Broken Arrows

蓮華空

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 そもそもあれは告白というより、6年前、名前も知らないシャノンを雷亜がそう呼んでいただけであって、ちょっとニュアンスが違うと言いたかったが、止めておいた。

 そんなことは、フィールド内を雄々しく駆け回るシャノンの姿を見たら、もうどうでも良かった。

「嘘つき君には可哀想だけどよー、シャノンの理想って、めちゃくちゃ高いんだぜ!だから、お前がどう逆立ちしたって、相手にはされねーぞ。あいつは以前、寄ってきたヴァレリーモデルなんかもあっさりしたからな」

「何?!ヴァレリーモデルをもか!!」

 驚いたのは宇辰だ。

「ヴァレリーモデル?」

「有名なファッションブランドの専属モデルだよ。そこで売れればスーパーモデルにも匹敵するほどなんだ!……それをあいつはやり捨てしたのかよ!」

 顎が抜けそうなほど宇辰が驚いている間に、試合の攻守どころが交代となり、選手達が何人か戻ってきていた。
 宇辰の話を聞いていたルーカスが背後から近付いて、

「やり捨てって、いくらなんでも表現悪すぎない?」

 と、のんびり嗜めた。

「あれは捨てたと言うより、元々眼中にないのに女が勝手に捧げてくるからそうなる。シャノンの場合はジョージの言うように理想が高すぎるって訳でもなくて、愛に冷めてるつーか、信じてないつーか……そんな感じが俺にはするけどねぇ」

 そんなことより、君達はこれを配ってきて~と、彼は何故だか、タオルとドリンクボトルをどっさりと持ってきて、雷亜と宇辰に渡した。

「じゃあ、これ、選手達がベンチに戻ってきたら渡すんだよ~。マネージャーのお仕事よろしくねー」と、言ってきた。

 宇辰が、「何で俺まで!!」と、文句を言ったら、ルーカスの顔色が瞬時に変わった。

「そこに突っ立ってるなら、仕事せえや!!フィールド内に入れるのは1軍だけだ!それ以外はぶっ潰すぞ!!」

 と、ドスの効いた恐ろしい声で怒鳴った。

 宇辰は尽かさず「はい、分かりました!やります!やります!やらせて頂きます!!」と、青ざめた。

 雷亜も心臓がドキドキした。さっきまで物腰も柔らかく優しそうだったのに、豹変の仕方が有無を言わせぬド迫力だったので、人は見かけで判断してはいけないと雷亜は思った。

「あれ?どうでもいいけど、シャノンは戻ってこないのか?」

 宇辰がルーカスに訊ねると、

「ああ、あいつはディフェンスも続けてやって貰う。前半戦で点差を広げておけば、メンバーチェンジしても勝てるだろうからな。このレギュラーシーズンで出来るだけ多くの選手を使っておきたいんだよね~」

 そうこう言っている間に、シャノンが敵のパスしたボールを中央から走り込み、見事なハイジャンプでボールを奪った。

「やった!インターセプトだ!!」

 ジョージが興奮し、叫んだ。

「うげぇー!マジかよ、あのパスカット!!あの距離にいる人間があそこまで飛んでくるかー?!あ~ああ、相手のQBクォーターバッグ。かなりショック受けてんだろうなあ」

 と、宇辰が敵に同情した。

 シャノンは奪ったボールを持って敵陣のエンドゾーンまで走る。

 大興奮のジョージが雷亜の頭を叩きながら、行け!行け!と、絶叫した。

 雷亜もじっくりシャノンのプレイを観たいのだが、ジョージのせいで視界がブレる。

 
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