暗い記憶が導く場所へ

蓮華空

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陶也side1

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 ダイニングテーブルの上に料理を並べ終えると、陶也は椅子に座って酷く落ち込んでいた。

 完全にイザヤに避けられてる。ご飯もいらないなんて言われたらどうしよう、などと考えていたら、シャワーを浴びてきたイザヤがキッチンに顔を出した。ハーフパンツに上半身裸のままの姿で、濡れた金髪をガシガシと拭きながら冷蔵庫を開ける。ビールを取り出し、プルトップに手をかけ開けると一気に煽って陶也の正面に座った。

 陶也はほっとした。取り敢えず、ご飯は一緒に食べてくれそうだ。
 陶也は直ぐ様、今日、購入してきたスマホをイザヤに渡した。

「これ、イザヤさんのです!使って下さい」

 イザヤはビールの缶に口を付けたままスマホを一瞥すると、眉間に皺を寄せた。

 陶也は透かさず、「イザヤさんのパスポートとビザは僕が預かりました!すいません!」と先に謝った。

 イザヤは「は?!」と言って驚いた。

「何でお前は人のもん勝手に……」

 最初は怒っている様子だったが、直ぐに落ち着いて、困った風に陶也を見つめた。

「分かったよ。お前の気持ちが落ち着くまでアメリカには帰らねぇから、安心しろ」

 良かった。一先ずはこれで時間は稼げる。だが、イザヤはテーブルに肘を付き、ビールの缶を頭に抱え、深い溜め息をついた。その姿に陶也の胸は痛んだ。問題はそれだけではないのだ。

「あ、あの……。今日、僕が言った事は気にしないで下さい。前に、好きになられても困るような事を言ってましたよね。解ってますから……、だから、今日、言ったことは無かったことにしてください」

 そう陶也が言うと、イザヤはビールの缶をダン!とテーブルに強く置き、「あ?」と言って陶也を見た。心なしかさっきのパスポートの告白より怒っているように感じた。タオルを頭に被り、そこから毛束となって垂れる金髪の隙間から、上目遣いに青い瞳がこちらを睨んでいた。眉と目の間隔がほとんどない、彫りの深い美しい目元と目力に、睨まれながらも陶也は見惚れた。

「バカ野郎。一度言った事はもう戻らないんだ。無理、無理!」

「でも、イザヤさんは好意を持たれても相手の事は考えられないって言ってたから、無かったことにした方がいいと思って……」

 イザヤは苛立たしげに頭に乗ったタオルを掴んで肩にかけた。

「確かに言った。自慢じゃないが、俺は恋愛経験ってのが皆無だ。だから、お前が逐一俺に言えばいいじゃねぇか!お前は俺にどうして欲しい」

 イザヤはビーフシチューを手元に寄せ、食べ始めた。
 
「ならば、返事を下さい」

 きっぱりとフラれればこの話は終わりだ。以後は陶也の心の奥にずっとしまっておけばいいことだ。

「返事ってなんの?」

 陶也は仰天した。なんの?って、今の話の流れから、告白の返事だと解るだろうに……。ひょっとして、その感覚すらない?

「告白に対しての返事です。僕に好きと言われて、イザヤさんがどう思ったのか?」

 そう言うとイザヤは凄く嫌そうな顔をした。

 ──やっぱり、そうだ。

 解ってはいたが、イザヤの答えに、陶也は覚悟を決めた。
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