87 / 116
陶也side1
85
しおりを挟む
イザヤは不服そうに唇を噛み締めていた。
陶也はその姿に視線を向け、母親にお願いしてみた。
「あの、お話の前にイザヤの縄を解いてもいいですか?」
母親は片方の眉を歪めた。
「駄目よ。躾の利いていない馬鹿は自由にさせられないわ。あんただって言ってたでしょ。あたしを目の前にしたら、こいつは何をするか分からないって、ーー危険よ」
陶也は静かにイザヤを見つめた。
「イザヤ。今度こそ約束して。何もしないってーー、この場は僕に任せてくれる?」
陶也はイザヤの傍らにしゃがみこんだ。
「任せるって、……どうする気だ?お前はこいつが如何にやばい奴か知らねぇだろ?!」
「知ってるよ。僕はイザヤより、この人の事が解るよ。だから、大丈夫」
陶也は安心させるよう、イザヤに微笑んだ。
「は?何を言ってるんだ?お前はこいつに会ったばかりだろ?」
「ええ、実際に会うのは初めてだけど、僕は幼い頃から彼女を知っていました」
ゆっくりと、そして、静かに母親を見つめ、陶也は意味深な笑みを母親に送った。すると、母親は目を細め、陶也の次の言動に集中する。その隙に、後ろ手でイザヤの縄を解こうと手を出した、その瞬間ーー。母親が、持っていた銃を抜いて、陶也の足下に一発撃った。
轟く銃声に陶也だけでなくイザヤも動きを止めた。
そして、母親のドスの効いた声が部屋中に木霊した。
「勝手な真似するんじゃないよ!!あんたはイザヤから離れな!!」
陶也は母親に注意を向けたまま、仕方なく、手をあげて、ゆっくりとイザヤから離れた。充分な距離を取ると、母親は柔和な顔つきに戻り、陶也に訊ねた。
「ねえ……、あんた、あたしの父に育てられたんだってね。あたしを知ってるって、あの人から聞いたの?」
そっけない素振りを見せているが、母親の表情が僅かに変わったのを陶也は見逃さなかった。瞳孔が開いてきている。お爺ちゃんの話は、この人にとって、やはり興味深い話なのだ。
「さあ、どうでしょう?話すとしたら、お爺ちゃんは、どんな話をしていると思います?」
質問を質問で返してやると、母親は苛ついた表情を見せた。
「もういい!どうせろくな話じゃないだろうし、やっぱその話はどうでもいい!それよりもーー」
母親が不気味な笑みを溢した。
「あんた達って、出来てるのよね」
「はい。僕は何度もイザヤに抱かれています」
陶也が軽快に話すと、母親の周りの空気が一瞬冷めたようになり、彼女は眉間に皺を寄せた。イザヤが、「そんな事、そいつに話な」と怒鳴ったが、そのイザヤの反応が事実だと証明した。
母親は憤怒の形相で、陶也に近付き、陶也の頬を思いっきり殴りつけてきた。陶也はそのまま一発目は受けたが、もう一発、殴ろうとしている母親の手を、今度はしっかりと掴んで叱咤した。
「イザヤは、あなたのお父さんじゃないですよ!!」
そう言うと、陶也の頭の中に、次々と母親の暗い記憶が流れ込んできた。
そして、この人の記憶の中にも、やはり在った!!幼い頃に受けた。小さな傷がーー。
陶也はその姿に視線を向け、母親にお願いしてみた。
「あの、お話の前にイザヤの縄を解いてもいいですか?」
母親は片方の眉を歪めた。
「駄目よ。躾の利いていない馬鹿は自由にさせられないわ。あんただって言ってたでしょ。あたしを目の前にしたら、こいつは何をするか分からないって、ーー危険よ」
陶也は静かにイザヤを見つめた。
「イザヤ。今度こそ約束して。何もしないってーー、この場は僕に任せてくれる?」
陶也はイザヤの傍らにしゃがみこんだ。
「任せるって、……どうする気だ?お前はこいつが如何にやばい奴か知らねぇだろ?!」
「知ってるよ。僕はイザヤより、この人の事が解るよ。だから、大丈夫」
陶也は安心させるよう、イザヤに微笑んだ。
「は?何を言ってるんだ?お前はこいつに会ったばかりだろ?」
「ええ、実際に会うのは初めてだけど、僕は幼い頃から彼女を知っていました」
ゆっくりと、そして、静かに母親を見つめ、陶也は意味深な笑みを母親に送った。すると、母親は目を細め、陶也の次の言動に集中する。その隙に、後ろ手でイザヤの縄を解こうと手を出した、その瞬間ーー。母親が、持っていた銃を抜いて、陶也の足下に一発撃った。
轟く銃声に陶也だけでなくイザヤも動きを止めた。
そして、母親のドスの効いた声が部屋中に木霊した。
「勝手な真似するんじゃないよ!!あんたはイザヤから離れな!!」
陶也は母親に注意を向けたまま、仕方なく、手をあげて、ゆっくりとイザヤから離れた。充分な距離を取ると、母親は柔和な顔つきに戻り、陶也に訊ねた。
「ねえ……、あんた、あたしの父に育てられたんだってね。あたしを知ってるって、あの人から聞いたの?」
そっけない素振りを見せているが、母親の表情が僅かに変わったのを陶也は見逃さなかった。瞳孔が開いてきている。お爺ちゃんの話は、この人にとって、やはり興味深い話なのだ。
「さあ、どうでしょう?話すとしたら、お爺ちゃんは、どんな話をしていると思います?」
質問を質問で返してやると、母親は苛ついた表情を見せた。
「もういい!どうせろくな話じゃないだろうし、やっぱその話はどうでもいい!それよりもーー」
母親が不気味な笑みを溢した。
「あんた達って、出来てるのよね」
「はい。僕は何度もイザヤに抱かれています」
陶也が軽快に話すと、母親の周りの空気が一瞬冷めたようになり、彼女は眉間に皺を寄せた。イザヤが、「そんな事、そいつに話な」と怒鳴ったが、そのイザヤの反応が事実だと証明した。
母親は憤怒の形相で、陶也に近付き、陶也の頬を思いっきり殴りつけてきた。陶也はそのまま一発目は受けたが、もう一発、殴ろうとしている母親の手を、今度はしっかりと掴んで叱咤した。
「イザヤは、あなたのお父さんじゃないですよ!!」
そう言うと、陶也の頭の中に、次々と母親の暗い記憶が流れ込んできた。
そして、この人の記憶の中にも、やはり在った!!幼い頃に受けた。小さな傷がーー。
0
あなたにおすすめの小説
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる