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摩矢episode 5
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スキー場に着くと、生徒達は皆、揃いのレンタルウェアに着替えさせられた。デザインはシンプルなブラック系。胸の辺りでV字型に走る白のラインがよく目立つ。
ゲレンデに皆が出ると一先ず集合写真を撮ると言ってクラスごとにかき集められた。
逆光を避けるため、太陽に向かって立たせられたから物凄く眩しい。天気が良いのはよろしいことだが、これでは仕上がった写真はきっとみんなしかめっ面で写っていることだろう。
修学旅行1日目はどうやらスキー教室のようだった。各自、板を渡され、班ごとに分かれる。その際、塚原が桜木の腕を引っ張り泣きわめいていた。
「なんで?!なんで桜木はそっちなの!!俺と桜木は同じ班だろう?!」
「何言ってるの、塚ちん。同じ班なのは就寝班だよ。あとは事前にアンケートで取った経験の有無で班分けされているの。仕方ないでしょ」
どうやら塚原は全く経験が無いため、初心者よちよちコースに入れられたらしい。桜木や俺は毎年家族でスキー、スノボ旅行に出掛けているから上級者ガンガンコースだ。
そして、ふと見ると意外な事に、三隅陽太も上級者ガンガンコースに入っていた。なんだ、あいつやるじゃねぇか……と思って見ていたら、よくよく見ると手足が小刻みに震えている。大丈夫か?こいつ……と顔を覗き込んでみたら、不意に三隅が顔を上げ、俺と目が合った。その途端、三隅の震えは加速し大きくなった。つまり、こいつは俺が同じ班ってのが恐ろしいのか?
可哀想だから俺は三隅から離れ、班の中でも付かず離れずの距離を保つことにした。
それぞれが班に分かれたあと、よちよちコースの連中だけを残し、あとはリフトに乗った。
ここまで来ると流石に松田も俺の事を桜木に任せて、自分の持ち場の監視に向かった。
俺の隣には桜木が乗ったが、俺達に会話は無い。さっき駅で、あれだけ怒鳴り合っただけに、何を話したらいいのか分からない。
桜木も同じなのか、ずっと黙り込んだまま俺の方をじっと見ている。見てるんだったら何か話せよと言いたいが、それともこれは俺に謝れという無言の圧力なのか?
確かに俺の方が九分九厘は悪いと思う。だが、俺はこれまで人に謝ったことなど無い。人に謝り許してもらいたいと思う行為は、その相手と関係を修復したいという事だろう。だが、俺はそもそも人と関係したいと思わないし、桜木に関したって、俺が謝って関係を修復したとしても、元の幼馴染みというポジションでは結局俺が苦しい事に変わりはない。つーことで、俺はこのまま無視を決め込むことにした。
暫くそっぽを向いていると、不意に桜木の顔が近付いてきて、俺の顔を覗き込む。あまりにも近すぎるもんだから、俺は堪らず口を開いた。
「なんだよ?」
「いや、さっきは駅で申し訳なかったな、と思って……」
「なんの事だよ?」
「俺……ずっとイライラしてたから、秋ちゃんが学校を辞めるって言った時から……」
「ああ、確かにな。しかし、なんだってそんなに俺が学校を辞めるのが嫌なんだよ?どうせ学校に居たって俺とお前はほとんど会話しねぇだろ?」
俺がそう言うと桜木は少し困った顔をした。
「実は学校を辞める辞めないが問題じゃないんだ……。ただ、秋ちゃんがそういう悩みを俺に相談してくれないのが寂しかったんだ。たまには俺を頼って欲しい。きっとそんな気持ちが強かったんだ。だから、秋ちゃんが母さんの名刺を喜んで受け取った時、俺はすごい悔しかった。俺では全然頼りにならないんだな……ってのが骨身に染みて……。だから……駅でのことは、単なる八つ当たりだったんだ……本当にごめん」
桜木の告白に、俺は暫くポカーンと惚けてしまった。
「お前……それって……俺に向ける感情か?」
