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88堕ちた勇者レオンVSアル
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俺は鋼の日の元の刀を抜くとレオンに向かって構えた。
続いてクリスも。
しかし。
「クリス、手を出さないでくれ。俺はこの王子にわからせてやりたい」
「わかったわ。アリーちゃんとリーゼちゃんを守ることに専念するわ」
俺はこのレオンのプライドを木っ端微塵に粉砕するつもりだ。
決闘でなんとなくわかった。
こいつはそんなに強くない。
なんでレベル99の勇者がこんなに弱いのか意味不明だが、手合わせして理解した。
そしてその傲慢さも理解した。
この男を傲慢にさせている理由、それは全てその強さだ。
だが、彼の強さはジョブ『勇者』を女神から運良く頂いたというだけのこと。
そこに誇るべきモノなどない。
俺はハズレジョブだったから良くわかる。
真に賞賛されなければならないのは努力により研鑽した者達だろう。
俺自身、スキルが覚醒し、師匠や皆がいなければ今頃。
だからこそ、この男が許せない。
一人で何もかも上手くいく訳がないのだ。
この男にも恩人がいた筈だ。
なのに優れたジョブで自身を至上の存在と考えている。
それを正す必要がある。
「さあ、殺し合おうじゃないか!」
「……」
俺は無言で準備をした。命まで取るつもりはない。
身体強化(強)を心の中で発動する。
「主は焼きつくす火、万軍の主は焼きつくす火の炎をもって臨まれる、燃え盛る火はその真価を我が身に示せ―――」
レオンが魔法詠唱に入る。詠唱終わるまで待っている馬鹿いないよな?
ドゴォォォォォォォン!!
轟音と同時に、レオンに急速に近づいてアッパーカットをお見舞いする。
何故か爆音が聞こえる。
「……へ?」
「ぬぽおおおおおおおお!!」
間抜けな俺の声に反して、レオンは忽然と姿を消した。大きくもっと間抜けな悲鳴だけを残して。
「レオン、何処へ行ったんだ?」
「う、上よ、アル!?」
上を向くと、レオンがはるか高い空に吹っ飛んでいた。
「……は?」
俺は意味がわからず、目をぱちくりさせる。
い、いや、スキル身体強化(大)でレオンを殴った。
仮にも勇者。しかもなんだか知らないが、ヤバい漆黒の剣で当然めちゃめちゃ強いと思う。
でも、これじゃ、めちゃめちゃ弱いみたいじゃないか?
勇者って、最強のジョブだよな?
おかしい。
たしかにおもくそ殴ったが、普通、あんなに吹っ飛ぶか?
俺はただ、魔法詠唱を中断させようとして殴っただけだぞ。
「え?」
「へ?」
「は?」
その場にいる騎士達が、素っ頓狂な声をあげる。
さっきまで固唾を飲んで見守っていた騎士達もすっかり度肝を抜かれてしまったようだ。
ぽかんと口を開けて、レオンが飛んでいる放物線を目で追っている。
「…………あぽあぽあぱあぽぽぽぽぽぽぉ!!」
放物線の最高位で悲鳴をあげたレオンが、上昇から落下に軌道を変えると、落ちてきた。
情けない悲鳴をあげながら、見苦しい姿のまま、万歳して手足を大の字にして地面に激突する。
――― ドォォォォォン!!
だが、流石に勇者、穴を這い上がって来ると再び剣を構えた。
「違う、違う! 僕が簡単に負ける筈がない! そうだ。そうなんだ、これはきっと神の試練だ。僕はこの試練乗り越えるんだ。そうだ僕は今ここで――更なる力!――覚醒するんだ。そうに決まっている──ッ!!」
信じられない傲慢。負けを感じた時、女神の導きがあると信じている。
しかし、信じられないことに、レオンの願いは届いた。
病んだ人間性と、漆黒の穢れた聖剣は極めて相性が良かったらしい。
違和感を、強く感じた、レオンの中に。
彼の中にある何かが変わって行った。
それが、一つ小さな波となり、あとはざわめく麻の布のようにざわめいた。
俺が静かになったレオンを見据えると、ゆっくりとレオンが両手を上げる。
その表情には――今まで以上に狂気じみた、歪んだ笑みを浮かべていた。
「褒めてやる、凡人!」
レオンは話し始めた。そして、褒めると同時に俺を侮蔑した。
既に狂人となっているのだろう、その双眸に映るのは黒い金色の闇だ。
「インチキな魔道具の力で、よく、ここまで僕を苦しめた。そして喜べ、お前は十分に役割を果たしたのだ」
「……一体何を言って?」
レオンに異変があり、魔力も禍々しく渦巻くさまもわかった。
しかし、一体何が起こったのだ?
