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番外編 バストリー・アルマンの事情
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…………正直、ロイ殿下には王になる器はないと思っていた。
現国王はたった一人の息子である殿下を甘やかしすぎている。傲慢、我儘、努力嫌い……これで民を導けるのかと、僕は密かに将来を懸念していた。
強いて言えば、ハイウォール家のテレーゼ嬢が婚約者である事だけが救いと言える。
ハイウォール家の後ろ盾がつくことに加え、テレーゼ嬢の聡明さは殿下の助けとなるはずだった。
だが、テレーゼ嬢が婚約破棄を望んでいると知った今、僕はどう動くのが正解なのか……
いや、だとしても……テレーゼ嬢からは婚約破棄はできないわけだし、王家に仕えることはアルマン家の誇りだ。迷うことなど……
……ない。ときっぱり言い切れない忠誠心の綻びに焦りを感じた。
黙りこくってしまった僕にテレーゼ嬢は顔を寄せ、耳打ちをする。
「わたくしにも王の血は流れてますのよ」
その呟かれた驚愕の言葉に僕は目を見開き、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。テレーゼ嬢の顔をこれでもかと言うほど凝視する。
テレーゼ嬢の満面の笑みは嘘を言っているとも思えず、瞬時に王家に伝わる双子の昔話が頭をよぎった。
まさか、ハイウォール家が双子の……?
「ああ、そうだ! とても珍しい茶葉を手に入れたのですよ。バストリー様は紅茶にお詳しいと聞きしました。今度、我が家にご招待いたしますね。ぜひ、我が兄達と珍しい紅茶を堪能しながら、素敵なひとときを過ごしていただきたいわ。楽しいお話をしながら……ね」
テレーゼ嬢は胸の前でパンッと手を叩くと表情をぱぁと明るくし、弾んだ声で喋り出す。
「善は急げ、です。早急に招待状の手配を致しますわ。それでは、今日はこれで…………」
何も言葉が出ず、呆然としている僕の横に立ったテレーゼ嬢は、微笑みの会釈と同時に低い低い声で囁いた。
「何卒、ご内密に。ハイウォール家を敵に回したくなければ」
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