Broken Arrows

蓮華空

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消せ!

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(やってしまった──!)

 雷亜は後悔しながら身を離した。慌てて車の中からジーンズを取り出し履いた。そして、このまま逃げてしまおうかと考えたが、ポケットに入っているスマホに触れると、逃げるよりも躊躇いながらシャノンに向き直った。

 そして、息を呑んで自分が汚したシャノンの裸体をカメラに納めた。

「俺の……変な写真を撮ったお返しだ!」

 雷亜の精液がはっきりとそれと分かるように写真を撮った。辱しめを受けた白い肢体はとても淫靡だった。

 今度は下も撮ってやる、という気持ちが湧いて、シャノンのベルトに手をかけた。だが、その時、彼が目を覚ました。

 雷亜は急いで身を離した。

 彼は頭を微かに振りつつ起き上がると、自分の腹に触れた。

 べったりと付いた白い液体に呆然とし、それが何かと悟ると眉間に力がみなぎった。視線を雷亜に移すと、一瞬で焦げ付きそうな怒りの炎で雷亜を睨み付け、自分に向けられたスマホに気付くと瞬時に跳ね起きた。

「てめえ!!何てことしやがる!!」

 雷亜はびくりと身を縮ませるも応戦した。

「そ、それはこっちの台詞だよ!!目には目を歯には歯をだ!君が俺の写真をばら蒔いたら、俺もこの写真をばら蒔く。一蓮托生だ!」
 
「なんだとー?!」

「悪いのは君だ!君が変な薬を使うから……そんな真似をしなくたって、俺は君の嫌がる事はしないって言った!それなのに、俺を信じないから──!」

 口に出したら、余計に悲しくなった。

 『人間は人を裏切るように出来ている』と言い張る現在のシャノンと6年前に海辺で流したシャノンの涙が脳裏に浮かんで重なった。

 本当は6年前と何にも変わっていなかったのだ。雷亜がどんなに想いを重ねても、命を掛けて彼の命を救っても──、彼の精神は未だに救われてはいないのだ。

 雷亜はボロボロと涙を流した。6年前とは違って、今度は雷亜が泣いていた。

 シャノンはその様子を見て、一瞬だけ痛々しい顔をし、躊躇したが、直ぐに眉間に皺を寄せ、三白眼でこちらを睨み付けた。
 
「いいからその写真を消せ!」

「だったら、君も俺の写真を消して!君が消したら俺も消す」

「そっちが先だ!お前が消したら、俺も消す!」

「駄目だ!君が消してから、俺が消す!君の言うことは信じられない!」

 言った途端、ピシリと心が歪んだ。こんな台詞、言いたくなかった。
 
 大切だと想う人を信じられないなんて、疑念だけで留めて置きたかった。はっきりと口に出して言ってしまうと、もうその気持ちからは逃れられない。まだまだ夢を見ていたかった。

 もうシャノンを好きでいられない──。
 
 けれども体は否定し、シャノンを求めているのか涙がずっと止まらない。この6年間、雷亜の生きる礎となっていたのはシャノンの存在があったからだ。それが脆くも崩れ去り、心と身体が二つに引き裂かれそうだった。
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