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摩矢episode 5
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結局桜木は二人から距離を取り、嫌がる俺の腕を引っ張って集合場所へと向かった。
点呼を取っている間、周囲の奴らは、桜木の隣に居る俺を不審な目で見た。特に彼女である木下希美の視線は俺にとっては酷くきついものだった。彼女からしたら、彼氏である桜木と、もっと距離を縮めて楽しく過ごしたいだろうに……。俺が脇にいるせいで、挨拶すら交わせないでいる。おまけに今日は木下希実どころか、誰一人として桜木に近付いて来る気配がない。いつも人に囲まれ、ワイワイと楽しく過ごしていた桜木が、俺という異端児を連れただけで、奴の日常はすっかり変わってしまっていた。
「摩矢ぁー!お前、よく来たよなあ!」
背後からでかい声で俺を呼んだのは担任の松田だった。いかにも体育教師らしい幅広の体が胸を張ってこちらに近付いてくる。
「来たのはいいが、お前、何か問題を起こしてくれるなよぉ~。俺は面倒臭いことは嫌だぞぉ~」
松田は態度も身体もでかいが精神としては少々軟弱なのではないかと俺は思っている。その証拠に、俺によく来たなあと言っておきながらも直ぐ様『問題を起こすなよ』だ。こいつの最優先事項は教師として自己保身の精神しかない。と、言っても俺だって面倒臭いのは嫌いだから、松田の態度は気に触るが大人しく隅っこで竃馬のように過ごしてやるつもりだから適当に「はい」答えた。
「それにしてもお前のオーラは本当にヤバイよなあ~。立ってるだけなのに異様な雰囲気出てて誰も近付かないもんなあー。でも、この調子だと桜木が可哀想だから、お前は新幹線の中では俺の隣に座ってろ」
「──はっ?!やだよ、そんなの!!」
こんな暑苦しい胸板パツパツの奴と一緒になんかいたくねぇ!
「先生、大丈夫です。摩矢は俺が見てますから」
天の助け、透かさず後ろから桜木がそう言ってくれた。しかし、松田は片眉を上げて渋い顔をする。
「でもなあ、桜木。お前も折角来たんだからみんなと楽しみたいだろ?だったらこんなテロリストみたいな不気味な奴と一緒にいない方がいいぞ。お前はこいつを連れて来ただけでいい仕事をした。後は担任である俺に任せろ!」
「いや、でも……俺が連れて来た手前、それでは無責任だから、俺が面倒みます!」
「いいから、いいから、お前はみんなの所へ行ってろ!──おい!塚原!!桜木をそっちに連れて行け!」
「うぃーす!!桜木、こっちこっち!!」
塚原が嬉しそうに桜木の腕を引っ張り、みんなの所へと連れて行く。
桜木は慌てた様子で俺の腕を掴んだ。
「いや、待て!だったら摩矢もこっちで……」
塚原に引っ張られながら、桜木が俺を引っ張る。
「こらこら、桜木ぃ~。いいから摩矢は置いていけ!何かトラブルになったら面倒だからこいつは俺の横!」
そう言って、松田も俺の手を掴み離さない。
「先生もそう言ってるんだから、桜木は俺達の方へ行こうよ!さっきから木下も寂しそうにしてるよ!」
塚原の一言で俺を掴む桜木の手が緩んだ。
その隙に塚原は桜木を集団の中へと引っ張って行く。すると、周囲がわっと賑やかになり、ホーム内の温度が2、3℃上がったような気がした。
桜木がいつものポジションに収まり、やっとこのクラスの日常が戻ったようだった。
俺は隣の松田を見て少し関心した。流石は担任。俺という異物を取り除いて、クラスを元に戻しやがった。
(ふ~ん……、こいつはこれが狙いだったのか?)
