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15話 通させない
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時を戻してガディランの元に着いたセレーネたちは、瓦礫の中でガディランを発見する。
「あっ、ガディランさん! 生きてますか!?」
フェルンは口でガディランの服を噛んで瓦礫の中きら引き抜く。ガディランの右腕はあらぬ方向に曲がっていて、返事はない。意識を失っているのだ。
「私の魔法なら……!」
セレーネはピンク色の光を纏う手でガディランの右腕と額をそっと撫でる。するとガディランは墓から飛び出てくるゾンビの如くバッと起き上がる。
「レイン! ……あぁお前らか。俺は一体……?」
セレーネとフェルンは顔を見合わせてホッとする。
「よかった、ガディランさんはバジリスクに吹き飛ばされていたのですよ」
セレーネがそう言うとガディランは記憶を思い出したのかハッとする。
「そういえばそうだ。俺はあの蛇野郎を倒さねぇと」
ガディランは立ち上がり、斧を二本持って遠くに見えるバジリスクの方へ走ろうとするが、その腕をセレーネが掴んで静止する。
「なんだよ?」
「わたし、レインさんがきっと一人で勝つって信じてます。だから私たちはあの戦場にこれ以上敵を送らないようにするべきです」
ガディランが辺りを見渡すと城壁を超えてサイクロリラやらゴブリンの群れがレインたちの元に向かっていた。
「確かにヤバいな……」
「はい。バジリスクは他の魔物を盾にして棘を発射します。そうされるともはや勝ち目はないです。だからバジリスクはレインさんと一対一でやらせて、私たちは他の魔物を倒しましょう」
ガディランは苦笑いをして「おう」と返事をする。フェルンも「ガウ!」と吠えてセレーネの脚に頭をくっつける。
「主役はレインになっちまうが、しょうがねぇ」
ガディランはそう言って近くのサイクロリラに向かって走り出す。
「あ、ガディランさん……」
セレーネはガディランの後ろ姿に語りかけるがもう遠い場所にいるので、フェルンの背中に跨ってガディランを追いかける。
「グォォ!」
サイクロリラは握り拳でガディランを殴ろうとするが、ガディランはサイドステップでかわし、斧で敵の腕を横から分断する。
「グァォ!?」
サイクロリラは失った腕を驚いた表情で見つめる。そこでフェルンが飛び出すと、フェルンは緑色に光る爪で腹部に風穴を開ける。
「まず一匹だ!」
そう言うガディランの足元にどこからか矢が飛んでくる。矢の先には紫色の液体が塗り付けられている。辺りは煙のせいで見えにくくなっている。それでも相手からはガディランたちを視認できる。
「こりゃあ視覚魔法を使ってやがる……ナイトゴブリンだな」
そうガディランは言うが敵はそれだけではない。三匹のサイクロリラがゆっくりと、地響きを鳴らしながら歩いてくる。その内の一匹からは黒色の瘴気が溢れている。
「おいおい、こりゃやばいぜ」
「私たちでナイトゴブリンを倒します。ガディランさんは三匹のサイクロリラを足止めできますか?」
ガディランは頷く。
「じゃあフェルン行くよ!」
セレーネはフェルンに跨って走り出す。フェルンは煙を突き抜けると、周りに何体ものゴブリンたちを視認する。ゴブリンたちの肌は紫色で目は赤く光り、身体からは黒の瘴気を放っていた。
「ガゥゥ!」
フェルンは近くにいるナイトゴブリンの頭に食らいついてその生首をもぎ取る。黒の瘴気に侵されている以上、その光景を見てもナイトゴブリンたちはたじろぐ様子はない。むしろ士気は高まっていた。
「グゲゲっ」
ナイトゴブリンの一番背が高い一体が手を振り下げると後ろに控えている弓兵たちが一斉に矢を放つ。
「ガルゥア!」
フェルンが一喝すると地面が隆起して次第に屋根を作り上げる。弓矢は全て防がれ、フェルンのターンが回ってくる。フェルンが遠吠えをすると地面から無数の分身を作り出す。分身は一斉にゴブリンたちに襲いかかる。
「グギャ!」
ゴブリンたちは鉄製の剣で応戦するもサイクロリラのような腕力は勿論ないのでフェルンの分身に切り刻まれていく。フェルン一体の力でゴブリンたちは崩壊させられるがその後方にはまだゴブリンたちがいた。五匹のゴブリンたちは杖を持って地面に魔法陣を描いていた。
「あれは、召喚魔法だわ!! フェルン早く!」
フェルンはダッシュして祭祀のゴブリンたちを殺そうとするがゴブリンたちは殺される前に爆発する。命を代償にして強大な魔物を生み出す生贄召喚である。
「そんな……」
魔法陣は光り始めて中から六本の腕と三つの頭を持つゴブリンが現れる。そのゴブリンの身長は普通のゴブリンとは違って人間の成人男性ほどの大きさはあった。
「#$@**&*#*……」
よく分からない言葉を話すゴブリンは六本の腕それぞれに剣を生み出す。
「フェルン……私のことは構わないから戦って」
