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1章 〜我ら初心者冒険者〜
7話
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「地球に帰りたくないって、どういうことだ」
宮野は鋭い目つきで水無月に尋ねる。焚き火からは火の粉が舞い、水無月の表情の影をより暗く映す。
「ごめん……変なこと言っちゃったよね」
「ううん。構わず話して」
羽美は後輩である水無月と面識はほとんどなかった。それに、パパ活をしているという噂まであったので、私的に興味を持っていた。
「私さ……ううん。やっぱなんでもない。ごめんね」
そして羽美は何事もなかったかのように寝袋に入る。
「聞かせてくr……」
宮野の言葉を、羽美が制止する。
「本人がその気になるまで待とう」
納得したのか、宮野は身を引いて眠りにつく。浦星も悲しそうな表情で水無月を見ながら、眠りについた。
羽美も睡魔に身を任せ、明日へと備えた。
翌日の6時頃、浦星は目を覚ます。
「あれ、水無月さんがいない」
浦星は眼鏡をかけて辺りを捜索し始める。朝日が木々の隙間を縫って、森の空き地を照らす。綺麗な場所だな、と思った浦星は空き地へ歩いていく。
そこで、浦星は目を奪われるような景色を見る。
そこにはバレェを踊る水無月がいた。野生的な衣装にも関わらず、踊りを舞う水無月は湖の周りを優雅に飛ぶ白鳥のようだと浦星は思った。
曲もないのに、浦星がステップを踏むたび音が鳴っているような感覚がそこにはあった。
浦星が5分ほど見惚れていると、水無月は彼女の存在に気づく。
「あ……」
浦星は逃げようとする。
「ま、待って!」
水無月はとんでもない速さで浦星に追いつく。
「ねえ、今の見てたんだよね?」
「はい……」
浦星は水無月から目を逸らして返事をする。
「なんで、水無月さんは地球に戻りたくないんですか」
相変わらず目を逸らしながらも、浦星は尋ねる。
「私さ、不幸自慢じゃないけど学歴に厳しい家に生まれたの」
なぜか真実を話してくれそうになった水無月に、浦星は驚いて顔をあげる。
「それで、親は私のことなんてどうでもよかったの。口を開けば『勉強をしろ』って言うばかり。誕生日を忘れるし、年末に一緒に居たことはない。最初は勉強も頑張ったけど、だんだん嫌になって、それで不良になることで親のことを否定したかった」
浦星は自然と両手を握りしめて聞いていた。
「そこからパパ活とか、そう言うのに手を出したの。くだらないでしょ? 大人しく勉強していればいいのに、私ってほんっと馬鹿みたい。だから知力も判断力も低いんだろうね」
自虐的な笑みを浮かべた水無月はその場を離れる。浦星は離れいく水無月の手を掴もうとしたが、残念ながら触れることはできなかった。
「水無月さん……」
浦星は去り行く背中を見つめていた。
およそ2時間後、浦星やら水無月のことも知らずに、羽美と宮野は目覚める。2人ともとっ散らかっている寝癖を直しながら、朝食の準備を始める。
「ふぁー。あんま気持ちよく寝れなかった。浦星はどう?」
羽美は浦星に尋ねる。だが、浦星の表情が明らかに曇っているのに気づく。
「おや、ホームシック?」
浦星は無理に微笑んで首を横に振る。
「ううん……気にしないで」
「んー。そっか、分かった」
朝食では、宮野の寝言がうるさいという話題で盛り上がり、好調のスタートを決める。
食器、その他の道具を片付けて4人は出発する。相変わらずグリーンロッドの森は静寂で、形容し難い恐怖感を醸し出している。
「わーれらー初心者ぼーけんしゃー♪」
突然、水無月が歌い出すので羽美は肩をビクッと震わせる。
「な、なに?」
「歌」
「うん。わかるけどなんで今?」
