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達也の執着
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「お前が飲むなー!馬鹿ー!」
ジョージの叫ぶ声に気を取られ、この時、達也がニヤリと不敵に笑ったのを、気付い者は誰もいない。
「ジョージさぁ~んvvこれ、やっぱあれですよ!催淫剤ですよぉ~。身体が熱くて、むずむずしますぅ~!助けて下さぁ~い」
そう言って後輩はジョージに抱き付こうとしたが、ジョージはその手を軽くかわし、もう一人の後輩に抱き付かせた。
「よし!こいつはお前が何とかしろ!」
「えー!!嫌ッスよ!!責任取るのはジョージさんでしょ!」
「馬鹿!ここで俺が足を止めてたらこの問題の解決にはならねぇだろ!雷亜を貶める奴らを何とかしなくちゃなんねぇ!」
後輩二人が引き留める中、ジョージは強引にでも、その場を立ち去ろうとしたが、達也がそれを止めた。
「ジョージは彼らの所に居てあげなよ。雷亜の事なら俺が何とかする。さっきのドリンクを渡されたの、俺だしね。奴らの顔も覚えているし、そいつらから何とか雷亜を遠ざけて、一緒に帰るから、任せておいてよ」
「おお!そうか、確かにその方がいいよな。じゃあ、後は任せた」
達也は軽く手を上げて応じた。
「ああ、後さ、一応シャノンにも連絡してやってくれよ」
「なんで?」
「あいつも心配してたからさ、出来ればシャノンと合流した方がいいんじゃねえ?」
「あ、うん。わかった。そうする」
そう答えつつ、達也は向きを返ると、軽く舌打ちをした。
『……誰がシャノンになんぞ教えるか!』
計画通りにいかない苛立ちを抑えながら、達也はステージの裏へと待機した。
待機している間、達也の腹腔では、イライラが募っていた。
──シャノンが雷亜を心配していたって? 何だってシャノンはそんなに雷亜の事が気になるんだ?
幼い頃に雷亜に助けられたってことが、そんなにシャノンの中で大きな事になっているのか? あんな襤褸切れみたいな奴、雑巾のようにぐちゃぐちゃに汚して捨ててしまえばいいのに……。シャノンさえ生き残れば、雷亜なんかその後、どうなったって構わないだろう。それなのに、ジョージにしたってあんな奴のために何をそんなに必死に動き回ってやっているんだ?
達也は持っていたドリンクを押し潰しそうになって、それを押し留めた。
そんなことよりも、達也の計画がどこからか漏れている。やはり、品のない底辺学校に頼んだのが良くなかったか……?
そんな事を考えていると、向かい側から機嫌の悪そうなシャノンが通行人の間をすり抜け、こちらにやって来た。眼光は鋭く達也を射抜いている。
達也は恐れ抱き、退いた。
シャノンの様子がいつもとは違う。周囲には目もくれず、一点だけを睨み付け異様なオーラを放っている。
──これはまずい……。もしかしてバレたか?
達也は踵を返して逃げ出した。一先ず人並みに紛れようと、ダンスホールへと駆け込む。チビの達也なら身を低くして人並みに紛れればきっと見失う筈だ。しかし、シャノンは器用に人並みを掻き分け達也との距離を縮める。
──マジかよ!どんどんと近づいてる……!!
達也に焦りが出る。こうなると周りの奴がかえって邪魔だ。前方にトム・サラヤンの禿頭が見えてきた。一先ず奴のところまで行って、奴をシャノンにけしかける事が出来たら……。
達也はスピードを上げ、トム・サラヤンの元に着くと、彼の腕を掴んだ。
トム・サラヤンの濁った目が達也を見る。
「何だ、お前は?」
シャノンとは違った異様な雰囲気に、達也は息を飲む。こいつは本当に高校生か?図体もそうだが、不健康そうな皮膚の弛みや目の濁りは異常だ。これは既にかなりの麻薬中毒者なんじゃないのか?