セレーネは貧血による立ちくらみがありながらもフェルンから降りる。身軽になったフェルンは勢いよく飛び出してゴブリンに突進する。
「あっ、ガディランさん! 生きてますか!?」
フェルンは口でガディランの服を噛んで瓦礫の中きら引き抜く。ガディランの右腕はあらぬ方向に曲がっていて、返事はない。意識を失っているのだ。
「私の魔法なら……!」
セレーネはピンク色の光を纏う手でガディランの右腕と額をそっと撫でる。するとガディランは墓から飛び出てくるゾンビの如くバッと起き上がる。
「レイン! ……あぁお前らか。俺は一体……?」
セレーネとフェルンは顔を見合わせてホッとする。
「よかった、ガディランさんはバジリスクに吹き飛ばされていたのですよ」
セレーネがそう言うとガディランは記憶を思い出したのかハッとする。
「そういえばそうだ。俺はあの蛇野郎を倒さねぇと」
ガディランは立ち上がり、斧を二本持って遠くに見えるバジリスクの方へ走ろうとするが、その腕をセレーネが掴んで静止する。
「なんだよ?」
「わたし、レインさんがきっと一人で勝つって信じてます。だから私たちはあの戦場にこれ以上敵を送らないようにするべきです」
ガディランが辺りを見渡すと城壁を超えてサイクロリラやらゴブリンの群れがレインたちの元に向かっていた。
「確かにヤバいな……」
「はい。バジリスクは他の魔物を盾にして棘を発射します。そうされるともはや勝ち目はないです。だからバジリスクはレインさんと一対一でやらせて、私たちは他の魔物を倒しましょう」
ガディランは苦笑いをして「おう」と返事をする。フェルンも「ガウ!」と吠えてセレーネの脚に頭をくっつける。
「主役はレインになっちまうが、しょうがねぇ」
ガディランはそう言って近くのサイクロリラに向かって走り出す。
「あ、ガディランさん……」
セレーネはガディランの後ろ姿に語りかけるがもう遠い場所にいるので、フェルンの背中に跨ってガディランを追いかける。
「グォォ!」
サイクロリラは握り拳でガディランを殴ろうとするが、ガディランはサイドステップでかわし、斧で敵の腕を横から分断する。
「グァォ!?」
サイクロリラは失った腕を驚いた表情で見つめる。そこでフェルンが飛び出すと、フェルンは緑色に光る爪で腹部に風穴を開ける。
「まず一匹だ!」
そう言うガディランの足元にどこからか矢が飛んでくる。矢の先には紫色の液体が塗り付けられている。辺りは煙のせいで見えにくくなっている。それでも相手からはガディランたちを視認できる。
「こりゃあ視覚魔法を使ってやがる……ナイトゴブリンだな」
そうガディランは言うが敵はそれだけではない。三匹のサイクロリラがゆっくりと、地響きを鳴らしながら歩いてくる。その内の一匹からは黒色の瘴気が溢れている。
「おいおい、こりゃやばいぜ」
「私たちでナイトゴブリンを倒します。ガディランさんは三匹のサイクロリラを足止めできますか?」
ガディランは頷く。
「じゃあフェルン行くよ!」
セレーネはフェルンに跨って走り出す。フェルンは煙を突き抜けると、周りに何体ものゴブリンたちを視認する。ゴブリンたちの肌は紫色で目は赤く光り、身体からは黒の瘴気を放っていた。
「ガゥゥ!」
フェルンは近くにいるナイトゴブリンの頭に食らいついてその生首をもぎ取る。黒の瘴気に侵されている以上、その光景を見てもナイトゴブリンたちはたじろぐ様子はない。むしろ士気は高まっていた。
「グゲゲっ」
ナイトゴブリンの一番背が高い一体が手を振り下げると後ろに控えている弓兵たちが一斉に矢を放つ。
「ガルゥア!」
フェルンが一喝すると地面が隆起して次第に屋根を作り上げる。弓矢は全て防がれ、フェルンのターンが回ってくる。フェルンが遠吠えをすると地面から無数の分身を作り出す。分身は一斉にゴブリンたちに襲いかかる。
「グギャ!」
ゴブリンたちは鉄製の剣で応戦するもサイクロリラのような腕力は勿論ないのでフェルンの分身に切り刻まれていく。フェルン一体の力でゴブリンたちは崩壊させられるがその後方にはまだゴブリンたちがいた。五匹のゴブリンたちは杖を持って地面に魔法陣を描いていた。
「あれは、召喚魔法だわ!! フェルン早く!」
フェルンはダッシュして祭祀のゴブリンたちを殺そうとするがゴブリンたちは殺される前に爆発する。命を代償にして強大な魔物を生み出す生贄召喚である。
「そんな……」
魔法陣は光り始めて中から六本の腕と三つの頭を持つゴブリンが現れる。そのゴブリンの身長は普通のゴブリンとは違って人間の成人男性ほどの大きさはあった。
「#$@**&*#*……」
よく分からない言葉を話すゴブリンは六本の腕それぞれに剣を生み出す。
「フェルン……私のことは構わないから戦って」
セレーネは貧血による立ちくらみがありながらもフェルンから降りる。身軽になったフェルンは勢いよく飛び出してゴブリンに突進する。
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