すると水無月は謎のドヤ顔をする。
「気分を紛らわせるため。ずっと静かだと嫌だもん」
どうやら静かなのが嫌なのは水無月だけじゃないらしく、歌は許可されることになる。
そして水無月のカラオケコンテストが始まる。羽美が知っている曲は全くなく日本語でもない。K-pop というジャンルだ。
ボカロしか聞かない水無月は、あまりにも違う音楽性に耳を塞ぎたくなっていた。が、宮野も案外K-pop を知っているのか、水無月の隣で口ずさむ節が度々あった。
「浦星はどんなジャンルの曲聴くの?」
羽美は浦星の隣に行って尋ねる。
「あ~あんまり人に言いたくなくて……」
「いいじゃん。言いなよ」
数秒間、浦星は言うか迷っていたがついに口を開く。
「あの、デスメタルです。あ、普通の洋楽とかも聞きますよ」
羽美は目が点になる。
「ま、まじ?」
「はい……やっぱ変ですよね」
「いやいや! 変じゃない! ただイメージとまったく違うだけだから」
曲の好みについての会話を長々として、一行はより暗くなった地帯へ足を踏み入れる。景色が変わったせいか、4人のムードも一変する。
「まだ朝なのに、こんなに暗いなんて」
羽美は上を見上げる。巨大な木々は深緑色の葉を広げ、降り注ぐ陽光を完全に遮断している。
「皆んな、心を切り替えよう。知識と憶測だけで話すけど、ここはおそらく〈影の森〉って言うバイオーム。このジメジメした湿気がなによりの証拠」
「危険な魔物が多いのか?」
宮野の問いに対して、羽美は頷いた。
「下手したら死ぬから、慎重に行こう。なにかあったらすぐ言うこと」
「「うん」」、と3人は口を揃える。
羽美の喝が効いたのか、3人は辺りを逐一確認しながら歩いていく。
およそ1時間、ぬかるんだ地面を歩き続け、隊列の前にいる宮野は、思わず叫びたくなるほどのものを視界にとらえる。
「なに……あれ……」
宮野は足を震わせ、小声で羽美に尋ねる。羽美は宮野が指し示す方を向いた。
「あれは……」
宮野は鋭い目つきで水無月に尋ねる。焚き火からは火の粉が舞い、水無月の表情の影をより暗く映す。
「ごめん……変なこと言っちゃったよね」
「ううん。構わず話して」
羽美は後輩である水無月と面識はほとんどなかった。それに、パパ活をしているという噂まであったので、私的に興味を持っていた。
「私さ……ううん。やっぱなんでもない。ごめんね」
そして羽美は何事もなかったかのように寝袋に入る。
「聞かせてくr……」
宮野の言葉を、羽美が制止する。
「本人がその気になるまで待とう」
納得したのか、宮野は身を引いて眠りにつく。浦星も悲しそうな表情で水無月を見ながら、眠りについた。
羽美も睡魔に身を任せ、明日へと備えた。
翌日の6時頃、浦星は目を覚ます。
「あれ、水無月さんがいない」
浦星は眼鏡をかけて辺りを捜索し始める。朝日が木々の隙間を縫って、森の空き地を照らす。綺麗な場所だな、と思った浦星は空き地へ歩いていく。
そこで、浦星は目を奪われるような景色を見る。
そこにはバレェを踊る水無月がいた。野生的な衣装にも関わらず、踊りを舞う水無月は湖の周りを優雅に飛ぶ白鳥のようだと浦星は思った。
曲もないのに、浦星がステップを踏むたび音が鳴っているような感覚がそこにはあった。
浦星が5分ほど見惚れていると、水無月は彼女の存在に気づく。
「あ……」
浦星は逃げようとする。
「ま、待って!」
水無月はとんでもない速さで浦星に追いつく。
「ねえ、今の見てたんだよね?」
「はい……」
浦星は水無月から目を逸らして返事をする。
「なんで、水無月さんは地球に戻りたくないんですか」
相変わらず目を逸らしながらも、浦星は尋ねる。
「私さ、不幸自慢じゃないけど学歴に厳しい家に生まれたの」
