Broken Arrows

蓮華空

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どうして?

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 結局、雷亜は自分の腹を自分の精で汚した。後ろに入っていた瓶を抜き、荒い息を付きながら身を丸めて羞恥に耐えた。
 精を放った途端に頭は冷静になり、自分の今の状態に体が震えてくる。

 シャノンはスマホを胸ポケットにしまうと、ティッシュの箱を雷亜に向けて放り投げた。

「汚した所、綺麗に拭き取れよ」

 冷たい物言いだ。
 もしも6年前に英語が話せたら、彼はその時も今のように冷たい言葉と態度で雷亜を嘲笑っていたのだろうか?

「何で……?何でこんな事をするんだよ……」

 雷亜は悔しくて悔しくて堪らなかった。ずっとシャノンの事を心配して生きてきたのにーー。

「だから言ったろ?俺は人なんか信じねえ。特に『愛している』なんて簡単に言う奴は最悪さ。そういう奴こそ真っ先に人を裏切る」

 冷たく蔑んだ瞳に照らされて、雷亜は反射的に叫んでいた。

「勝手に決めつけるな!!」

 裏切っているのは一体どっちだ!

 母も父もシャノンも、いつだって人の話を聞かずにそう決めつける。

 雷亜はいつでも皆を大切に思ってきた。彼らの目に写る雷亜とは一体どんな人間なのか?

「なんで……?なんでそんな風に思っちゃうんだよ?」

「うるせえよ。人間なんてそんなもんだ。お前だって、今は憎らしい目で俺を見ているじゃないか?愛なんて大抵が嘘だ!」

 雷亜はシャノンの唇の動きを茫然と見つめた。

『ーーだからやっぱりお前は嘘つきだ!』

 その瞬間、雷亜の意識は彼方へ飛んでいた。
 いやーー、心は此処に在った。嘲笑するシャノンの顔をスローモーションのように見ていた。 だが、体は雷亜の心を乗せず、勝手に動き出していた。

 気が付けば、車の運転席からシャノンは飛び出し、地面に横たわって意識を失っていた。

 雷亜は愕然とした。
 右足に残るじんっとした感触が、自分の行いを物語っていた。

(俺は……一体何をーー?)

 過去に意識を巻き戻すと、雷亜はシャノンのこめかみに向かって、右足で蹴り込んでいた。

 雷亜は慌てて車から飛び出し、シャノンの様子を確認した。
 完全に失神している。そりゃそうだーー。あの当たりどころはまずい。不意に当てられた脳内は完全にぶれている。

 倒れる瞬間、他に怪我をした所はないか、雷亜は確認した。そして、ふと、シャノンの胸元を見た。ジャケットの内ポケットにはスマホがある。今なら雷亜の恥ずかしい写真を全て削除出来る。

 雷亜はシャノンのジャケットに手を伸ばした。
 

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