Broken Arrows

蓮華空

文字の大きさ
90 / 107
達也の執着

89

しおりを挟む
 雷亜は今までにない幸福感でいっぱいになっていた。

 これまで雷亜には、自分を必要としてくれる友達なんていなかった。

 一緒に何かをやろうなんて、言ってくれる友達なんて本当に一人もいなかったのだ。

 でも、今はこうして、宇辰が、ルーカスが、シャノンが、自分を必要としてくれている。

 それがとても嬉しかった。

 それもこれも、みんなシャノンがくれたものだ。

 勝負の機会を与え、真剣に向き合うことがどれ程大事なのか、雷亜はシャノンから教えられた気がする。

「シャノン、本当に有り難うね」

 雷亜は満面の笑みで答えた。

 すると、シャノンは小さく「あ、ああ」と、だけ答えて、何故だが妙に照れている。

 そんなシャノンを見るのがすごく新鮮で、雷亜の微笑みは更に深くなった。

「おい、こら、ちょっと! 何でそこ、二人だけで見つめ合ってるの?! 怪しいぞ!!」

 と、ルーカスが指摘すると、シャノンが「怪しいって、何がだ?!」と威嚇し始めた。

 雷亜もその言葉に少々慌てる。昨夜のベッドでの事を思い出し、急いで頭の中からそれを閉め出す。

「と、取り敢えず、早く授業に行かなきゃ! 俺、先に行ってるね!」

 と、早々にこの場を立ち去ろうとしたら、誰かに勢いよくぶつかってしまい、相手を転ばしてしまった。

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?!」

 慌ててその人に手を差し伸べようとしたが、相手を確認するなり、雷亜は手を止めた。

 達也が鋭い視線でこちらを睨んでいる。

「──ったく、前見て歩けよ!危ねぇな……」

 舌打ちをし、服をはたきながら達也は立ち上がった。

「ご、ごめん……」

「別にいいよ。気にするな」

 あっさり言ってくれたが、寸前、雷亜の肩を引き寄せ、耳元で雷亜にだけ聞こえるよう低い声で囁いた。

『いい気になっていられるのも今のうちだぞ……』

 背筋にぞくりとするような殺気を感じ、雷亜は身体を強張らせた。

 が、次の瞬間、ぽん!と背中を叩かれ雷亜を解放する。

「じゃあな、次はぶつからないように、ちゃんと前を見て歩けよ」

 さっきの囁きとは打って変わった陽気な声と笑顔で達也は立ち去った。

 益々加速したかのような達也の二面性。

 嫌な予感しかしない──。

(……今のうちって、どういうことだ?)

 呆然と立ち竦む雷亜に、シャノンが後ろから声をかけてきた。

「おい、授業に行くんだろ? 何をぼうっとしてるんだ?」

「あ、う、うん」

 雷亜はシャノンと並んで教室へと向かった。

 その間も達也が何を企んでいるのか、そのことばかりが頭の中をぐるぐると回っていた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

処理中です...