「いや、だから……マジでごめんって……。でも、ほら。秋ちゃんは俺の中ですごく特別な存在だから……」
その特別な存在ってのが俺にはどういう意味なのかさっぱり分からない。
「お前さー。その特別ってのは一体なんなんだよ?彼女、出来たんだろ?だったら特別な存在ってのは彼女一択になるんじゃないの?」
「いや、俺の場合。秋ちゃんも特別」
「お前なあー」
俺は盛大なため息を付いた。
「何が秋ちゃんもだ。そんな事を言っているから、彼女が出来ても長続きしないんだぞ?お前、その事分かってる?」
「何となく……。でもさー、そんな一人に集中なんて出来ないでしょ?みんなそれぞれ大切な人が他にも居る訳だからさあ。家族とか友人とか、それも特別でしょ?だったらその辺の事は彼女も理解出来るんじゃないかなあ」
「理解出来ないから、悉く振られてんだろ、お前……」
俺がそう言うと桜木はぎゃふんとなった。
「──って事は俺ってなんか間違ってる?」
「いや、言葉としては間違ってない。でも、実際問題、彼女になったら、他の特別な奴より更に一段上の特別になりたいってのが本音だ。そして、お前の女になった連中は、お前と付き合ってみて、一切その感覚がないからお前を振るんだ。解る?」
「うう……その一段上の特別ってどんな風にすればそうなるの?」
「そんなこと、俺に聞いてどうする?俺はこれまで誰とも付き合った事がないんだぞ?」
「ああ、そうか。じゃあ、秋ちゃんの解る範囲でお願いします。秋ちゃんって、経験なくても洞察が鋭いから、絶対参考になる!」
何で俺がお前に恋愛レクチャーしなくちゃなんねぇんだ?全く面倒癖ぇ!こうなったら自棄糞だ!
「じゃあ、もっともっと相手に惚れろ!!髪の毛一本一本から、足の爪の垢や鼻糞までまで満遍なく相手を好きになりやがれ!そしたら勝手に一段上の特別になってらあ!つーか、そーなるまで初めから誰とも付き合うんじゃねぇよ!バカっ!!」
ある意味、桜木に対する苛立ちを俺は思いっきりぶつけてやった。
そうでなきゃ、この俺もだが、彼女だって可哀想だ。
ゲレンデに皆が出ると一先ず集合写真を撮ると言ってクラスごとにかき集められた。
逆光を避けるため、太陽に向かって立たせられたから物凄く眩しい。天気が良いのはよろしいことだが、これでは仕上がった写真はきっとみんなしかめっ面で写っていることだろう。
修学旅行1日目はどうやらスキー教室のようだった。各自、板を渡され、班ごとに分かれる。その際、塚原が桜木の腕を引っ張り泣きわめいていた。
「なんで?!なんで桜木はそっちなの!!俺と桜木は同じ班だろう?!」
「何言ってるの、塚ちん。同じ班なのは就寝班だよ。あとは事前にアンケートで取った経験の有無で班分けされているの。仕方ないでしょ」
どうやら塚原は全く経験が無いため、初心者よちよちコースに入れられたらしい。桜木や俺は毎年家族でスキー、スノボ旅行に出掛けているから上級者ガンガンコースだ。
そして、ふと見ると意外な事に、三隅陽太も上級者ガンガンコースに入っていた。なんだ、あいつやるじゃねぇか……と思って見ていたら、よくよく見ると手足が小刻みに震えている。大丈夫か?こいつ……と顔を覗き込んでみたら、不意に三隅が顔を上げ、俺と目が合った。その途端、三隅の震えは加速し大きくなった。つまり、こいつは俺が同じ班ってのが恐ろしいのか?
可哀想だから俺は三隅から離れ、班の中でも付かず離れずの距離を保つことにした。
それぞれが班に分かれたあと、よちよちコースの連中だけを残し、あとはリフトに乗った。
ここまで来ると流石に松田も俺の事を桜木に任せて、自分の持ち場の監視に向かった。
俺の隣には桜木が乗ったが、俺達に会話は無い。さっき駅で、あれだけ怒鳴り合っただけに、何を話したらいいのか分からない。
桜木も同じなのか、ずっと黙り込んだまま俺の方をじっと見ている。見てるんだったら何か話せよと言いたいが、それともこれは俺に謝れという無言の圧力なのか?