俺は松田を真新しい目で見た。
「しっかし、摩矢もさあ、もうちょっと桜木を見習って柔和な顔を出来ないもんかねぇ~。あの輪に入りたいと思わねぇか?」
「いや、全く……」
にべもない俺の返事に松田は苦笑をした。
そして、何を思ったのか不意に俺の頭に触れようとする。
俺は透かさずその手を振り払った。
「何をする?!」
桜木以外の男に馴れ馴れしく触れられるのなんか勘弁だ。
「お前は……本っ当に可愛くねぇなあ。ちょっと触るくらいいいだろうがっ!」
「なんで触る必要があるんだ?」
意味が解らず松田を振り仰いだら、ウェアのジッパーとネックウォーマーを一気に下げられ、頭のフードも除かれた。
「──ったく!まだスキー場でもないのに、ここまで顔を覆ったらテロリストか強盗にしかみえないだろ!それでなくともお前は異様な雰囲気を醸し出しているんだから気を付けろ!」
「……あ、はあ……。でもフードを取ったらこの頭だけどいいのか?世間からあんたの指導を疑われるぜ?」
俺は自分の銀髪をつまんで見せた。
「いい、いい。世間様もなー、こうして俺とお前が仲睦まじく接していれば、どうしようもない問題児が担任にだけは心を開いている、って風に解釈してくれるだろう。そうすると、俺の教師としての評価が勝手に上がっちゃうから、なんの問題もない」
結局、てめぇの事だけかよ!!と言いたかったが、ここは黙っておくことにした。
それにしても桜木の奴……。
この修学旅行ではずっと俺の側に張り付いているみたいな事を言っていたのに、彼女が寂しそうにしていると聞いた途端、手を離しやがった……
やっぱり、なんだかんだ言って親友より、彼女の方が大事なんだな……
その瞬間を目の当たりにして、俺の胸はまたチクチクと痛み出した。
その後、担任から簡単な注意事項を聞かされ、新幹線に乗り込み、スキー場へと向かった。
修学旅行は三泊四日のスキー・スノボ体験となっている。
新幹線は東京から越後湯沢に向かって走って行った。
点呼を取っている間、周囲の奴らは、桜木の隣に居る俺を不審な目で見た。特に彼女である木下希美の視線は俺にとっては酷くきついものだった。彼女からしたら、彼氏である桜木と、もっと距離を縮めて楽しく過ごしたいだろうに……。俺が脇にいるせいで、挨拶すら交わせないでいる。おまけに今日は木下希実どころか、誰一人として桜木に近付いて来る気配がない。いつも人に囲まれ、ワイワイと楽しく過ごしていた桜木が、俺という異端児を連れただけで、奴の日常はすっかり変わってしまっていた。
「摩矢ぁー!お前、よく来たよなあ!」
背後からでかい声で俺を呼んだのは担任の松田だった。いかにも体育教師らしい幅広の体が胸を張ってこちらに近付いてくる。
「来たのはいいが、お前、何か問題を起こしてくれるなよぉ~。俺は面倒臭いことは嫌だぞぉ~」
松田は態度も身体もでかいが精神としては少々軟弱なのではないかと俺は思っている。その証拠に、俺によく来たなあと言っておきながらも直ぐ様『問題を起こすなよ』だ。こいつの最優先事項は教師として自己保身の精神しかない。と、言っても俺だって面倒臭いのは嫌いだから、松田の態度は気に触るが大人しく隅っこで竃馬のように過ごしてやるつもりだから適当に「はい」答えた。
「それにしてもお前のオーラは本当にヤバイよなあ~。立ってるだけなのに異様な雰囲気出てて誰も近付かないもんなあー。でも、この調子だと桜木が可哀想だから、お前は新幹線の中では俺の隣に座ってろ」
「──はっ?!やだよ、そんなの!!」
こんな暑苦しい胸板パツパツの奴と一緒になんかいたくねぇ!
