Broken Arrows

蓮華空

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方舟

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 シャノンの長い前髪が雷亜の頬にはらりと触れた。

 何をされているのか判った瞬間、顎の力が抜け、唇を開けた。すると、柔らかく濡れた舌が侵入してきて、雷亜の舌と優しく絡んだ。

「……んっ……ふっ……」

 その瞬間、脳天から突き上げるような衝撃が来たかと思うと、急に腰から力が抜け、うっとりとした甘い感覚に、思わず声を洩らした。

「あっ……ふ、んん……」

 喘ぐ度にシャノンは雷亜をきつく抱きしめ、何度も唇を重ねては愛撫した。絡まる舌の動きに脳内はすっかり溶かされ、意識もすっかり別の次元へと飛ばされていた。

 どれくらい唇を重ねていただろう。
 気が付けば、場所も時間も分からないような、白くてふわふわした不思議な感覚で満たされていた。

 頭がボーとしながら、シャノンの顔を見上げると、ただ、ただ美しい顔がそこにあった。

 間近で見る紫の瞳からはラベンダーのような癒しと優しさが満ちていた。

「キスをするんだったら、これくらいやってもらわなきゃな……」

 そう言って、また唇が重なった。今度は柔く真綿に触れるような仄かなキスで、それを何度も繰り返えされると胸がぽうっとぬくみを増した。途端に涙が溢れる。

「い、嫌じゃないの?」

「何が?」

 シャノンは少しだけ顔を離した。

「俺の顔……汚いでしょ?」

「ああ、そうだな」

 即座に肯定され、胸の奥が軋んで痛い──。

「じゃあ……やっぱ、嫌でしょ?」

「誰がそんな事、言った?」

「みんなそういうし……」

 雷亜は声を落とした。

「ふーん……。でも、俺だけは違うだろ?」

 意味が呑み込めず、雷亜はシャノンの顔を見上げた。

 シャノンは雷亜の前髪を優しくかき上げると、傷付いた頬にそっと口付けをした。

「他の奴らはこの傷がどうして付いたのか知らない。だけど、俺は違う。俺だけはこの傷を愛する事が出来る──そう思わないか?」

 ふんわりとした柔らかな唇が何度も傷痕に触れたせいで、雷亜の胸中では抑えきれない想いが一気に募った。ついには泣き出して、シャノンの首根っこにすがり付く。

「──シャノン!シャノン!!俺は……俺は……君が大好きだ!初めて君を目にした時から、俺は君が好きなんだっ!!」

 雷亜は声を出して泣きじゃくった。思えばずっと自分は涙を抑えて生きてきた気がする。

 
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