「僕に勝つ? 馬鹿か? お前の努力は僕が更なる覚醒するための呼び水に過ぎなかったのだ!」
完全に逝ってしまった目で、妄言を吐き散らすレオン。だが、存外妄言でないことも、俺にはわかった。そんな俺にレオンは。
「名誉に思うがいい。一番最初に僕の覚醒した姿を見て――そして死ねることを!!」
そして、レオンから立ち昇る魔力が更に苛烈さを増し。
レオンは呪文を詠唱し始めた。
「終わりの時は来たれり 光はこれに打ち勝てぬ 神の御遣いよラッパを吹き鳴らせ『流刑の神々【セブンス・ペイン】』」
「ッ!」
聞いたことがない魔法詠唱。
それが意味なすこと。
それは。
【覚醒】
俺はレオンを鑑定のスキルで見た。
名前:レオン
ジョブ:深淵化した堕ちた勇者
ジョブの正体。それは神の与えた福音なんかじゃない。女神が人のスキルに制約を与えるモノ。
しかし、ジョブのスキルは一方で無条件で魔法やスキルが使える。
応用と多様性を犠牲に、無条件に生まれつき一つの強力な能力を得る。それは利点と欠陥を両方とも有していた。そう、ジョブの所有者には成長というものが見られない。
その象徴がこの男、レオンだ。
だが、そのジョブのスキルにより無条件に得たものは、本来の魔法やスキルと同等の力を使えるのか?
おそらく、答えはノーだ。
歴史上【覚醒】に至った者がいた。ジョブのスキルは能力の本来の半分程度しか引き出せていない。
おそらく、ジョブによってスキルを与えるということは無茶なことなのだろう。
故に本来のモノには遠く及ばない。
しかし、能力への適性が高く、加えて修練を行った者だけはジョブの限界突破を行い、ジョブとスキルを再構築し、その本来のモノに近い境地に達することができる。
それが【覚醒】。ジョブの最終形態。
しかし、レオンの限界突破は本来の【覚醒】ではなかった。
【覚醒】に至ったものは歴史上僅か数人、しかし、覚醒を求め、結果、誤った限界突破を行ったしまった者達は無数に存在する。
力だけを欲した者の末路。ジョブの限界突破には肉体や魔力の他、精神性も重要だ。
それが無いものが至るのは。
闇堕ち。
レオンは闇へ堕ちた。
【覚醒】ではなく、【深淵化】
だが、俺の目には勝利への勝ち筋が見えていた。
続いてクリスも。
しかし。
「クリス、手を出さないでくれ。俺はこの王子にわからせてやりたい」
「わかったわ。アリーちゃんとリーゼちゃんを守ることに専念するわ」
俺はこのレオンのプライドを木っ端微塵に粉砕するつもりだ。
決闘でなんとなくわかった。
こいつはそんなに強くない。
なんでレベル99の勇者がこんなに弱いのか意味不明だが、手合わせして理解した。
そしてその傲慢さも理解した。
この男を傲慢にさせている理由、それは全てその強さだ。
だが、彼の強さはジョブ『勇者』を女神から運良く頂いたというだけのこと。
そこに誇るべきモノなどない。
俺はハズレジョブだったから良くわかる。
真に賞賛されなければならないのは努力により研鑽した者達だろう。
俺自身、スキルが覚醒し、師匠や皆がいなければ今頃。
だからこそ、この男が許せない。
一人で何もかも上手くいく訳がないのだ。
この男にも恩人がいた筈だ。
なのに優れたジョブで自身を至上の存在と考えている。
それを正す必要がある。
「さあ、殺し合おうじゃないか!」
「……」
俺は無言で準備をした。命まで取るつもりはない。
身体強化(強)を心の中で発動する。
「主は焼きつくす火、万軍の主は焼きつくす火の炎をもって臨まれる、燃え盛る火はその真価を我が身に示せ―――」
レオンが魔法詠唱に入る。詠唱終わるまで待っている馬鹿いないよな?
ドゴォォォォォォォン!!
轟音と同時に、レオンに急速に近づいてアッパーカットをお見舞いする。
何故か爆音が聞こえる。
「……へ?」
「ぬぽおおおおおおおお!!」
間抜けな俺の声に反して、レオンは忽然と姿を消した。大きくもっと間抜けな悲鳴だけを残して。
「レオン、何処へ行ったんだ?」
「う、上よ、アル!?」
上を向くと、レオンがはるか高い空に吹っ飛んでいた。
「……は?」
俺は意味がわからず、目をぱちくりさせる。
い、いや、スキル身体強化(大)でレオンを殴った。
仮にも勇者。しかもなんだか知らないが、ヤバい漆黒の剣で当然めちゃめちゃ強いと思う。
でも、これじゃ、めちゃめちゃ弱いみたいじゃないか?