「先生、大丈夫です。摩矢は俺が見てますから」
天の助け、透かさず後ろから桜木がそう言ってくれた。しかし、松田は片眉を上げて渋い顔をする。
「でもなあ、桜木。お前も折角来たんだからみんなと楽しみたいだろ?だったらこんなテロリストみたいな不気味な奴と一緒にいない方がいいぞ。お前はこいつを連れて来ただけでいい仕事をした。後は担任である俺に任せろ!」
「いや、でも……俺が連れて来た手前、それでは無責任だから、俺が面倒みます!」
「いいから、いいから、お前はみんなの所へ行ってろ!──おい!塚原!!桜木をそっちに連れて行け!」
「うぃーす!!桜木、こっちこっち!!」
塚原が嬉しそうに桜木の腕を引っ張り、みんなの所へと連れて行く。
桜木は慌てた様子で俺の腕を掴んだ。
「いや、待て!だったら摩矢もこっちで……」
塚原に引っ張られながら、桜木が俺を引っ張る。
「こらこら、桜木ぃ~。いいから摩矢は置いていけ!何かトラブルになったら面倒だからこいつは俺の横!」
そう言って、松田も俺の手を掴み離さない。
「先生もそう言ってるんだから、桜木は俺達の方へ行こうよ!さっきから木下も寂しそうにしてるよ!」
塚原の一言で俺を掴む桜木の手が緩んだ。
その隙に塚原は桜木を集団の中へと引っ張って行く。すると、周囲がわっと賑やかになり、ホーム内の温度が2、3℃上がったような気がした。
桜木がいつものポジションに収まり、やっとこのクラスの日常が戻ったようだった。
俺は隣の松田を見て少し関心した。流石は担任。俺という異物を取り除いて、クラスを元に戻しやがった。
(ふ~ん……、こいつはこれが狙いだったのか?)
俺は松田を真新しい目で見た。
「しっかし、摩矢もさあ、もうちょっと桜木を見習って柔和な顔を出来ないもんかねぇ~。あの輪に入りたいと思わねぇか?」
「いや、全く……」
にべもない俺の返事に松田は苦笑をした。
そして、何を思ったのか不意に俺の頭に触れようとする。
俺は透かさずその手を振り払った。
「何をする?!」
桜木以外の男に馴れ馴れしく触れられるのなんか勘弁だ。
「お前は……本っ当に可愛くねぇなあ。ちょっと触るくらいいいだろうがっ!」
「なんで触る必要があるんだ?」
意味が解らず松田を振り仰いだら、ウェアのジッパーとネックウォーマーを一気に下げられ、頭のフードも除かれた。
「──ったく!まだスキー場でもないのに、ここまで顔を覆ったらテロリストか強盗にしかみえないだろ!それでなくともお前は異様な雰囲気を醸し出しているんだから気を付けろ!」
「……あ、はあ……。でもフードを取ったらこの頭だけどいいのか?世間からあんたの指導を疑われるぜ?」
俺は自分の銀髪をつまんで見せた。
「いい、いい。世間様もなー、こうして俺とお前が仲睦まじく接していれば、どうしようもない問題児が担任にだけは心を開いている、って風に解釈してくれるだろう。そうすると、俺の教師としての評価が勝手に上がっちゃうから、なんの問題もない」
結局、てめぇの事だけかよ!!と言いたかったが、ここは黙っておくことにした。
それにしても桜木の奴……。
この修学旅行ではずっと俺の側に張り付いているみたいな事を言っていたのに、彼女が寂しそうにしていると聞いた途端、手を離しやがった……
やっぱり、なんだかんだ言って親友より、彼女の方が大事なんだな……
その瞬間を目の当たりにして、俺の胸はまたチクチクと痛み出した。
その後、担任から簡単な注意事項を聞かされ、新幹線に乗り込み、スキー場へと向かった。
修学旅行は三泊四日のスキー・スノボ体験となっている。
新幹線は東京から越後湯沢に向かって走って行った。
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