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あの日のように……
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「でも……、スマホを家に置き忘れてきたから、今は持ってないんだけど……」
「は?!!!──何で持ってないんだ!」
とシャノンは怒鳴ったが、元はといえば、あの追いかけっこのせいで、朝がバタバタになり、うっかり充電したまま家を飛び出してしまったのだ。
それをこの人にだけは咎められたくない。
スマホを忘れて悔しい思いをしているのはこっちの方だ!と怒鳴り返してやりたかったが我慢した。今のシャノンにそんな態度を取ったら火に油を注ぐようなものだろう。
「そんなことより、体調はどうなの?──薬。絶対、ODしてたでしょ」
そう言うと、シャノンは退き、顔をしかめた。
「お、お前には関係ねぇだろっ!──ってか、なんでお前がここに居る?!どっから入ってきた?!不法侵入で通報するぞ!」
シャノンは歯を剥いて威嚇した。
この人はこうやっていつも素直な気持ちを表に出せないのかもしれない。何かしら脅して主導権を取り、誤魔化そうとする。だったら、その思惑には乗らない事だ。
「はいはい。どうぞ通報でも何でもしてください。でも、そんなことをしたら、また君の方が後悔するんじゃないの?
俺が橋から落ちた瞬間、取り返しのつかない事をしたって、後悔したんでしょ?
本当は6年前の事もお礼をしたかったって言ってたけど、あの懺悔は夢か幻だったのかなあ……」
ちょっと意地悪な感じで言ってやると、シャノンは慌てた様子で「そ、そ、そ……そんな事、言ってない!」と否定をしたが、顔が赤い。
雷亜はその様子を見つめ、思わず微笑んだ。
あのシャノンが頬を赤らめ、右手で顔を隠しながら、どぎまぎしているのだ。クールビューティーが、突然こんな態度を取ってきたら可愛いとしか言いようがない。
「な、なに笑ってんだ!気持ちの悪い奴っ」
雷亜の態度が気に入らなかったのか、シャノンは顔色を変え、目力の強い双眸で雷亜を睨み付けてきた。
雷亜は慌てた。この様子ではまた昨日と同じ事になってしまう。流石にそれはもう勘弁だった。
「ご、ごめん……」
謝るとシャノンも肩の力を抜いてくれた。
──良かった。
「お前はこの家にどうやって来たんだ?何故、俺の家を知っている?」
シャノンはバスタブから出て、着ていたシャツを脱ぎ始めた。
「ジョージから教えてもらったんだ」
「……は?!あいつが!?──嘘を付くなよ。あいつがお前なんかに俺の家を教えるとは思えねえ」
「でも、教えてくれたよ」
シャノンは振り返って、変な物でも見るように雷亜を見つめ、首を傾げた。
「お前──、あいつに何をした?」
シャツを脱ぎ捨てたシャノンが見事な体躯で雷亜に近付いてくる。
雷亜は身を固くした。均整の取れた優美な筋肉と白い肌が眩しくて、すっかりその場に居着いてしまった。
「お、俺は……何も……。教えてくれとお願いしただけだよ」
声がみっともなく上ずるのを感じた。なにせ、シャノンの顔がキスをするように、雷亜の目と鼻の先にやってきたのだ。この壮絶な美貌を前に、平静でいられるはずがない。
「お前、格闘技やってるだろ?それも半端なく強え……ジョージを倒したのか?」
「そ、そこまでのことはしてないよ。ただ、ちょっとタイミングよく腕を取れたから、ぎゅっと絞っただけ……本当にタイミング良く上手くいっただけだよ」
そう言うと、シャノンの口許がふっと弛み、笑いの形を作った。
「そのタイミングを捕らえるってのが、普通は難しいんだよ。俺を正面から抜いた時も正直、驚いた。──俺を抜いた奴なんて、お前が初めてだ。──ただで許されると思うなよ」
囁くようなシャノンの吐息が鼻先にかかり、雷亜は身震いした。
「そ、それは……どういうこと?写真を消せば許してくれる?」
問い返すと、シャノンは額を雷亜にくっつけてきた。暗闇で輝く肉食獣の瞳を間近で見つめてしまい、雷亜は硬直した。
そして、雷亜の服のボタン手をかけ、一つ一つ、ゆっくりと外していく。
雷亜は動けず棒立ちのまま、息を飲んだ。
「もうその程度じゃ俺の気が済まねえなあ……」
最後のボタンを外すとシャノンの手が服の中に滑り込んで、雷亜の肌に触れた。
雷亜は慌てて身を引いた。
「な、何をするつもり?」
シャノンは肩を竦めた。
「ついでだから、一緒にシャワーでも浴びようとしただけだよ。何をすると思ったんだ?」
と、艶やかな微笑みを見せてくれたが、どこか意地悪だ。
「お、俺はいいよ。君の後でお借りします」
ペコリと頭を下げて、バスルームから出ようとしたら、突然腕を引かれ、後ろ抱きに抱きしめられた。
「駄目だ!俺がシャワーを浴びている間に逃げられたら敵わない。だから、お前も一緒だ」
シャノンはシャワーのコックを動かし、二人揃って頭からお湯を被った。
「うわっ!」
しかも、まだ冷たい。
雷亜は身を縮こませて暴れた。
「は?!!!──何で持ってないんだ!」
とシャノンは怒鳴ったが、元はといえば、あの追いかけっこのせいで、朝がバタバタになり、うっかり充電したまま家を飛び出してしまったのだ。
それをこの人にだけは咎められたくない。
スマホを忘れて悔しい思いをしているのはこっちの方だ!と怒鳴り返してやりたかったが我慢した。今のシャノンにそんな態度を取ったら火に油を注ぐようなものだろう。
「そんなことより、体調はどうなの?──薬。絶対、ODしてたでしょ」
そう言うと、シャノンは退き、顔をしかめた。
「お、お前には関係ねぇだろっ!──ってか、なんでお前がここに居る?!どっから入ってきた?!不法侵入で通報するぞ!」
シャノンは歯を剥いて威嚇した。
この人はこうやっていつも素直な気持ちを表に出せないのかもしれない。何かしら脅して主導権を取り、誤魔化そうとする。だったら、その思惑には乗らない事だ。
「はいはい。どうぞ通報でも何でもしてください。でも、そんなことをしたら、また君の方が後悔するんじゃないの?