勇者って、最強のジョブだよな?
おかしい。
たしかにおもくそ殴ったが、普通、あんなに吹っ飛ぶか?
俺はただ、魔法詠唱を中断させようとして殴っただけだぞ。
「え?」
「へ?」
「は?」
その場にいる騎士達が、素っ頓狂な声をあげる。
さっきまで固唾を飲んで見守っていた騎士達もすっかり度肝を抜かれてしまったようだ。
ぽかんと口を開けて、レオンが飛んでいる放物線を目で追っている。
「…………あぽあぽあぱあぽぽぽぽぽぽぉ!!」
放物線の最高位で悲鳴をあげたレオンが、上昇から落下に軌道を変えると、落ちてきた。
情けない悲鳴をあげながら、見苦しい姿のまま、万歳して手足を大の字にして地面に激突する。
――― ドォォォォォン!!
だが、流石に勇者、穴を這い上がって来ると再び剣を構えた。
「違う、違う! 僕が簡単に負ける筈がない! そうだ。そうなんだ、これはきっと神の試練だ。僕はこの試練乗り越えるんだ。そうだ僕は今ここで――更なる力!――覚醒するんだ。そうに決まっている──ッ!!」
信じられない傲慢。負けを感じた時、女神の導きがあると信じている。
しかし、信じられないことに、レオンの願いは届いた。
病んだ人間性と、漆黒の穢れた聖剣は極めて相性が良かったらしい。
違和感を、強く感じた、レオンの中に。
彼の中にある何かが変わって行った。
それが、一つ小さな波となり、あとはざわめく麻の布のようにざわめいた。
俺が静かになったレオンを見据えると、ゆっくりとレオンが両手を上げる。
その表情には――今まで以上に狂気じみた、歪んだ笑みを浮かべていた。
「褒めてやる、凡人!」
レオンは話し始めた。そして、褒めると同時に俺を侮蔑した。
既に狂人となっているのだろう、その双眸に映るのは黒い金色の闇だ。
「インチキな魔道具の力で、よく、ここまで僕を苦しめた。そして喜べ、お前は十分に役割を果たしたのだ」
「……一体何を言って?」
レオンに異変があり、魔力も禍々しく渦巻くさまもわかった。
しかし、一体何が起こったのだ?
「僕に勝つ? 馬鹿か? お前の努力は僕が更なる覚醒するための呼び水に過ぎなかったのだ!」
完全に逝ってしまった目で、妄言を吐き散らすレオン。だが、存外妄言でないことも、俺にはわかった。そんな俺にレオンは。
「名誉に思うがいい。一番最初に僕の覚醒した姿を見て――そして死ねることを!!」
そして、レオンから立ち昇る魔力が更に苛烈さを増し。
レオンは呪文を詠唱し始めた。
「終わりの時は来たれり 光はこれに打ち勝てぬ 神の御遣いよラッパを吹き鳴らせ『流刑の神々【セブンス・ペイン】』」
「ッ!」
聞いたことがない魔法詠唱。
それが意味なすこと。
それは。
【覚醒】
俺はレオンを鑑定のスキルで見た。
名前:レオン
ジョブ:深淵化した堕ちた勇者
ジョブの正体。それは神の与えた福音なんかじゃない。女神が人のスキルに制約を与えるモノ。
しかし、ジョブのスキルは一方で無条件で魔法やスキルが使える。
応用と多様性を犠牲に、無条件に生まれつき一つの強力な能力を得る。それは利点と欠陥を両方とも有していた。そう、ジョブの所有者には成長というものが見られない。
その象徴がこの男、レオンだ。
だが、そのジョブのスキルにより無条件に得たものは、本来の魔法やスキルと同等の力を使えるのか?
おそらく、答えはノーだ。
歴史上【覚醒】に至った者がいた。ジョブのスキルは能力の本来の半分程度しか引き出せていない。
おそらく、ジョブによってスキルを与えるということは無茶なことなのだろう。
故に本来のモノには遠く及ばない。
しかし、能力への適性が高く、加えて修練を行った者だけはジョブの限界突破を行い、ジョブとスキルを再構築し、その本来のモノに近い境地に達することができる。
それが【覚醒】。ジョブの最終形態。
しかし、レオンの限界突破は本来の【覚醒】ではなかった。
【覚醒】に至ったものは歴史上僅か数人、しかし、覚醒を求め、結果、誤った限界突破を行ったしまった者達は無数に存在する。
力だけを欲した者の末路。ジョブの限界突破には肉体や魔力の他、精神性も重要だ。
それが無いものが至るのは。
闇堕ち。
レオンは闇へ堕ちた。
【覚醒】ではなく、【深淵化】
だが、俺の目には勝利への勝ち筋が見えていた。
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