「あ、あんたの楽しみを阻害しようとしている奴がこっちに来る」
「どこにだ?」
低く皺がわれた声が達也の耳に響いた。
「あっち。あのプラチナブロンドの奴」
指を指すと、トム・サラヤンは目を細めてシャノンを見つめた。
「シャノン・ホワイトか……。丁度いい。あいつの生っ白い顔が昔から気に入らなかったんだ」
トム・サラヤンは達也にも目もくれず、シャノンの方へと向かった。
「おい、トム。マジかよ!シャノンは止めとけ!あいつに怪我なんかさせたら、俺達に市民権はないぞ!」
トム・サラヤンの取り巻きの一人が待ったをかけた。
「関係ねぇーよ。邪魔する奴は誰だろうと許せねぇ」
トム・サラヤンはシャノンの前に立ちはだかった。
スキンヘッドの長身とプラチナブロンドの美丈夫が火花を散らす。
「どけっ!!」
シャノンの怒号が辺りに響き渡った。
「ふん!退くのはてめえだ!!」
トム・サラヤンの拳が空を切る。だが、シャノンは寸前で軽くかわし、勢い余ったトム・サラヤンが、近くに居た関係ない男を張り倒した。すると、側にいた女がキャー!と悲鳴を上げる。騒ぎの隙に、シャノンは達也の後を追う。
「待てこら!!無視すんな!!」
トム・サラヤンの巨体が慌ててシャノンを追う。
ジョージの叫ぶ声に気を取られ、この時、達也がニヤリと不敵に笑ったのを、気付い者は誰もいない。
「ジョージさぁ~んvvこれ、やっぱあれですよ!催淫剤ですよぉ~。身体が熱くて、むずむずしますぅ~!助けて下さぁ~い」
そう言って後輩はジョージに抱き付こうとしたが、ジョージはその手を軽くかわし、もう一人の後輩に抱き付かせた。
「よし!こいつはお前が何とかしろ!」
「えー!!嫌ッスよ!!責任取るのはジョージさんでしょ!」
「馬鹿!ここで俺が足を止めてたらこの問題の解決にはならねぇだろ!雷亜を貶める奴らを何とかしなくちゃなんねぇ!」
後輩二人が引き留める中、ジョージは強引にでも、その場を立ち去ろうとしたが、達也がそれを止めた。
「ジョージは彼らの所に居てあげなよ。雷亜の事なら俺が何とかする。さっきのドリンクを渡されたの、俺だしね。奴らの顔も覚えているし、そいつらから何とか雷亜を遠ざけて、一緒に帰るから、任せておいてよ」
「おお!そうか、確かにその方がいいよな。じゃあ、後は任せた」
達也は軽く手を上げて応じた。
「ああ、後さ、一応シャノンにも連絡してやってくれよ」
「なんで?」
「あいつも心配してたからさ、出来ればシャノンと合流した方がいいんじゃねえ?」
「あ、うん。わかった。そうする」
そう答えつつ、達也は向きを返ると、軽く舌打ちをした。
『……誰がシャノンになんぞ教えるか!』
計画通りにいかない苛立ちを抑えながら、達也はステージの裏へと待機した。
待機している間、達也の腹腔では、イライラが募っていた。
──シャノンが雷亜を心配していたって? 何だってシャノンはそんなに雷亜の事が気になるんだ?
幼い頃に雷亜に助けられたってことが、そんなにシャノンの中で大きな事になっているのか? あんな襤褸切れみたいな奴、雑巾のようにぐちゃぐちゃに汚して捨ててしまえばいいのに……。シャノンさえ生き残れば、雷亜なんかその後、どうなったって構わないだろう。それなのに、ジョージにしたってあんな奴のために何をそんなに必死に動き回ってやっているんだ?
達也は持っていたドリンクを押し潰しそうになって、それを押し留めた。
そんなことよりも、達也の計画がどこからか漏れている。やはり、品のない底辺学校に頼んだのが良くなかったか……?
そんな事を考えていると、向かい側から機嫌の悪そうなシャノンが通行人の間をすり抜け、こちらにやって来た。眼光は鋭く達也を射抜いている。
達也は恐れ抱き、退いた。
シャノンの様子がいつもとは違う。周囲には目もくれず、一点だけを睨み付け異様なオーラを放っている。
──これはまずい……。もしかしてバレたか?
達也は踵を返して逃げ出した。一先ず人並みに紛れようと、ダンスホールへと駆け込む。チビの達也なら身を低くして人並みに紛れればきっと見失う筈だ。しかし、シャノンは器用に人並みを掻き分け達也との距離を縮める。
──マジかよ!どんどんと近づいてる……!!
達也に焦りが出る。こうなると周りの奴がかえって邪魔だ。前方にトム・サラヤンの禿頭が見えてきた。一先ず奴のところまで行って、奴をシャノンにけしかける事が出来たら……。
達也はスピードを上げ、トム・サラヤンの元に着くと、彼の腕を掴んだ。
トム・サラヤンの濁った目が達也を見る。
「何だ、お前は?」
シャノンとは違った異様な雰囲気に、達也は息を飲む。こいつは本当に高校生か?図体もそうだが、不健康そうな皮膚の弛みや目の濁りは異常だ。これは既にかなりの麻薬中毒者なんじゃないのか?
「あ、あんたの楽しみを阻害しようとしている奴がこっちに来る」
「どこにだ?」
低く皺がわれた声が達也の耳に響いた。
「あっち。あのプラチナブロンドの奴」
指を指すと、トム・サラヤンは目を細めてシャノンを見つめた。
「シャノン・ホワイトか……。丁度いい。あいつの生っ白い顔が昔から気に入らなかったんだ」
トム・サラヤンは達也にも目もくれず、シャノンの方へと向かった。
「おい、トム。マジかよ!シャノンは止めとけ!あいつに怪我なんかさせたら、俺達に市民権はないぞ!」
トム・サラヤンの取り巻きの一人が待ったをかけた。
「関係ねぇーよ。邪魔する奴は誰だろうと許せねぇ」
トム・サラヤンはシャノンの前に立ちはだかった。
スキンヘッドの長身とプラチナブロンドの美丈夫が火花を散らす。
「どけっ!!」
シャノンの怒号が辺りに響き渡った。
「ふん!退くのはてめえだ!!」
トム・サラヤンの拳が空を切る。だが、シャノンは寸前で軽くかわし、勢い余ったトム・サラヤンが、近くに居た関係ない男を張り倒した。すると、側にいた女がキャー!と悲鳴を上げる。騒ぎの隙に、シャノンは達也の後を追う。
「待てこら!!無視すんな!!」
トム・サラヤンの巨体が慌ててシャノンを追う。
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