どこまでも近くて遠い君

蓮華空

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摩矢episode 6

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「僕は……女の子が駄目なんです。だから、好きになる人はいつも男の人なんです。それで、……僕は摩矢くんのこと……本気で好きになりました。だから、ぼ、ぼ、ぼ、僕と……つき、付き合って下さい!!」

 三隅は全身を震わせ、顔を紅潮させながら言い切った。きっと、ここまで言うには相当な勇気が必要だったろう。俺がずっと桜木に対して言いたくても出来なかったことだ。それを三角はちゃんと伝えた。──しかも、こんな場所で素っ裸のまま、以前、好きだったはずの桜木の前で、よくぞ言った。まあ、俺が半分言わせたようなもんだけど、でも、やっぱりその勇気はすげえ……。だから、やっぱり返事はきちんとしてやらなきゃならない。嘘偽りのない自分の気持ちを俺自身も吐き出す時だ。
 俺はこちらの様子を黙って伺う桜木に目をやった。

 眉間に皺をきゅっと絞って、桜木らしからぬ険しくて暗い表情をしている。桜木にとっても俺がどう答えるのか、緊張しているのだろう。桜木の為にも俺は自分の気持ちをはっきりと伝えなくては──。

 そして、俺は三隅に向き直った。三隅は俺と目が合うと、突然、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。

「ご、ごめんなさい!!僕みたいな、何の取り柄もない奴なんて……、摩矢くんは絶対に嫌ですよね。やっぱ今のは無かったことにして下さい!!」

 唐突に叫ぶと、三隅は俺の脇をすり抜けて逃げようとした。「お、おい!!」俺は思わず「待て!」と言って三隅の腕を取った。

「お前、勝手に俺の答えを決めるなよ!馬鹿!!」

「だ、だって……僕と摩矢くんなんて、絶対に釣り合わないもん!!」

「釣り合う釣り合わないで人を好きになるもんじゃないだろう!!好きになったら、どうしたって好きなもんは好きなんじゃないのか?!お前は違うのか?」

 三隅は大粒の涙を溢しながら答えた。

「そうです!僕は摩矢くんが好きです!!摩矢くんが僕の事をどう思おうと、僕は摩矢くんが好きです!!」

「じゃあ、もう少しだけ好きでいろ!試しに付き合ってやる!!」

 おいおい!!ちょっと待て、そこの俺──?!一体、何を言ってるんだ!!

 もう一人の俺が自分に叱咤する。本当に俺はどうかしている。だが、目の前でこんなに泣かれると、やっぱり断り難い。

 三隅は驚いた顔をした後、一気に顔が真っ赤になり、目を回し始めた。う、嘘……嘘……と呟きながら、フラフラした足取りで俺に凭れかかる。そして、ふと、俺と目が合うと、突然、飛び退き、「ちょ、ちょっと心の準備を整えてきますっ!!」と叫んで、風呂場から出て行ってしまった。

 バタン!と浴室の扉が閉められ、俺と桜木が取り残された。何とも言えない沈黙が流れ、俺は頭を抱える。

「……これまでお前が女達の告白を受けてしまった気持ちが少し解ったよ……」

 溜め息を溢しながら俺が言うと、桜木は静かに「そっか」と答えた。そして、「付き合うの?」と感情の籠らない淡々とした声で問う。

「いや……そのつもりは無かったんだけど……つい言っちまった」

「駄目じゃん。相手を喜ばせて落とすのって、一番辛いと思うよ」

「分かってるよ」

「じゃあ、どうするの?」

「うーん……試しにって言っただけだから、お試し期間として1週間だけ、ということにすればいいか……俺は三隅のこと、よく知らないから、それで判断するってことにすれば……」

 俺がぶつぶつそう言っている間に、桜木は俺の後ろに回った。そして、背中から俺を包み込むように抱き締める。
 背中で桜木の体温を感じると、俺の心臓は慌ただしくなった。

「なんか……秋ちゃん忘れてるみたいだから言うけど、俺も秋ちゃんのこと……好きって言ったよ」

 耳許で囁かれ、俺はぞくりと総毛立った。

「秋ちゃんはさあ、みーちゃんとこんなこと出来るの?」

 不意に桜木の指が俺の乳首に触れた。

「なっ!何をするんだ、バカ!!」

 俺は身を捩り、桜木の手を離そうと踠いた。しかし、桜木は離れるどころか、俺の首筋に舌を這わせながら、指の腹でさらに乳首を捏ねてきた。ずくん、と下腹部から快感が込み上げてくる。

「桜木!止めろ!!」

「昼間の続きしようか。あの時、秋ちゃんは俺の首に腕を巻き付けてきたよね。あれって、満更でもないってことだね?」

「そ、それは……まあ……。キス……は、そんなに……嫌じゃ……なっ──!」

 ──い、と言う前に桜木の唇が俺の口をふさいだ。そして、貪るように角度を変えて何度も唇を押し当ててくる。少し乱暴なキスが、まるで嫉妬していると言っているような気がして、体がじん……と熱くなる。
 桜木は俺の後頭部に大きくてしっかりとした手を回した。ふっ……と、吐息を溢すと、薄く開けた唇の間に、熱い舌が潜り込んできた。












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