俺が橋から落ちた瞬間、取り返しのつかない事をしたって、後悔したんでしょ?
本当は6年前の事もお礼をしたかったって言ってたけど、あの懺悔は夢か幻だったのかなあ……」
ちょっと意地悪な感じで言ってやると、シャノンは慌てた様子で「そ、そ、そ……そんな事、言ってない!」と否定をしたが、顔が赤い。
雷亜はその様子を見つめ、思わず微笑んだ。
あのシャノンが頬を赤らめ、右手で顔を隠しながら、どぎまぎしているのだ。クールビューティーが、突然こんな態度を取ってきたら可愛いとしか言いようがない。
「な、なに笑ってんだ!気持ちの悪い奴っ」
雷亜の態度が気に入らなかったのか、シャノンは顔色を変え、目力の強い双眸で雷亜を睨み付けてきた。
雷亜は慌てた。この様子ではまた昨日と同じ事になってしまう。流石にそれはもう勘弁だった。
「ご、ごめん……」
謝るとシャノンも肩の力を抜いてくれた。
──良かった。
「お前はこの家にどうやって来たんだ?何故、俺の家を知っている?」
シャノンはバスタブから出て、着ていたシャツを脱ぎ始めた。
「ジョージから教えてもらったんだ」
「……は?!あいつが!?──嘘を付くなよ。あいつがお前なんかに俺の家を教えるとは思えねえ」
「でも、教えてくれたよ」
シャノンは振り返って、変な物でも見るように雷亜を見つめ、首を傾げた。
「お前──、あいつに何をした?」
シャツを脱ぎ捨てたシャノンが見事な体躯で雷亜に近付いてくる。
雷亜は身を固くした。均整の取れた優美な筋肉と白い肌が眩しくて、すっかりその場に居着いてしまった。
「お、俺は……何も……。教えてくれとお願いしただけだよ」
声がみっともなく上ずるのを感じた。なにせ、シャノンの顔がキスをするように、雷亜の目と鼻の先にやってきたのだ。この壮絶な美貌を前に、平静でいられるはずがない。
「お前、格闘技やってるだろ?それも半端なく強え……ジョージを倒したのか?」
「そ、そこまでのことはしてないよ。ただ、ちょっとタイミングよく腕を取れたから、ぎゅっと絞っただけ……本当にタイミング良く上手くいっただけだよ」
そう言うと、シャノンの口許がふっと弛み、笑いの形を作った。
「そのタイミングを捕らえるってのが、普通は難しいんだよ。俺を正面から抜いた時も正直、驚いた。──俺を抜いた奴なんて、お前が初めてだ。──ただで許されると思うなよ」
囁くようなシャノンの吐息が鼻先にかかり、雷亜は身震いした。
「そ、それは……どういうこと?写真を消せば許してくれる?」
問い返すと、シャノンは額を雷亜にくっつけてきた。暗闇で輝く肉食獣の瞳を間近で見つめてしまい、雷亜は硬直した。
そして、雷亜の服のボタン手をかけ、一つ一つ、ゆっくりと外していく。
雷亜は動けず棒立ちのまま、息を飲んだ。
「もうその程度じゃ俺の気が済まねえなあ……」
最後のボタンを外すとシャノンの手が服の中に滑り込んで、雷亜の肌に触れた。
雷亜は慌てて身を引いた。
「な、何をするつもり?」
シャノンは肩を竦めた。
「ついでだから、一緒にシャワーでも浴びようとしただけだよ。何をすると思ったんだ?」
と、艶やかな微笑みを見せてくれたが、どこか意地悪だ。
「お、俺はいいよ。君の後でお借りします」
ペコリと頭を下げて、バスルームから出ようとしたら、突然腕を引かれ、後ろ抱きに抱きしめられた。
「駄目だ!俺がシャワーを浴びている間に逃げられたら敵わない。だから、お前も一緒だ」
シャノンはシャワーのコックを動かし、二人揃って頭からお湯を被った。
「うわっ!」
しかも、まだ冷たい。
雷亜は身を縮こませて暴れた。
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