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分からないことだらけ
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「ねー、ねー、ナオミ。シャノンって昨日の試合の日だけ学校に来て、今日はもう来てないんでしょ。噂では試合で勝った後のパーティーで目ぼしい子を見付けたら、持ち帰って散々乱れるって聞いたんだけど、あんた彼と付き合ってた時、どうだったの?大抵、試合の後って彼は学校を休むよね。ってことは休んでる間もしてるの?」
シャノンの名を聞いて、雷亜は後ろの女子のひそひそ話に耳を傾けた。
「ちょっと待って、あたし、別に付き合ってた訳じゃないよ。彼の家に二、三回行った事があるから噂になっただけ。でも、そうね……。他の娘の話では確かにそういう時もあるみたいよ。しかも一方的でガンガン責められるから怖くなって、その娘は精神的に参ってしまったのよね。でも、あたしが行った時は寝てばっかだったかな?」
「やっぱりあんたも寝てるじゃない」
「いやいや、違う。そっちの寝るじゃなくて、本当にスイッチが切れたようにめちゃくちゃ眠るだけ。時々そうなるみたいよ。その辺はジョージ辺りに訊いてみれば?」
雷亜は壁際に居るジョージに視線を移した。雷亜に気付いたのかジョージがこちらを向き、目が合うと直ぐに恐ろしい顔で睨み付けてきた。
「じゃあ、シャノンに関する噂って、半分は本当だけど背びれや尾びれが付いてる場合もあるのね」
「そうだと思うよ。私が思うにシャノンって気分の上がり下がりが激しいから、ちょっと双極性っぽいのよね。だから、会う人によって彼の印象って全然違うでしょう。それが余計に噂を掻き立てるんじゃないかな?」
──双極性?!
──そういえば……確かに……あの運転の仕方……父に似ている……。
走り出したら止まらない。
ブレーキペダルが壊れたかのような暴走。
いや、でもそれだけじゃ……。
雷亜は否定したかったが、シャノンの忙しない煙草の吸い方と酒の飲み方を思い出す。
それも父に似ている……。
「私の従兄弟で双極性のⅡ型になってるのがいて、似てるなあって思う所があるのよねー。でも、双極性障害だとしたら家族がほっとかないと思うから違うのかもしれないけど……」
──ほっといたら……確かに双極性は危ない。
雷亜の父も笑顔で誉めてくれた翌日。自ら命を絶った。
双極性障害は、穏やかになって大丈夫だろうと思った矢先に急変することがある。──だから、怖いのだ。
「そういえばシャノンの家って普段、誰も居ないって聞いたけど本当なの?お陰でやりたい放題出来ていいってポールが言ってた」
「そうそう、すっごいでっかい家なのに、一人でいたいから自分で稼いで家を買ったって言ってた。けど、稼ぐといっても十代で何を言ってるんだか?って感じよね」
── 一人でいたいから……?
そういえば、シャノンは誰の事も信じられない様子だった。
弱味を他人に見せたら足を掬われると思い込んでいる。
だから、幼い頃、雷亜に泣き顔を見られたぐらいの事でも気にしていた。
まさか──弱味を握られたら人生終わり……とか、思ってないよね……?
まさか……ね?
そんな事くらいで……。
───────いや、
───────でも、
……待てよ。
突然、また、つんざくような父の叫び声が頭を過る。
『──敗北は死だ!』
そして、負けた瞬間の父の顔と、橋桁の上から雷亜を逃した時のシャノンの顔がまた重なる。
─────え?!
ちょっと待って……
父さんって……
父さんが死んだ理由って……
─────まさか……、まさか……
そんなわけない!
父さんは雷亜を笑顔で誉めてくれた。
よくやったって──
お前は強いって──
誉めてくれた──
でも、それが……実は父さんの……
心からの……
敗北宣言だとしたら……?
「うわあああああああああああああああ━━━━━━━━!!!」
雷亜は立ち上がって発狂した。
「嘘だ!嘘だ!嘘だっ!」
それでは、父が死んだのは雷亜のせいだったというのか?!
雷亜は父に勝ってはいけなかったのか?
雷亜が父を越えなければ、父はまだ生きていてくれたのか?
──シャノンは?
シャノンはどうなんだ?
