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「王太子殿下、本日はお招きいただき、ありがとうございました」
王太子殿下に深々とお辞儀をし、御礼の言葉を述べる。
「マリア嬢、よく来てくれました。楽しみにしていましたよ」
王太子殿下が碧い目を細めて、ニコリと笑いかけてくれた。金髪碧眼、眉目秀麗な王太子殿下のお姿に、私は見惚れてしまう。
この方の妃に……なれるかもしれない……?
今朝のシエナとの会話が頭をよぎり、ボッと顔が赤くなる。
大変! こんな赤らめた顔、王太子殿下に見られたら恥ずかしいわ……
「どうかしましたか?」
屈託ない顔で私を覗き込む殿下に、顔がますます赤くなり、もう私の意思では止められない。
近すぎです……殿下。
「美味しいお菓子を用意したんだ。マリア嬢と一緒にお茶しようと思って」
「ありがとうございます……でも、まず国王様にご挨拶を……」
真っ赤になった顔を見られ、顔から火が出る悪循環。
「そうだね。父上もマリア嬢が来るのを楽しみにしていたよ」
「……ありがたいお言葉です」
私は王太子殿下とともに謁見の間にむかって歩き出す。王太子殿下は美しい顔を綻ばせながら「後で王宮の庭を案内しよう。薔薇が綺麗に咲いているんだ」と声を弾ませていた。私は王太子殿下の楽しそうな様子が嬉しくて思わず笑みがこぼれる。
謁見の間でしばらく待っていると国王様が入室され、にこやかな笑顔で私に言葉をかけてくださった。
「マリア嬢、よく来たね」
「勿体無いお言葉、ありがとうございます」
私が深々と頭を下げていると、そばにいたヴォルク王弟殿下が上機嫌な様子で話し始める。
「兄上、マリア嬢が兄上の為に珍しいワインを持ってきてくれましたので、1杯いかがですか?」
使用人がワインを国王様に見せ「うむ」と国王様が頷くと銀杯にワインを注ぐ。
えっ!?
私は驚き、国王様の御前ということも忘れ、そのワインを凝視した。
……夢……だと……ここで国王様がお飲みになる1杯は銀杯も変色せず、毒味係にも何事もなかった……その後、国王様は命を落とされ、ワインから毒が発見され……私は弁明の余地も無いまま罪人になってしまう。
……夢だけど……この既視感にゾクリとする。
私、ワイン持ってきていないのに。
国王様は「いただくとしよう」と銀杯を持ち、香りを楽しんだ後、口をつけようとする。私はハッと現実に戻り、慌てて声を出した。
「恐れながら、国王様。そちらのワインは私が持ってきたものではございません。私、本日はワインを持参しておりませんから……そのような得体の知れないワインは危のうございます」
国王様はピクリと眉を動かし、手を止め、銀杯を置き「下げよ」と使用人に命じた。
「マリア嬢が持参したワインではない? それは真か?」
「はい……私は持参しておりません」
頭を下げたままだったが、しっかりと出した声は謁見の間に響き渡り、小さなざわめきがおこった。
「ヴォルク」
国王様が王弟殿下の名を呼ぶと室内に緊張が漂い、皆、沈黙する。
「お主がマリア嬢持参のワインと申したな? なぜ、嘘をついた。あのワインの出どころはどこだ? 後で話を聞く。わしの部屋へ参れ」
王弟殿下がわなわな震えながら、私を睨みつけてる視線を感じ、私はゾッとする。
そんな私を気遣ってか、王太子殿下がそっと手を取り、キュッと握ってくれた。
「マリア嬢、私の部屋に行きましょう。お茶の準備ができてますよ」
国王様に思わず物申してしまった緊張感で声が出ず、頷くのが精一杯だった私は、王太子殿下に引っ張られ、殿下の私室に案内された。
王太子殿下に深々とお辞儀をし、御礼の言葉を述べる。
「マリア嬢、よく来てくれました。楽しみにしていましたよ」
王太子殿下が碧い目を細めて、ニコリと笑いかけてくれた。金髪碧眼、眉目秀麗な王太子殿下のお姿に、私は見惚れてしまう。
この方の妃に……なれるかもしれない……?
今朝のシエナとの会話が頭をよぎり、ボッと顔が赤くなる。
大変! こんな赤らめた顔、王太子殿下に見られたら恥ずかしいわ……
「どうかしましたか?」
屈託ない顔で私を覗き込む殿下に、顔がますます赤くなり、もう私の意思では止められない。
近すぎです……殿下。
「美味しいお菓子を用意したんだ。マリア嬢と一緒にお茶しようと思って」
「ありがとうございます……でも、まず国王様にご挨拶を……」
真っ赤になった顔を見られ、顔から火が出る悪循環。
「そうだね。父上もマリア嬢が来るのを楽しみにしていたよ」
「……ありがたいお言葉です」
私は王太子殿下とともに謁見の間にむかって歩き出す。王太子殿下は美しい顔を綻ばせながら「後で王宮の庭を案内しよう。薔薇が綺麗に咲いているんだ」と声を弾ませていた。私は王太子殿下の楽しそうな様子が嬉しくて思わず笑みがこぼれる。
謁見の間でしばらく待っていると国王様が入室され、にこやかな笑顔で私に言葉をかけてくださった。
「マリア嬢、よく来たね」
「勿体無いお言葉、ありがとうございます」
私が深々と頭を下げていると、そばにいたヴォルク王弟殿下が上機嫌な様子で話し始める。
「兄上、マリア嬢が兄上の為に珍しいワインを持ってきてくれましたので、1杯いかがですか?」
使用人がワインを国王様に見せ「うむ」と国王様が頷くと銀杯にワインを注ぐ。
えっ!?
私は驚き、国王様の御前ということも忘れ、そのワインを凝視した。
……夢……だと……ここで国王様がお飲みになる1杯は銀杯も変色せず、毒味係にも何事もなかった……その後、国王様は命を落とされ、ワインから毒が発見され……私は弁明の余地も無いまま罪人になってしまう。
……夢だけど……この既視感にゾクリとする。
私、ワイン持ってきていないのに。
国王様は「いただくとしよう」と銀杯を持ち、香りを楽しんだ後、口をつけようとする。私はハッと現実に戻り、慌てて声を出した。
「恐れながら、国王様。そちらのワインは私が持ってきたものではございません。私、本日はワインを持参しておりませんから……そのような得体の知れないワインは危のうございます」
国王様はピクリと眉を動かし、手を止め、銀杯を置き「下げよ」と使用人に命じた。
「マリア嬢が持参したワインではない? それは真か?」
「はい……私は持参しておりません」
頭を下げたままだったが、しっかりと出した声は謁見の間に響き渡り、小さなざわめきがおこった。
「ヴォルク」
国王様が王弟殿下の名を呼ぶと室内に緊張が漂い、皆、沈黙する。
「お主がマリア嬢持参のワインと申したな? なぜ、嘘をついた。あのワインの出どころはどこだ? 後で話を聞く。わしの部屋へ参れ」
王弟殿下がわなわな震えながら、私を睨みつけてる視線を感じ、私はゾッとする。
そんな私を気遣ってか、王太子殿下がそっと手を取り、キュッと握ってくれた。
「マリア嬢、私の部屋に行きましょう。お茶の準備ができてますよ」
国王様に思わず物申してしまった緊張感で声が出ず、頷くのが精一杯だった私は、王太子殿下に引っ張られ、殿下の私室に案内された。
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