確かに俺の方が九分九厘は悪いと思う。だが、俺はこれまで人に謝ったことなど無い。人に謝り許してもらいたいと思う行為は、その相手と関係を修復したいという事だろう。だが、俺はそもそも人と関係したいと思わないし、桜木に関したって、俺が謝って関係を修復したとしても、元の幼馴染みというポジションでは結局俺が苦しい事に変わりはない。つーことで、俺はこのまま無視を決め込むことにした。
暫くそっぽを向いていると、不意に桜木の顔が近付いてきて、俺の顔を覗き込む。あまりにも近すぎるもんだから、俺は堪らず口を開いた。
「なんだよ?」
「いや、さっきは駅で申し訳なかったな、と思って……」
「なんの事だよ?」
「俺……ずっとイライラしてたから、秋ちゃんが学校を辞めるって言った時から……」
「ああ、確かにな。しかし、なんだってそんなに俺が学校を辞めるのが嫌なんだよ?どうせ学校に居たって俺とお前はほとんど会話しねぇだろ?」
俺がそう言うと桜木は少し困った顔をした。
「実は学校を辞める辞めないが問題じゃないんだ……。ただ、秋ちゃんがそういう悩みを俺に相談してくれないのが寂しかったんだ。たまには俺を頼って欲しい。きっとそんな気持ちが強かったんだ。だから、秋ちゃんが母さんの名刺を喜んで受け取った時、俺はすごい悔しかった。俺では全然頼りにならないんだな……ってのが骨身に染みて……。だから……駅でのことは、単なる八つ当たりだったんだ……本当にごめん」
桜木の告白に、俺は暫くポカーンと惚けてしまった。
「お前……それって……俺に向ける感情か?」
「いや、だから……マジでごめんって……。でも、ほら。秋ちゃんは俺の中ですごく特別な存在だから……」
その特別な存在ってのが俺にはどういう意味なのかさっぱり分からない。
「お前さー。その特別ってのは一体なんなんだよ?彼女、出来たんだろ?だったら特別な存在ってのは彼女一択になるんじゃないの?」
「いや、俺の場合。秋ちゃんも特別」
「お前なあー」
俺は盛大なため息を付いた。
「何が秋ちゃんもだ。そんな事を言っているから、彼女が出来ても長続きしないんだぞ?お前、その事分かってる?」
「何となく……。でもさー、そんな一人に集中なんて出来ないでしょ?みんなそれぞれ大切な人が他にも居る訳だからさあ。家族とか友人とか、それも特別でしょ?だったらその辺の事は彼女も理解出来るんじゃないかなあ」
「理解出来ないから、悉く振られてんだろ、お前……」
俺がそう言うと桜木はぎゃふんとなった。
「──って事は俺ってなんか間違ってる?」
「いや、言葉としては間違ってない。でも、実際問題、彼女になったら、他の特別な奴より更に一段上の特別になりたいってのが本音だ。そして、お前の女になった連中は、お前と付き合ってみて、一切その感覚がないからお前を振るんだ。解る?」
「うう……その一段上の特別ってどんな風にすればそうなるの?」
「そんなこと、俺に聞いてどうする?俺はこれまで誰とも付き合った事がないんだぞ?」
「ああ、そうか。じゃあ、秋ちゃんの解る範囲でお願いします。秋ちゃんって、経験なくても洞察が鋭いから、絶対参考になる!」
何で俺がお前に恋愛レクチャーしなくちゃなんねぇんだ?全く面倒癖ぇ!こうなったら自棄糞だ!
「じゃあ、もっともっと相手に惚れろ!!髪の毛一本一本から、足の爪の垢や鼻糞までまで満遍なく相手を好きになりやがれ!そしたら勝手に一段上の特別になってらあ!つーか、そーなるまで初めから誰とも付き合うんじゃねぇよ!バカっ!!」
ある意味、桜木に対する苛立ちを俺は思いっきりぶつけてやった。
そうでなきゃ、この俺もだが、彼女だって可哀想だ。
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