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あの日、恋に落ちました

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 お茶会を抜け出した俺はお気に入りの場所である中庭にむかう。
 嫌なことがあった時や気分が乗らない時に中庭でぼーっとするのだ。
 
 嫌なこと……俺はちょっと気分が沈んだ。
 
 次期国王は第1王子の兄上だ。
 兄上は優秀だし、俺は兄上を尊敬している。だが、俺も次期国王としての教育が施される。なぜなら、王位継承権第2位である俺は「もしも」の時に備えなくてはならないから。
 兄上は身体が弱いわけではないし、魔道士ランクもSランク。剣だって強い。
 
「もしも」ってなんだ?

 頭ではわかっている。
「もしも」兄上に不幸があった時でも、王家は揺らぐわけにはいかない。それが国民を守る王族の義務だ。その為には、最悪の事態も想定しなくてはならない。
 わかっている。わかっているけど……
 
 俺は「もしも」の時のスペアなのか!?

 そんな思考に襲われる時がある。

 そういう時は中庭に行き、芝生に寝転んで空を見上げる。
 スペアだっていいじゃないか。それで国が安泰なら……と自分に言い聞かせながら……

 中庭には人がまったくいなかった。
 みんな、お茶会で忙しいのだろう。
 
 春、真っ盛り。

 中庭はきれいに手入れをされ、色とりどりの花が咲きほこっていた。青い空、緑の芝生によく映え、目を楽しませてくれた。
 周りからは見えないであろう木の陰でゴロンと寝転ぶ。
 
 今日は王子スマイルを振りまいて、疲れたな……
 ああ……澄んだ空が……気持ちい……うおっっっっ!!

 ウトウトしかけていた時、足に何かが当たると「キャッ」という声と同時に、ドサッと俺の足の上に何かが倒れこんだ。
 びっくりして上半身を起こすと、俺の足に令嬢らしき少女がうつ伏せで倒れてる。

 ……え? 令嬢が? 俺の足の上で倒れてる? えっ?
 
 …………キミ、ダレ?
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