『━━━俺はシャノンの弱味を二つ握ったままだ!』
雷亜は振り返って後ろの女子に詰め寄った。
「シャノンの家は何処っ?!!!!」
目を血走らせた雷亜の勢いに、後ろの女子はすっかり怯えて、キャーという悲鳴しか上げない。
それでも雷亜は食い付くように問いただした。その剣幕に教室は騒然となり、先生は教卓の前で怒鳴っている。
周りの生徒達は頭のイカれた奴だと言わんばかりにじりじりと雷亜から離れていったが、その中で生徒達を掻き分けなら、雷亜の襟首を掴んできた奴がいた。
ジョージだ。
お誂え向きだった。
雷亜は掴まれたジョージの腕を取り、体を横に移動した。そして、首に足を絡み付けるように素早く飛んだ。
ジョージは「うわっ!」と声を上げながら、雷亜ごと床に転がった。
飛び付き腕十字が見事に決まった。
雷亜はのたうつジョージの腕を容赦なく締め上げ叱咤した。
「シャノンの家は何処だ?!俺に教えろ!!」
シャノンの名を聞いて、雷亜は後ろの女子のひそひそ話に耳を傾けた。
「ちょっと待って、あたし、別に付き合ってた訳じゃないよ。彼の家に二、三回行った事があるから噂になっただけ。でも、そうね……。他の娘の話では確かにそういう時もあるみたいよ。しかも一方的でガンガン責められるから怖くなって、その娘は精神的に参ってしまったのよね。でも、あたしが行った時は寝てばっかだったかな?」
「やっぱりあんたも寝てるじゃない」
「いやいや、違う。そっちの寝るじゃなくて、本当にスイッチが切れたようにめちゃくちゃ眠るだけ。時々そうなるみたいよ。その辺はジョージ辺りに訊いてみれば?」
雷亜は壁際に居るジョージに視線を移した。雷亜に気付いたのかジョージがこちらを向き、目が合うと直ぐに恐ろしい顔で睨み付けてきた。
「じゃあ、シャノンに関する噂って、半分は本当だけど背びれや尾びれが付いてる場合もあるのね」
「そうだと思うよ。私が思うにシャノンって気分の上がり下がりが激しいから、ちょっと双極性っぽいのよね。だから、会う人によって彼の印象って全然違うでしょう。それが余計に噂を掻き立てるんじゃないかな?」
──双極性?!
──そういえば……確かに……あの運転の仕方……父に似ている……。
走り出したら止まらない。
ブレーキペダルが壊れたかのような暴走。
いや、でもそれだけじゃ……。
雷亜は否定したかったが、シャノンの忙しない煙草の吸い方と酒の飲み方を思い出す。
それも父に似ている……。
「私の従兄弟で双極性のⅡ型になってるのがいて、似てるなあって思う所があるのよねー。でも、双極性障害だとしたら家族がほっとかないと思うから違うのかもしれないけど……」
──ほっといたら……確かに双極性は危ない。
雷亜の父も笑顔で誉めてくれた翌日。自ら命を絶った。
双極性障害は、穏やかになって大丈夫だろうと思った矢先に急変することがある。──だから、怖いのだ。
「そういえばシャノンの家って普段、誰も居ないって聞いたけど本当なの?お陰でやりたい放題出来ていいってポールが言ってた」
「そうそう、すっごいでっかい家なのに、一人でいたいから自分で稼いで家を買ったって言ってた。けど、稼ぐといっても十代で何を言ってるんだか?って感じよね」
── 一人でいたいから……?
そういえば、シャノンは誰の事も信じられない様子だった。
弱味を他人に見せたら足を掬われると思い込んでいる。
だから、幼い頃、雷亜に泣き顔を見られたぐらいの事でも気にしていた。
まさか──弱味を握られたら人生終わり……とか、思ってないよね……?
まさか……ね?
そんな事くらいで……。
───────いや、
───────でも、
……待てよ。
突然、また、つんざくような父の叫び声が頭を過る。
『──敗北は死だ!』
そして、負けた瞬間の父の顔と、橋桁の上から雷亜を逃した時のシャノンの顔がまた重なる。
─────え?!
ちょっと待って……
父さんって……
父さんが死んだ理由って……
─────まさか……、まさか……
そんなわけない!
父さんは雷亜を笑顔で誉めてくれた。
よくやったって──
お前は強いって──
誉めてくれた──
でも、それが……実は父さんの……
心からの……
敗北宣言だとしたら……?
「うわあああああああああああああああ━━━━━━━━!!!」
雷亜は立ち上がって発狂した。
「嘘だ!嘘だ!嘘だっ!」
それでは、父が死んだのは雷亜のせいだったというのか?!
雷亜は父に勝ってはいけなかったのか?
雷亜が父を越えなければ、父はまだ生きていてくれたのか?
──シャノンは?
シャノンはどうなんだ?
『━━━俺はシャノンの弱味を二つ握ったままだ!』
雷亜は振り返って後ろの女子に詰め寄った。
「シャノンの家は何処っ?!!!!」
目を血走らせた雷亜の勢いに、後ろの女子はすっかり怯えて、キャーという悲鳴しか上げない。
それでも雷亜は食い付くように問いただした。その剣幕に教室は騒然となり、先生は教卓の前で怒鳴っている。
周りの生徒達は頭のイカれた奴だと言わんばかりにじりじりと雷亜から離れていったが、その中で生徒達を掻き分けなら、雷亜の襟首を掴んできた奴がいた。
ジョージだ。
お誂え向きだった。
雷亜は掴まれたジョージの腕を取り、体を横に移動した。そして、首に足を絡み付けるように素早く飛んだ。
ジョージは「うわっ!」と声を上げながら、雷亜ごと床に転がった。
飛び付き腕十字が見事に決まった。
雷亜はのたうつジョージの腕を容赦なく締め上げ叱咤した。
「シャノンの家は何処だ?!俺に教えろ!!」
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