なぜか真実を話してくれそうになった水無月に、浦星は驚いて顔をあげる。
「それで、親は私のことなんてどうでもよかったの。口を開けば『勉強をしろ』って言うばかり。誕生日を忘れるし、年末に一緒に居たことはない。最初は勉強も頑張ったけど、だんだん嫌になって、それで不良になることで親のことを否定したかった」
浦星は自然と両手を握りしめて聞いていた。
「そこからパパ活とか、そう言うのに手を出したの。くだらないでしょ? 大人しく勉強していればいいのに、私ってほんっと馬鹿みたい。だから知力も判断力も低いんだろうね」
自虐的な笑みを浮かべた水無月はその場を離れる。浦星は離れいく水無月の手を掴もうとしたが、残念ながら触れることはできなかった。
「水無月さん……」
浦星は去り行く背中を見つめていた。
およそ2時間後、浦星やら水無月のことも知らずに、羽美と宮野は目覚める。2人ともとっ散らかっている寝癖を直しながら、朝食の準備を始める。
「ふぁー。あんま気持ちよく寝れなかった。浦星はどう?」
羽美は浦星に尋ねる。だが、浦星の表情が明らかに曇っているのに気づく。
「おや、ホームシック?」
浦星は無理に微笑んで首を横に振る。
「ううん……気にしないで」
「んー。そっか、分かった」
朝食では、宮野の寝言がうるさいという話題で盛り上がり、好調のスタートを決める。
食器、その他の道具を片付けて4人は出発する。相変わらずグリーンロッドの森は静寂で、形容し難い恐怖感を醸し出している。
「わーれらー初心者ぼーけんしゃー♪」
突然、水無月が歌い出すので羽美は肩をビクッと震わせる。
「な、なに?」
「歌」
「うん。わかるけどなんで今?」
すると水無月は謎のドヤ顔をする。
「気分を紛らわせるため。ずっと静かだと嫌だもん」
どうやら静かなのが嫌なのは水無月だけじゃないらしく、歌は許可されることになる。
そして水無月のカラオケコンテストが始まる。羽美が知っている曲は全くなく日本語でもない。K-pop というジャンルだ。
ボカロしか聞かない水無月は、あまりにも違う音楽性に耳を塞ぎたくなっていた。が、宮野も案外K-pop を知っているのか、水無月の隣で口ずさむ節が度々あった。
「浦星はどんなジャンルの曲聴くの?」
羽美は浦星の隣に行って尋ねる。
「あ~あんまり人に言いたくなくて……」
「いいじゃん。言いなよ」
数秒間、浦星は言うか迷っていたがついに口を開く。
「あの、デスメタルです。あ、普通の洋楽とかも聞きますよ」
羽美は目が点になる。
「ま、まじ?」
「はい……やっぱ変ですよね」
「いやいや! 変じゃない! ただイメージとまったく違うだけだから」
曲の好みについての会話を長々として、一行はより暗くなった地帯へ足を踏み入れる。景色が変わったせいか、4人のムードも一変する。
「まだ朝なのに、こんなに暗いなんて」
羽美は上を見上げる。巨大な木々は深緑色の葉を広げ、降り注ぐ陽光を完全に遮断している。
「皆んな、心を切り替えよう。知識と憶測だけで話すけど、ここはおそらく〈影の森〉って言うバイオーム。このジメジメした湿気がなによりの証拠」
「危険な魔物が多いのか?」
宮野の問いに対して、羽美は頷いた。
「下手したら死ぬから、慎重に行こう。なにかあったらすぐ言うこと」
「「うん」」、と3人は口を揃える。
羽美の喝が効いたのか、3人は辺りを逐一確認しながら歩いていく。
およそ1時間、ぬかるんだ地面を歩き続け、隊列の前にいる宮野は、思わず叫びたくなるほどのものを視界にとらえる。
「なに……あれ……」
宮野は足を震わせ、小声で羽美に尋ねる。羽美は宮野が指し示す方を向いた。
「あれは……」
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