーネが誰とでも寝るクソビッチだった…だなんて、僕は信じたくない。それにフィーネが人ではなかったのは明らかだ。 

シスターエミリアに治癒の魔法をかけて、回復させると、教会の調査を開始した。エミリアさんは目を覚ますと、僕達の調査に協力してくれた。 

彼女は何も覚えていなかったが、教会の地下の麻薬を見て、自身が悪魔にその身を乗っ取られていた事を理解するよりなかった。 

「…私達は馬鹿でした」 

「そうです。エミリア様が麻薬に手を染める筈など…」 

「みなさん。自身を責めるのは止めてください。全てはわたくしが悪いのです。わたくしが悪魔に身体を乗っ取られたばかりに…」 

「エミリアさんも自身を責めるのは止めてください。あなた達に罪はありません」 

この教会の人達は敬愛するシスターエミリアが悪事に手に染めた時、ただ、傍観するよりなかった。麻薬の密売に関わったのは教会に勝手に出入りする麻薬密売人達だった。 

教会の人達は麻薬の売買に携わってはいない。ただ、目の前で悪事を働くシスターエミリアを止めようとはしたが、憲兵にシスターを突き出す事はできなかった。麻薬売買に携わった者の処罰は極刑。彼らには、その選択はできなかった。家族同然だったから。 

「罪は全てわたくしにあります。憲兵に引き渡してください。麻薬に手を染めるのだなど、聖職者にあるまじき行為…国王より死を賜り、その罪を償いとうございます…」 

「シスターエミリア! 止めてください! あなたは悪魔に体を乗っ取られていただけです! 何も覚えてはいないのでしょう!」 

「……」 

シスターは黙り込んだ。その頬は羞恥心からか朱に染められている。そして、語り始めた。 

「しかし、麻薬は悪魔のような薬…たくさんの人がきっと、廃人になってしまって…麻薬に依存するようになってしまって、きっと何倍もエッチな刺激に肌が敏感になって、何倍もよくなって、ずっとイキっぱなしになって! もうこの世のものとは思えない快楽を経験して! 男の人とも、凄く仲良くなるんだわ! いけないわ! いけないわ! そんなの! はぁはぁ!!」 

「えっと…」 

なんか、このシスター、薬やってるよね? 

「こんなわたくしは死刑になったほうがいいんです! たくさんの人を気持ちよくさせて、後戻りできない身体にしてしまって、いけないわ!」 

「あの、まず、何処から突っ込みましょうか?」 

「ええっ! そんないきなり突っ込むのだなんて、いけません! わたくしは聖職者! そんな! 今すぐ突っ込みたいだなんて! いけません! それにわたくし、経験が無いのに! いきなり突っ込むのだなんて! ああ! でも、わたくしは英雄のアル様に迷惑をかけた女! ここは贖罪のために! わかりました! 今すぐ何処へでも、突っ込んでください! お尻の○だっていいです!」 

…スパーン 

僕は図らずともこういうタイプの人の扱いを熟知しているので、迷わずエミリアさんの頭をハリセンで叩いた。 

「い、痛いよう…」 

「……」 

教会の関係者はみな目が点になっている。敬愛するシスターのまさかの痴態にただ驚く。 

「シスター…きっと、長い間悪魔に身体を乗っ取らて、おかしくなってしまったんだ」 

教会の関係者の一人がそう呟く。だけど、僕の経験だと、このシスター、おかしくないと思う、ただ素の自分を曝け出してしまっただけだと思う。だって、残念な匂いが凄くするんだもの。 

そんな時、 

「失礼します。お茶を用意しました」 

部屋に入ってきたのは、亜麻色の髪の少女だった。 

「リナ、ありがとう。気が効くわね」 

シスターがお礼を言うと、みなの前にティーカップを置いていく。しかし… 

リナと呼ばれた少女が僕の前にカップを置くとき、その手は震えていた、あまりにも不自然にだ。 

「アル? その紅茶、鑑定してみたら?」 

ヒルデも気がついたのか、僕に紅茶の鑑定を促す。そして、リナと呼ばれた少女はフルフルと震えて、その顔は真っ青に染まっていた。 

「リナ!! あなた、まさか!!」 

「申し訳ございません!! こ、子供達がぁ!!」 

僕は察した。教会の麻薬に加担していたケーニスマルク家の手の者と思しき奴らは全員捕らえたつもりだった。だが、まだ残りがいたのだろう。おそらく、この教会が預かる孤児達が人質に捉えられているのだろう。 

僕達はこのリナという女の子から、教会の近くの孤児院が暴漢に占拠されている事を聞き出した。ナディヤ、ロッテ、ナーガを向かわせた。 

「孤児院はすぐに取り戻します。子供達には指一本触れさせません。安心してください」 

「あ、あの、あなた、いえ、あなた様は一体何者なのですか? あんな暴漢を簡単に取り押さえるなんて…」 

「僕はアルベルト…えっと、恥ずかしいけど、英雄と呼ばれています」 

僕は頭を掻きながら、自分の正体を話した。その方が安心してもらえる筈だ。 

しかし、僕に毒を盛ろうとしたリナという少女は尚も真っ青な顔で、ブルブルと震えていた。僕は彼女を安心させてあげようとした。多分、処罰とかされると思ったんだろう。 

「安心して、リナさん。僕は君をどうこうするつもりはないよ。理由が理由だ。君も好き好んで、僕に毒を盛ったわけじゃないでしょ?」 

「た、確かにリナはアルベルト様に毒など盛りたくありませんでした! でもでも! 私があのダニエル侯爵の娘だと知っても、許してくれるのですか?」 

僕は驚いてしまった、忘れていた人物の名前が突然出てきたのでびっくりした。だが、 

「ダニエル侯爵の家はお取り潰しになったけど、奥さんと娘さん達は実家に帰って、平穏な生活を送っている筈だよ」 

「いえ、リナは正妻の子ではないのです。ですから、父と一緒に奴隷に落とされて、それから、それから…」 

リナは自身の身の上に起きた事を話してくれた。ダニエル侯爵やグナイゼナウ子爵の鬼畜ぶりにドン引きしたけど、むしろ同情するよりなかった。僕はできるだけ優しげな声で許すと伝えようとした。ダニエル侯爵が僕を殺そうとした事は国王陛下から聞いていたけど、彼女の罪じゃないし、むしろ彼女は被害者だ。気に止むことはないよね。 

僕は彼女を許す言葉を綴る事にしたけど、まさかそれが原因で、何故かエミリアさんとリナさんが僕の性奴隷になるなんて、この時、思いもしなかった… 
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