鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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意外な強敵、現れました

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「アルベルト様……アルベルト様、痛いですわ」
 
 クラリスの声に我に返る。困った顔をしたクラリスが俺を見ていた。

「すまん……」
 
 頭に血が上って、気づかぬうちに力いっぱいクラリスの腕を握ってしまったようだ。

「大丈夫か?」
「大丈夫ですわ。それより、アルベルト様、どうかされましたか? いつものアルベルト様じゃなかったでしたよ?」
 
 クラリスに心配そうな目をむけられた俺は、その真っ直ぐな視線から逃れるように、ふいっと顔をそらす。

 どうかしたはそっちだろう!

「お前、簡単に男に触れさせるな。仮にも公爵令嬢なんだからな」
 
 顔をそむけたまま、俺の脳裏にさっきの出来事がよぎり、唇を噛む。

「公爵令嬢として……うーむ、たしかに」
 
 横目でクラリスを見ると、目線を下に落とし、小さく呟いていた。

 …………ちがう。
 公爵令嬢、だからじゃない……好きだから、俺がお前を好きだから。他の男に触れさせたくない。

「そうですわね。人がいるところでは、気をつけねば。ですね。ご心配、ありがとうございます」
 
 …………ちがーう! 
 人がいないとこなら大丈夫って意味じゃなーーい! そっちの方がよっぽど危ないだろ!

「お前……男をあんまり信頼するな。気をつけろ」

 俺はクラリスと視線を合わせる事ができないまま、ぶっきらぼうに注意をするが、クラリスは驚いたように目をまん丸くした。

「まぁ、あのお二方ですか? 王宮魔道士長様と王宮騎士様ですよ? それに、あの方々は私に危害を加えたり、殺したりはしません。ええ……絶対」
 
 なんだか、やけに自信ありげに……見方によっては得意気に答えている。
 俺はそのズレた返答に呆れながらも、やっとクラリスの顔をまともに見る事ができた。

「……殺されるって、なんだよ……いや、気をつけろっていうのは、そういうことじゃなくて……男にだな、その……」
 
 クラリスは目をクリッとさせ、不思議そうな表情をした。
 
 もう! なんて言えばいいんだ……この鈍感!

「アルベルト様?」
 
 首を傾げながら顔を覗き込まれ、赤面した俺は、再びクラリスから視線を外した。

 
 なぜ、俺が怒っているのか?
 なぜ、こんな状況になっているのか?
 
 それは、昨日のお茶会の時間まで遡る……
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