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一章
行商も色々、商品も色々、悩むね
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お小遣いを貰った! 行商の商品を覗きに行くと話したら、今までお手伝いしてた分を込み込みに両親がくれたのです! このところ、父は母に付き添って産婆さん所とかによく行くようになってたので、店番とかやってたんだよね。だから、その分だって。薬を出すお手伝いとかもさせてもらってたし、この間のウリセスさんところの手伝いとかもあるけど一番の貢献は両親にとっては店番だったみたい。ナチョも一緒だったということもあって、当然のことだけどナチョの分も出たよ! ナチョはまさか自分もとは思ってなかったみたいで目を丸くして驚いてたけど。なんで、ほんと、この世界にはカメラという文明の機器がないのでしょうね。
「なんか、不思議な感じ」
「そう」
「うん、多分あそこだったら話したり、書面で確認することはあるだろうけど、実際に持つってことはなさそうだし」
「あーね、確かにそんなイメージはあるかも」
お金を使う場面だとしても、そこは従者とかに出させるイメージはあるよね。うん、わかるとも。それにしても手のひらにある数枚の銅貨をにぎにぎしてるナチョは可愛い。
ちなみにこの世界では硬貨が利用されている。紙幣は耐久性などを考えて使用されていないみたい。けれど、遠くの国では紙幣ではないけど木幣が使われているとか。一度はちょっと目にしてみたいよね。まぁ、それはともかくとして硬貨の価値としては基本的に小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、白金貨の七段階に分かれる。基本的にと言ったのは理由があって、実は小銅貨の下に鉄貨というものがあるのだ。まぁ、イメージ的には元の世界の銭が近いかも知れない。そして、鉄貨は王都や大きな町ではあまり表に出てこないらしい。それも含めこの村も含め近隣で見られるのはあって銀貨ぐらいじゃないかと父は教えてくれた。平民の多くは銅貨や小銅貨を使うこととが多いので、小銀貨でも大変珍しい。うん、思えば見たことないかも知れない。ナチョとかならいつかは白金貨とか目にすることがあるかも知れないけど。
「こんなに良かったのかな」
「うーん、多分、奮発してくれたんだと思う」
ここよりも小さな集落や辺鄙な村だと硬貨よりも実物でのやり取りが多い。つまりは物々交換が多く占めてる。けれど、うちはまだ冒険者の方々や行商の人が訪れることもあって、硬貨を手に入れられる、触れることができる。それでも、お小遣いとしてもらった銅貨というのは多い方だ。すんなり私とナチョに出せたというのは薬屋であったからだろう。
村の広場に行くとすでに到着していた行商の方々がお店を開いていた。正直、ここでお店を開いたところであまり収益にはならないと思う。けれど、この村がちょうど隣国と本国の中間に位置であるため、補給と休息を兼ねてるのだとか。なので、水節でなければ結構な頻度で訪れてくれるのだ。そして、この村の風習も知っているのでこの時期はピアスを多めに持ってきてくれている。おかげで、広場には先日成人の儀をしたばかりの子たちが多い。勿論、それ以外のお客さんもいる。大体は何か物珍しいものはないかとそんな感じで。
「ピアスはここらへんだね」
「これは、随分小さいけど宝石?」
スタッドピアスを手に取り、繁々と観察するナチョ。そんなナチョの様子に気付いたのだろう一人の商人がそばにきた。
「よく分かりましたね。ただ、宝石とはいえ、別のものをカットした際に出たものを利用しているのです。一般的にはクズ石と言われてますがね」
「いや、十分だろう。それに無駄がなくていい」
「ありがとうございます。見たところ、村民、ではないですよね」
「今はこの村に世話になっている。気にしないで欲しい」
「左様で」
一言二言話すとなんとなく把握したのだろう商人はそれ以上尋ねることはせず、よろしければと他のピアスの説明をする。ちなみに商人はテルセロさんというのだとか。他の人がいうにはここ数年あたりに加わったばかりの新人さんらしい。
「こちらがスタッドピアスで、ここでは人気のあるものですね」
農作業などのことを考えれば、妥当かとと言いつつも他にもフープ、チェーン、フックなどの説明も忘れない。
「ちなみにこのようなものもあります」
そう言ってナチョの前に持ってきたのはタッセルピアス。あぁ、房のもいいね。金や黄色だと紛れるからそれ以外の色がいいな。無難なところだと目と同じ紅だろうね。目の色と逆の蒼とかでも十分似合いそう。
「……紺碧とかはある?」
「紺碧でございますか、こちらには残念ながらございませんね。ご希望であれば、取り寄せますが」
