暗い記憶が導く場所へ

蓮華空

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陶也side1

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「は?父親??」

 思いもよらない母親の呟きに、イザヤも驚いた様子だった。

「俺に父親なんているの?」

「あんた、馬鹿じゃないの?産まれてきたんだから、居るに決まってるでしょ!」

「アホ!そこまで馬鹿にすんな!そんくらい俺だって分かるわ!てめえから父親の話なんか初めて聞くから、こっちだって驚いて聞き方がおかしくなったんだよ!!そうじゃなくて、父親がどこのどいつか、てめえは、はっきり分かってたのか?どうせアバズレだから、お前自身も分かんねぇのかとずっと思ってた」

「何よそれ!……あたしだってね~、初めからアバズレだったわけじゃないのよ!ど~せ、あんたは信じないだろうけど、あんたを産んだ時、あたしがいくつだと思ってるのよ!16よ、16!!まだまだ純粋で可憐な美少女だったのよ!」

「てめえに純粋な少女時代なんかある訳ねぇだろ!産まれた瞬間から化け物の癖に!!」

 イザヤが言った瞬間に、打撃音とイザヤの苦命が聞こえた。母親に叩かれたらしい。

「うるさいわね!本っ当にあんたも、あんたの父親も、そんな風にしかあたしを見ないわよね!そうよ、あたしは化け物よ!化け物の子が、あんたなの!だから、あんただって化け物なのよ!二人も殺しておいて、化け物が化け物を笑ってんじゃないわよ!あたしはねー、誰だって頭がイカれた所を持っている癖に、さも自分はまともだと思ってるナルシスト野郎を見てるとマジでむかつくの!だから、あたしはそいつをとことん苦しめてやるのよ!」

「くっだらねえ!!そんな事のために生きてんのかてめえは!!開き直ってイカれまくってる所が既に終わってるよ!つまり、俺の父親はまともだった訳だ。あんたを見限って捨てたんだから、ざまあ……」

 ドカッとまた打撃音が聞こえ、イザヤが呻いた。

「てめ……、そこ、……肝臓……」

 どうやら脇腹辺りを思いっきり蹴られたようだ。イザヤの苦しそうな息遣いが聞こえた。陶也は心配になった。

「あんたのそういう言い種も本当にムカつく!!あんたさー、日本に来てあの人に会ったんでしょ!でも、聞いてないんだ。あんたの父親が誰かって?」

 ーーまさか!その事をイザヤに話す気なのか?!

「はん?あの人って、爺さんの事か?」

「ふん!やっぱり、何も聞いてないわよね。そりゃそうだ。あんたの父親はねーー」

 ーーやばい!

 それまで、黙って話を聞いていた陶也だったが、慌ててリビングのドアを勢いよく開けた。

 バン!と勢いよく扉が開き、突然、目の前に現れた陶也の姿に、イザヤと母親は驚いた顔をして硬直した。

 陶也が視線をイザヤに向けると、10人かけくらいの大理石で出来た大テーブルの足に、後ろ手で縛られていた。額や頬には所々、殴られた跡や血痕が付いていて、とても痛々しく、陶也は思わず眉をひそめた。

「……陶也……お前……なんで、ここに居るんだ?」

 母親もイザヤの胸ぐらを掴んだ状態で、驚いた顔をしている。

「イザヤにGPSを付けておいた」

 陶也は短く答えた。

「は?」

 どこ?どこに?と言いながら、自分の体を隈無く探す。何が何だか分からない、というように呆けた顔で陶也を見上げた。
 それを見た母親は吹き出した。

「あははは!やるじゃないの、坊や!この馬鹿、全く気付いてなかったようよ。賢いわね。見直したわ。それで、男どもが居なくなった所を見計らって出てきたって訳ね」

 陶也は母親に向き直った。

「はい。あなたとゆっくりお話をしてみたかったので」

 陶也の言葉に、即座に反応したのはイザヤだった。

「馬鹿か、陶也!こいつに話なんか通じねぇよ。それより、何で俺を追って来るんだ。しかも、なんで一人で来てんだよ。GPS付いてるんなら、警察にでも通報すりゃいいだろう。お前が来ることなんかねぇんだ。この馬鹿野郎がっ!!」

 イザヤの叱咤に、陶也も苛立ちを隠せなかった。陶也を危険な目に合わせたくないというイザヤの気持ちは解るが、そのためとはいえ、不意を突いて殴られた事を思い出すと、やり方が強引過ぎて無性に腹が立つ。

「それはイザヤが無茶するからでしょ!僕は言ったよね。一人で行動するなって!イザヤは母親の事となると、すぐ見境なくなるでしょ。イザヤが何をするか分からない状態で警察になんか通報できない!」

 イザヤが反論しようとした時、パンパンと気を散らすように、母親が手を叩いた。

「はい、はい、喧嘩はその辺にしなさいよ」

 母親が呆れたように言った。

「あたしとしては、陶也くんに会いたいと思ってたから、すごく嬉しいのよねー。よく一人で来てくれたわね。有り難う!」

 陶也に向かって、ウインクをしながら母親は言った。
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