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あの日のように……
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次にバスルームに続く扉を開けた。靴が無造作に脱ぎ捨てられている。
──ここか?
雷亜は緊張感した面持ちでバスルームの扉を開けた。
そこに──シャノンが居た!!
バスタブに右手だけを引っ掛けた状態で、力なく項垂れている。
「シャノン!シャノン!聞こえる?!大丈夫?しっかりして!!」
雷亜が飛び付いて身体を揺さぶると、「んー……」と一声だけ反応を寄越した。取り敢えず、生きていてくれた。
「大丈夫?薬……どれだけ飲んだの?」
この様子だと恐らくオーバードーズしている。父もたまにやっていた。何をしても収まらない躁的、又は鬱的な精神の急変動を無理やり抑え込もうとして通常の倍の薬を飲んでしまうのだ。そうなると最早、生ける屍。中身のない、肉体だけがそこに在る状態だ。
「シャノン、聞こえてる?救急車呼ぶよ」
救急車と言った途端、身体が大きく反応した。
「──あ?!」
「救急車呼ぶよ」
と、もう一度繰り返したら、紫色の双眸が開き雷亜を映した。──が、焦点が定まっていない。
「だ めだ……」
と、言って雷亜の襟首を掴んで、ふらつきながらも立ち上がった。
雷亜は少しほっとした。
呂律が回ってないけど、意識があって立ち上がる事ができるのならまだ大丈夫か──、などと思ったのも束の間、シャノンはふらりとバランスを崩し、雷亜に向かって倒れ込んできた。
雷亜はそれを支えるため、足を一歩後退させようとしたが、バスタブがそれを邪魔し、中へすっぽりと落ちてしまった。その上にシャノンが倒れこんで、全く身動きが取れない。
「いててて……、シャノン大丈夫?しっかりして!」
声をかけるもシャノンの反応はなかった。
「シャノン!シャノン!起きて!」
シャノンの背中を叩いたり、着ているシャツを引っ張ったりしたが、雷亜の胸に顔を埋めたまま一向に動く様子はない。だが、降り始めた雨音のような微かな声で「悪かった……」と、謝罪の言葉がポツリと漏れた。
「……シャノン?……気が付いた?」
「……ん」
「大丈夫?ゆっくりでいいから、少しだけ身体をずらしてくれる?」
取り敢えず、雷亜だけでも先に起き上がれれば救急車を呼べる。そんな風に思って、少しでも隙間が出来ればいいと思ったが、シャノンは、一向に動かなかった。
「おーい!シャノン、起きて──!」
一際大きく声をかけながらシャノンの背中を叩いた。すると、弱々しく「悪い……何もかも……本当に……」と呟き、雷亜の腰をきつく抱きしめてきた。
雷亜は息を呑んだ。ぎゅっと両腕で包まれる圧を感じると、鼓動が急激に早まった。胸にプラチナの髪が揺れている。シャノンに鼓動の変化を気付かれたらどうしよう、と考えながらそれを誤魔化すように問いかけた。
「シャノン?」
「あんな事……するつもりじゃなかった……」
──え?!
雷亜は戸惑った。
あんな事って、いったい何を指しているんだろう?
雷亜の疑問に答えるように、途切れ途切れシャノンは話始めた。
「俺は……、いつも、いつも……間違った態度ばかりを取ってしまう……餓鬼の頃だって、俺があんな真似をしなければ、お前は……顔に……あんな傷を負わなくて済んだ……」
──え?!
あの……6年前の事故の話?
──ここか?
雷亜は緊張感した面持ちでバスルームの扉を開けた。
そこに──シャノンが居た!!
バスタブに右手だけを引っ掛けた状態で、力なく項垂れている。
「シャノン!シャノン!聞こえる?!大丈夫?しっかりして!!」
雷亜が飛び付いて身体を揺さぶると、「んー……」と一声だけ反応を寄越した。取り敢えず、生きていてくれた。
「大丈夫?薬……どれだけ飲んだの?」
この様子だと恐らくオーバードーズしている。父もたまにやっていた。何をしても収まらない躁的、又は鬱的な精神の急変動を無理やり抑え込もうとして通常の倍の薬を飲んでしまうのだ。そうなると最早、生ける屍。中身のない、肉体だけがそこに在る状態だ。
「シャノン、聞こえてる?救急車呼ぶよ」
救急車と言った途端、身体が大きく反応した。
「──あ?!」
「救急車呼ぶよ」
と、もう一度繰り返したら、紫色の双眸が開き雷亜を映した。──が、焦点が定まっていない。
「だ めだ……」
と、言って雷亜の襟首を掴んで、ふらつきながらも立ち上がった。
雷亜は少しほっとした。
呂律が回ってないけど、意識があって立ち上がる事ができるのならまだ大丈夫か──、などと思ったのも束の間、シャノンはふらりとバランスを崩し、雷亜に向かって倒れ込んできた。
雷亜はそれを支えるため、足を一歩後退させようとしたが、バスタブがそれを邪魔し、中へすっぽりと落ちてしまった。その上にシャノンが倒れこんで、全く身動きが取れない。
「いててて……、シャノン大丈夫?しっかりして!」
声をかけるもシャノンの反応はなかった。
「シャノン!シャノン!起きて!」
シャノンの背中を叩いたり、着ているシャツを引っ張ったりしたが、雷亜の胸に顔を埋めたまま一向に動く様子はない。だが、降り始めた雨音のような微かな声で「悪かった……」と、謝罪の言葉がポツリと漏れた。
「……シャノン?……気が付いた?」
「……ん」
「大丈夫?ゆっくりでいいから、少しだけ身体をずらしてくれる?」
取り敢えず、雷亜だけでも先に起き上がれれば救急車を呼べる。そんな風に思って、少しでも隙間が出来ればいいと思ったが、シャノンは、一向に動かなかった。
「おーい!シャノン、起きて──!」
一際大きく声をかけながらシャノンの背中を叩いた。すると、弱々しく「悪い……何もかも……本当に……」と呟き、雷亜の腰をきつく抱きしめてきた。
雷亜は息を呑んだ。ぎゅっと両腕で包まれる圧を感じると、鼓動が急激に早まった。胸にプラチナの髪が揺れている。シャノンに鼓動の変化を気付かれたらどうしよう、と考えながらそれを誤魔化すように問いかけた。
「シャノン?」
「あんな事……するつもりじゃなかった……」
──え?!
雷亜は戸惑った。
あんな事って、いったい何を指しているんだろう?
雷亜の疑問に答えるように、途切れ途切れシャノンは話始めた。
「俺は……、いつも、いつも……間違った態度ばかりを取ってしまう……餓鬼の頃だって、俺があんな真似をしなければ、お前は……顔に……あんな傷を負わなくて済んだ……」
──え?!
あの……6年前の事故の話?
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