なんか、すごい視線が突き刺さるんだけど。気にしたら負けということで、私はナチョとテルセロさんの会話を小耳にしながら、商品を眺める。テルセロさんはどちらかというと装飾品を扱ってるのかな。そういう系統が多い。それに他の商人さんのところは食材や服飾、日常品なんかが多い。ピアスはおまけのようだ。いや、まぁ、日常品とか眺めるよりは装飾品の方が楽しいかな。
「……ナチョ色だ」
小さく呟いて手に取ったのは嘴クリップ。あんまり髪が長くないけど伸ばせば、使えるだろう。いや、ナチョ色ってなんだ。確かに金地に赤い石で宝飾がされてるけど。昔だったら、速攻ギウ君色だーって購入してただろう。うん、間違いない。いや、ナチョ色もギウ君色も変わんないけどさ。ほら、向こうは架空のキャラだし。ナチョは、ねぇ。一緒にいる時間が長かった弊害だな。そうだ、そうに違いない。
「リタ、何か気に入ったのあった?」
「にゃ、何もないよ、ない」
さっとクリップを元の場所に戻し、素知らぬ顔で他の装飾品を見る。けど、どうにもナチョには思うところがあるようでじーっと視線が私に突き刺さる。いやー、流石にナチョの色だからって気になったとは言えんです。無理、恥ずかしい。それにね、もしかしたら、ゲームが始まって云々ってあるかも知れないでしょ。なので、できるだけ回避しとこうぜ、私。
「あれ」
「大体、銅貨五枚ほどですね」
「それほどでもないんだ」
「金地ではありますが、あれはメッキですし、ついている装飾も先ほど説明しましたクズ石ですので」
「ふーん、そう。あれ、もらってもいいかな」
「お買い上げありがとうございます」
なんか、傍で購入がなされたんだが。最後のお買い上げしか聞こえなかったんだけど、一体ナチョは何を買ったんだろう? いや、ナチョが何を買おうと自由ではあるんだけど。
「……? ナチョ、なんかした?」
「うん、ちょっとね」
なんか、髪に差し込んだよね。しかも、髪挟んだし。クリップだろうか。いや、それにしても、ナチョすごく満足そうな顔してるんだけど。え、なに、なんなのさ。
手をそっと後頭部に持っていこうとするけど、さりげなくダメとばかりにナチョに阻止される。何か、確かめるくらいいいじゃないか。
「あー、なるほど、そういうことで」
なんか、テルセロさんが納得してるし。どういうことなんで???
後で知ったことではあるけど、私の髪に差し込まれたのは私が見ていた嘴クリップでした。しかも、購入して、私に渡すとか、お小遣いの意味よ。私は自分の買う気満々だったよ。何もナチョが得るものがなかったじゃないか。いや、なんか、満足そうではあったんだけどさ。よくわからないけど。
帰り際に会ったウリセスさんや家にいた両親は私の髪につけられたクリップを見て、なんとも言えない顔をしていた。そうでしょうよ。そうなるよ。
「なんか、不思議な感じ」
「そう」
「うん、多分あそこだったら話したり、書面で確認することはあるだろうけど、実際に持つってことはなさそうだし」
「あーね、確かにそんなイメージはあるかも」
お金を使う場面だとしても、そこは従者とかに出させるイメージはあるよね。うん、わかるとも。それにしても手のひらにある数枚の銅貨をにぎにぎしてるナチョは可愛い。
ちなみにこの世界では硬貨が利用されている。紙幣は耐久性などを考えて使用されていないみたい。けれど、遠くの国では紙幣ではないけど木幣が使われているとか。一度はちょっと目にしてみたいよね。まぁ、それはともかくとして硬貨の価値としては基本的に小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、白金貨の七段階に分かれる。基本的にと言ったのは理由があって、実は小銅貨の下に鉄貨というものがあるのだ。まぁ、イメージ的には元の世界の銭が近いかも知れない。そして、鉄貨は王都や大きな町ではあまり表に出てこないらしい。それも含めこの村も含め近隣で見られるのはあって銀貨ぐらいじゃないかと父は教えてくれた。平民の多くは銅貨や小銅貨を使うこととが多いので、小銀貨でも大変珍しい。うん、思えば見たことないかも知れない。ナチョとかならいつかは白金貨とか目にすることがあるかも知れないけど。
「こんなに良かったのかな」
「うーん、多分、奮発してくれたんだと思う」
ここよりも小さな集落や辺鄙な村だと硬貨よりも実物でのやり取りが多い。つまりは物々交換が多く占めてる。けれど、うちはまだ冒険者の方々や行商の人が訪れることもあって、硬貨を手に入れられる、触れることができる。それでも、お小遣いとしてもらった銅貨というのは多い方だ。すんなり私とナチョに出せたというのは薬屋であったからだろう。
