幸せごはんの作り方

コッシー

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1話

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半年前。私の姉とその旦那が、交通事故で亡くなってしまった。

残されたのは、その時幼稚園に行っていた姉の娘だけ。

私達の両親ももう既にいなかった為、その娘を引き取れるのは私しかいなかった。

「……名前は?」

「……しずく」

出会った時の雫は、肩まで伸びた髪をボサボサにして、目を真っ赤に腫らしていた。
きっと、ずっと泣いていたのだろう。髪だって、いつもは姉が結んであげていたのだろうが。今は髪を結んでくれる人は誰もいない。

「雫ちゃんか。君は嫌かもしれないが、これから君はおじさんと住むことになる。おじさんには子供がいないから、君とどう接したらいいかあまり分からない。だからお互い協力していこう」

「……うん」

協力とはいったものの、基本私は朝から夜まで仕事の為、雫と二人で居る時は少ない。
精々一緒に居る時間と言えば、買ってきた弁当を食べる時くらいだろう。ずっと独り暮らしだった私は、飯もろくに作れない為。いつも弁当を買って食べている。

まだ幼い子供には、こんな生活辛いはずだ。
それなのに、雫は我が儘一つ言わなかった。


だからきっと、私は雫に甘えていたのだ。

これでいいのだと、勝手に思い込んでしまっていたのだ。









それから三か月が経ったある日。

あれは大量の仕事量に追われ、残業していた時の事だった。

天野あまのさん、こっちは終わりました!」

「そうか。なら帰っていいぞ」

「天野さん……後、この書類に」

「置いといていい」

「あ、分かりました。じゃあ私達はお先に失礼します!」

「あぁ。お疲れ様」

部下達を帰らせ、私は一人で残った仕事を片付ける。残業なんて日常茶飯事だった私にとって、こんなのは特別辛くもない事だった。
それに、なるべく部下達には負担をかけたくない。

だがそのかわり。雫との時間はどんどん削られていく一方だ。

「だが、だからと言って仕事をおろそかにするわけには……」

「天野さん。それ手伝いますよ」

突然私の隣に立って、数枚の書類を手に取った高身長の男。

誰にでも向けるその爽やかな微笑みは、この会社の女性陣を虜にさせていると噂されていたが……成程。確かに美形だ。

水島みずしま君ではないか。どうした早く帰らないか」

「いえ!天野さんが一人で頑張っているのに、俺だけ帰るなんて出来ませんよ!」

「しかし……」

「それに。二人でやったほうが早いですから!」

「……はぁ。分かった。なら頼むぞ」

「はい!」

水島彰みずしまあきら君は私の部下で、仕事もプライベートも完璧な男だ。
歳は確か二十五……だったか?私よりも七つも下だが、なんでもこなせる所はとても見習いたい所だ。

「悪かったな。遅くまで残らせて」

「いえいえ!あ、良かったら俺の家に来ませんか?夜ご飯作りますよ?」

「え?あ、いや。流石にそれは」

おかしいな。私は部下達には嫌われていると思っていたのだが?よく無愛想だと言われているようだし。

「気にしないでください!俺が誘いたくて誘ってるんで!」

キラキラした目が、私には少し眩しく見える。これだけ親切な部下の頼みを断るのは少々心苦しいが。ふと、雫が一人で待っている姿が頭をよぎった。

「……申し訳ないが。家で姉の娘が待っているんだ」

「え?」

状況を整理しているのか、水島君の表情がそのまま固まってしまった。

そういえば、こんなプライベートな事を誰かに話すのは初めてかもしれない。

「えっと……だな。私の姉とその旦那が事故で亡くなってしまってな。引き取り手がいなかったので、私が姉の娘を育てているのだ」

「えっと。ということは、その娘さんは今家に?」

「あぁ」

「因みに、おいくつですか?」

「確か、五歳だな」

その瞬間。私は腕を強く握られると、そのまま無理矢理立ち上がらされた。

近くにあった水島君の顔は、今まで見たことないくらい怖い顔をしている。きっとこんな表情誰も見たことが無いだろう。こんなの直視したら、多分息が止まってしまう。

「何故それを早く言わないんですか!!」

「ぁ、いや……」

「いいから、今すぐ帰りますよ!!」

水島君は掴んだ腕を離さないまま、私を引っ張り。会社を出てしまった。

「天野さんの家まで案内してください」

「あ、しかし。その前に弁当を……」

「弁当!?いつも弁当なんですか!?」

攻められるたび、後悔と罪悪感が募っていく。

「その。わ、たしは、作れなくて」

「では、俺が作ります」

「え?」

「夕食は、俺が作ります」




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