Broken Arrows

蓮華空

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劣等感って……

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「はあ?!どういうことだ?それは……」

 皆がざわついている間に、漸く戻って来た雷亜は皆の視線を受けて戸惑った。

「ど、どうしたの?みんな……」

 雷亜の心臓は鼓動を早め、手に汗が滲んでくる。

(──やっぱり、俺なんかがタッチダウンを決めたから、みんな気分が悪いんだ……)

 首を小さく引っ込ませ、出来るだけ体を縮込ませた。

「──なあ、雷亜。お前、俺と追いかけっこをやって俺を振り切ったことあるよな」

 シャノンに意外な事を言われた雷亜は大層驚いた。

 こんなへっぽこな自分を捕まえる事が出来なかったなんて、シャノンからしたらプライドが許されない事なのではないか?

「──い、いや……べ、別にあれは……振り切った訳じゃなくて!落ちただけじゃん!!」

「落ちた?」

 宇辰とジョージが不思議そうに聞き返すと、達也が「──あ!」と一声漏らした。

「そういやあの日!橋桁から落ちてトラックの荷台に居るって言ってたな!」

 思わず口にしてしまった達也が慌てて口を押さえた。顔には──しまった!と書いてある。

 尽かさずシャノンの腕が伸びて、達也の肩を抱くと、

「どうしてお前がそんなことを知っている?」

 と、問うた。

「い、いや……あの、それは……」

 戸惑う達也の顎をシャノンが無理矢理上に向かせ、顔を近付けた。

 その美貌を間近にして、耐えられる人間はそういない。達也は顔を赤らめながら身を捩り、逃げようとする。が、シャノンの腕は外れない。

 ──あの、あの、と、目を白黒させた達也は遂に観念して、

「じ、実はいうと俺と雷亜は従兄弟なんだよ!だから、あの日、雷亜からどうしたらいいのかって電話がきたんだ!」

「「はあ?!──従兄弟?!」」

 これには宇辰とジョージも驚いたようだ。

 シャノンも驚いた顔をしている。

「従兄弟の割にはおめえ、雷亜によそよそしいじゃねえか!」

 宇辰が最もな問いを投げ掛ける。

「そ、それは……雷亜が、自分は転校する度に苛められるから、またそうなる可能性もあるから、俺を巻き込まないために、自分には近寄るな、って言ってきたんだよ。だから、仕方なく……」

 息をするように嘘を吐く達也の顔を、驚きの目で雷亜は見つめた。

「本当か?雷亜?」

 シャノンに問われて、──えっと、その……と、戸惑っていると、達也の恐ろしい視線が雷亜を射る。だから思わず「うん」と答えてしまった。

 シャノンはガッカリしたように大きな溜め息を付くと、達也の身を離し、雷亜に近付いてきた。

「おい、……お前、いい加減にしろよ」

「──え?」

 少し怒り気味のシャノンに、訳が分からず雷亜が不安な面持ちでいると、シャノンは堪り兼ねたように怒鳴った。

「何をそんなにビクビクしてるんだ!いいか、お前は強いんだぞ!!
 強いんだから、もっと堂々としてろよ!他人の勝手なイメージに自分を合わせるな!お前は結局、いつもそうやって自分を出すことに怯えてるんだ。あたかも劣等感がそうさせているように見せてな!!」

「──そ?!……そんな……」

 ──違う、と雷亜は反論したかったが、何故だが体が動かなかった。

 ──劣等感の塊。

 雷亜とはそういう人間だ。

 それなのに──

「そうさせているように見せているって……どういうこと?」

 下を向いたまま、堪らず問いかけてみた。すると、シャノンは、

「やっぱり、自分じゃそんな自覚ないよな」

 たった一人で水底に沈んで行きそうなシャノンの声に、雷亜は思わず顔を上げた。

 そこには憂える紫の瞳が待っていた。

 不意に雷亜の胸は痛く締め付けられた。

(何で?何でシャノンがそんなに悲しんでいるの?)

 揺れる紫の瞳はやがて意を決したように、鋭い視線に変わった。美しい唇が静かに開く。

「結局、お前は俺たちを馬鹿にしているんだ!」

 その瞬間、谷底に落とされたような感覚がした。




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