村の広場に行くとすでに到着していた行商の方々がお店を開いていた。正直、ここでお店を開いたところであまり収益にはならないと思う。けれど、この村がちょうど隣国と本国の中間に位置であるため、補給と休息を兼ねてるのだとか。なので、水節でなければ結構な頻度で訪れてくれるのだ。そして、この村の風習も知っているのでこの時期はピアスを多めに持ってきてくれている。おかげで、広場には先日成人の儀をしたばかりの子たちが多い。勿論、それ以外のお客さんもいる。大体は何か物珍しいものはないかとそんな感じで。
「ピアスはここらへんだね」
「これは、随分小さいけど宝石?」
スタッドピアスを手に取り、繁々と観察するナチョ。そんなナチョの様子に気付いたのだろう一人の商人がそばにきた。
「よく分かりましたね。ただ、宝石とはいえ、別のものをカットした際に出たものを利用しているのです。一般的にはクズ石と言われてますがね」
「いや、十分だろう。それに無駄がなくていい」
「ありがとうございます。見たところ、村民、ではないですよね」
「今はこの村に世話になっている。気にしないで欲しい」
「左様で」
一言二言話すとなんとなく把握したのだろう商人はそれ以上尋ねることはせず、よろしければと他のピアスの説明をする。ちなみに商人はテルセロさんというのだとか。他の人がいうにはここ数年あたりに加わったばかりの新人さんらしい。
「こちらがスタッドピアスで、ここでは人気のあるものですね」
農作業などのことを考えれば、妥当かとと言いつつも他にもフープ、チェーン、フックなどの説明も忘れない。
「ちなみにこのようなものもあります」
そう言ってナチョの前に持ってきたのはタッセルピアス。あぁ、房のもいいね。金や黄色だと紛れるからそれ以外の色がいいな。無難なところだと目と同じ紅だろうね。目の色と逆の蒼とかでも十分似合いそう。
「……紺碧とかはある?」
「紺碧でございますか、こちらには残念ながらございませんね。ご希望であれば、取り寄せますが」
なんか、すごい視線が突き刺さるんだけど。気にしたら負けということで、私はナチョとテルセロさんの会話を小耳にしながら、商品を眺める。テルセロさんはどちらかというと装飾品を扱ってるのかな。そういう系統が多い。それに他の商人さんのところは食材や服飾、日常品なんかが多い。ピアスはおまけのようだ。いや、まぁ、日常品とか眺めるよりは装飾品の方が楽しいかな。
「……ナチョ色だ」
小さく呟いて手に取ったのは嘴クリップ。あんまり髪が長くないけど伸ばせば、使えるだろう。いや、ナチョ色ってなんだ。確かに金地に赤い石で宝飾がされてるけど。昔だったら、速攻ギウ君色だーって購入してただろう。うん、間違いない。いや、ナチョ色もギウ君色も変わんないけどさ。ほら、向こうは架空のキャラだし。ナチョは、ねぇ。一緒にいる時間が長かった弊害だな。そうだ、そうに違いない。
「リタ、何か気に入ったのあった?」
「にゃ、何もないよ、ない」
さっとクリップを元の場所に戻し、素知らぬ顔で他の装飾品を見る。けど、どうにもナチョには思うところがあるようでじーっと視線が私に突き刺さる。いやー、流石にナチョの色だからって気になったとは言えんです。無理、恥ずかしい。それにね、もしかしたら、ゲームが始まって云々ってあるかも知れないでしょ。なので、できるだけ回避しとこうぜ、私。
「あれ」
「大体、銅貨五枚ほどですね」
「それほどでもないんだ」
「金地ではありますが、あれはメッキですし、ついている装飾も先ほど説明しましたクズ石ですので」
「ふーん、そう。あれ、もらってもいいかな」
「お買い上げありがとうございます」
なんか、傍で購入がなされたんだが。最後のお買い上げしか聞こえなかったんだけど、一体ナチョは何を買ったんだろう? いや、ナチョが何を買おうと自由ではあるんだけど。
「……? ナチョ、なんかした?」
「うん、ちょっとね」
なんか、髪に差し込んだよね。しかも、髪挟んだし。クリップだろうか。いや、それにしても、ナチョすごく満足そうな顔してるんだけど。え、なに、なんなのさ。
手をそっと後頭部に持っていこうとするけど、さりげなくダメとばかりにナチョに阻止される。何か、確かめるくらいいいじゃないか。
「あー、なるほど、そういうことで」
なんか、テルセロさんが納得してるし。どういうことなんで???
後で知ったことではあるけど、私の髪に差し込まれたのは私が見ていた嘴クリップでした。しかも、購入して、私に渡すとか、お小遣いの意味よ。私は自分の買う気満々だったよ。何もナチョが得るものがなかったじゃないか。いや、なんか、満足そうではあったんだけどさ。よくわからないけど。
帰り際に会ったウリセスさんや家にいた両親は私の髪につけられたクリップを見て、なんとも言えない顔をしていた。そうでしょうよ。そうなるよ。
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