Broken Arrows

蓮華空

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分からないことだらけ

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 授業へは宇辰のアドバイス通り、先生達に怒られても遅刻するようにした。
 その度にジョージが憤怒の形相でこちらを見ていたが、雷亜は無視した。すると、隣からメモが回ってきて、広げて見ると『絶対ぇぶっ殺す!』というメッセージが書かれていた。ちらりとジョージに視線を送ると、中指を突き立ててきた。雷亜は思わずため息をついた。

(こりゃ宇辰の言う通り、捕まったら血祭りに違いない)

 雷亜は身震いした。

 それにしても昨日からちっとも気を休める時間がない。ヒッチハイクした車の中で寝ただけでは、心や体も休まるはずもなく、だから唯一寛げる授業が死ぬほど眠くなってしまった。

 やばいと思いながらも気が付くといつの間にか肘をついたまま船を漕いでいた。

 雷亜は重い瞼を何度も擦りながら目を覚まそうとしたが、睡魔には勝てなかった。

 雷亜は力なく机に突っ伏して、眠りを貪った。


 そして、微睡みの中で、雷亜は父の夢を見た。


      ※


 あれは父が亡くなる前日──まさに雷亜とは最後の勝負だった。
 
 雷亜の父は日本で名の知れた格闘家だった。

 キックボクシングから総合格闘技に転身。次々と対戦相手を沈め、日本では敵なしの優秀な選手だった。
 父は更なる高みを目指すべく、世界に向けてチャレンジをした。──が、その矢先に負傷。以来、黒星ばかりが目立つようになり、そのまま引退した。しかし、世界に向けた父の意志は収まりがつかず、その夢を雷亜に託そうとした。

 父は雷亜を連れ、各地を転々とさ迷いながら、様々な戦術を雷亜の身に叩き込んだ。

『友だちなど作るな!自分に寄ってくる者、全て敵と思え!』

 これが父の口癖だった。勿論、母は反対した。父と母は雷亜の事でいつも意見が割れ、喧嘩ばかりをしていた。

『あなた病気よ!気が狂ってるわ!雷亜から何もかも奪って!そこまでして勝つ意味なんてないじゃない!』

 幼い雷亜は二人の喧嘩を横で眺める毎日だった。父は何を言っても人の意見に耳を傾ける人ではなかったから、次第に母に対する暴力が増えた。母を助けるためにも、雷亜は父の言う通りに生きていかなければならなかった。

『大丈夫だよ、お母さん。俺は父さんの言う通り強くなる!強くなりたいんだ!だから、心配しないで、だって世界チャンピオンになったら、何もかも手に入るんだ。俺は負けないよ!』

 そう言って母を安心させたかった。だから、父との稽古が辛いなんて素振りは絶対に見せなかった。友達が居なくて寂しいなんて素振りも、勿論見せたつもりはない。

 けれども、母の表情は次第に曇っていき、遂には精神を病んで気が付けば帰らぬ人となってしまった。



 雷亜はどうすれば良かったのだろうか?


 雷亜の事で喧嘩する父と母を見ていたくなかった。


 手を上げられて傷付く母を見ていたくなかった。


 だから、二人のためにも雷亜は頑張ってきたのに、二人は雷亜の前から居なくなってしまった。


 ──雷亜の頑張りに、意味はあったのだろうか?





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