どこまでも近くて遠い君

蓮華空

文字の大きさ
34 / 79
摩矢episode 5

34

しおりを挟む
「桜木ぃぃ──!!うぉぉぉ──!!」

 猛牛のような勢いで、訳の分からない雄叫びを上げながら同クラスの塚原が桜木にタックルする。
 桜木は軽く受け止め、「おお!塚ちん!おはよう!」と挨拶をした。

「楽しみだな!楽しみだな!俺、スキー初めてなんだ!就寝班も桜木と同じ班だし、俺の人生、安泰だ!ばんざーい!ばんざーい!」

 公衆の面前で奴はピョンピョンとはしゃぎまくった。迷惑この上ない。

 塚原颯人《つかはらはやと》はクラスの中でも一番のお調子者だ。こいつも別の意味で俺とは正反対の性格をしている。そのせいか中高ずっと同じクラスだったにも関わらず、これまで一度たりとも口を効いたことがない。

 そして、塚原より少し遅れて、パタパタと控えめな足音で俺らに近付いてきたのは、ハムスター少年、三隅洋太だった。三隅は俺と目が合うと、やはり顔面蒼白となって足を止めた。

「ぉ、ぉ、おはよう……ござい、……ます」

 ビクビクしながらお辞儀をして挨拶をする。

「あ、みーちゃんもおはよう!」

 桜木が笑顔で挨拶を返すと、三隅の頬は直ぐに赤くなった。

 なんて分かりやすい反応……。

「あれ?みーちゃん、顔、赤いけど、熱とかない?大丈夫?」

 桜木が三隅の目線までかがみ、頬っぺを優しく撫でた。

 俺がイラッとしながら二人の様子を見ていると、その横で蒼白い顔で硬直している塚原と目が合った。何か言いたそうだが、金魚のように口をパクパクされるだけで何も言わないから、鋭く睨み付けてやる。すると、塚原は体を震わせ、桜木にしがみついた。

「どうした、塚ちん?」

「ま、ま、ま、マジで摩矢を連れてきたのか?!」

「ああ、だからそう言ったろ?」

「ひぇぇぇ──!!そんなぁ~!!ってことは修学旅行中、摩矢ともずっと一緒かよぉ~!俺、怖いよぉ~!嫌だよぉ~!生きた心地しないよぉ~」

(おいおい……もっと小さい声で話せよ……。俺にまで聞こえてるぞ!!)

「大丈夫だよ。摩矢の事は俺に任せればいいから、塚ちんは好きに楽しんでて」

「嫌だぁ~俺は桜木と雪合戦とかして遊びたいぃ~。夜は枕投げしたい~」

 塚原は桜木の袖を掴んで駄々をこね始めた。

(てめぇは一体いくつだよ?!)







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...