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摩矢episode4
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俺は腹の底から煮えくり返る想いでいっぱいになった。危うく拳を振り上げ、桜木を殴りそうになったが、その時、運転席から桜木の母親が話しかけてきた。
「ごめんね、秋人くん。このやり方ってやっぱり良くないわよね。でも、みんなあなたとじっくり話がしたいのよ」
バックミラー越しに、桜木の母親と目が合ったが、今の俺にはどんな話をされても全てが敵だとしか映らない。
「うるせぇ、部外者がとやかく言うんじゃねぇ!」
威嚇してみせると、桜木の母親は俺に同情の目を寄越した。それが余計に俺の怒りを増幅させた。
「どいつもこいつも俺に説教したいってか!馬鹿は馬鹿らしく、何も考えずに学校へ行けってそう言いたいんだろ?だったら俺はお前らに話す事は何も無ぇ!」
皆の言いたい事は俺もよく分かっている。自分の中の違和感を知りたいが為に、何もかも捨てて一人で行動したいなんて、誰が聞いても頭がおかしくなったとしか思わないだろう。時期さえずらせばそんな事、いつだって可能なのだから。
けれども、俺はもう我慢の限界だった。訳も分からず、身体がそうしたくて、うずうずしている。もう──刺繍に集中しているだけじゃ、この世界との折り合いがつけられないんだ。
そんな俺の個人的な感覚世界を、誰が理解できる?
「──馬鹿は馬鹿らしく学校へ行け、か……」
しんと静まり返えってしまった車内で、桜木の母親がぽつりと呟いた。誰に語りかけるでもない。その言葉の意味を吟味するかのようだった。
「秋人くんは、みんなと違う視点から世界を見ているのね。何も考えず、集団に属する事に疑問を持っている」
静謐に響き渡るその声が、妙に俺の胸を突いた。
「ああ、そうだ!学校に行ったからって、世界の何が解る?机上の話なんか聞いてたって意味なんかねぇだろ!俺はもう、そんな惰性や嘘で固められた世界に居たくねぇんだ!!もっと違う、真の現実世界を知りたいんだ!!」
──ったく、なんなんだ、俺のこの阿保癖ぇ台詞は?!
こんなことを言ったところで、端から見たら単なる社会不適合者の戯言だ。何を言ったって所詮は逃げ口上にしか聞こえないだろう。
「なるほどね。つまり秋人くんは既存の集団意識に疑問を感じているのね。学校という与えられた社会の枠組みではなく、自分自身で道を切り開きたい──。その覚悟があるって事ね?」
「ああ、そうだ!」
「なら、私は賛成よ」
(……………………は?)
桜木母の台詞に、俺は耳を疑った。
「ちょっと、母さん……賛成って……」
透かさず戸惑ったような桜木の声が隣から聞こえた。
「いいじゃない別に。覚悟があるならそっちの方がいいわよ!好きなようにさせてあげなさい」
「でも……別に今じゃなくても……。来年になればもう卒業なんだし……学校でしか味わえない人間関係ってのもあるんだから、それからでも遅くないだろ。だから、秋ちゃん。あとちょっとだけ……。あとちょっとだけだから一緒に学校へ行こうよ!」
最後は懇願するように俺に言った。
「悪りぃな……桜木。俺はもうあの空間にズルズルと浸っていたくないんだ」
「秋ちゃん──!!」
「夕緋、そこまでにしなさい!」
母親の声がぴしゃりと響き渡る。
「秋人くんとあんたでは見えている世界が全然違うのよ」
桜木は唖然としていた。
「見えている世界って……?」
それは俺も聞いてみたい。元から周りとは違う視点で物を見ているという自覚はあるが、どこがどうと言われるとよく分からない。
「──そうね……きっと秋人くんは人から愛されるより、人を……愛したい側なのよ」
(──は???
……なんじゃそりゃ?
……愛?
……なんでそうなる??)
「ごめんね、秋人くん。このやり方ってやっぱり良くないわよね。でも、みんなあなたとじっくり話がしたいのよ」
バックミラー越しに、桜木の母親と目が合ったが、今の俺にはどんな話をされても全てが敵だとしか映らない。
「うるせぇ、部外者がとやかく言うんじゃねぇ!」
威嚇してみせると、桜木の母親は俺に同情の目を寄越した。それが余計に俺の怒りを増幅させた。
「どいつもこいつも俺に説教したいってか!馬鹿は馬鹿らしく、何も考えずに学校へ行けってそう言いたいんだろ?だったら俺はお前らに話す事は何も無ぇ!」
皆の言いたい事は俺もよく分かっている。自分の中の違和感を知りたいが為に、何もかも捨てて一人で行動したいなんて、誰が聞いても頭がおかしくなったとしか思わないだろう。時期さえずらせばそんな事、いつだって可能なのだから。
けれども、俺はもう我慢の限界だった。訳も分からず、身体がそうしたくて、うずうずしている。もう──刺繍に集中しているだけじゃ、この世界との折り合いがつけられないんだ。
そんな俺の個人的な感覚世界を、誰が理解できる?
「──馬鹿は馬鹿らしく学校へ行け、か……」
しんと静まり返えってしまった車内で、桜木の母親がぽつりと呟いた。誰に語りかけるでもない。その言葉の意味を吟味するかのようだった。
「秋人くんは、みんなと違う視点から世界を見ているのね。何も考えず、集団に属する事に疑問を持っている」
静謐に響き渡るその声が、妙に俺の胸を突いた。
「ああ、そうだ!学校に行ったからって、世界の何が解る?机上の話なんか聞いてたって意味なんかねぇだろ!俺はもう、そんな惰性や嘘で固められた世界に居たくねぇんだ!!もっと違う、真の現実世界を知りたいんだ!!」
──ったく、なんなんだ、俺のこの阿保癖ぇ台詞は?!
こんなことを言ったところで、端から見たら単なる社会不適合者の戯言だ。何を言ったって所詮は逃げ口上にしか聞こえないだろう。
「なるほどね。つまり秋人くんは既存の集団意識に疑問を感じているのね。学校という与えられた社会の枠組みではなく、自分自身で道を切り開きたい──。その覚悟があるって事ね?」
「ああ、そうだ!」
「なら、私は賛成よ」
(……………………は?)
桜木母の台詞に、俺は耳を疑った。
「ちょっと、母さん……賛成って……」
透かさず戸惑ったような桜木の声が隣から聞こえた。
「いいじゃない別に。覚悟があるならそっちの方がいいわよ!好きなようにさせてあげなさい」
「でも……別に今じゃなくても……。来年になればもう卒業なんだし……学校でしか味わえない人間関係ってのもあるんだから、それからでも遅くないだろ。だから、秋ちゃん。あとちょっとだけ……。あとちょっとだけだから一緒に学校へ行こうよ!」
最後は懇願するように俺に言った。
「悪りぃな……桜木。俺はもうあの空間にズルズルと浸っていたくないんだ」
「秋ちゃん──!!」
「夕緋、そこまでにしなさい!」
母親の声がぴしゃりと響き渡る。
「秋人くんとあんたでは見えている世界が全然違うのよ」
桜木は唖然としていた。
「見えている世界って……?」
それは俺も聞いてみたい。元から周りとは違う視点で物を見ているという自覚はあるが、どこがどうと言われるとよく分からない。
「──そうね……きっと秋人くんは人から愛されるより、人を……愛したい側なのよ」
(──は???
……なんじゃそりゃ?
……愛?
……なんでそうなる??)
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