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あの日、恋に落ちました

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「いっったぁ……なにが……」
 
 俺の足に倒れていた令嬢は立ち上がると、俺の足を見て目を丸くし、その足の主である俺の方へゆっくりゆっくり顔を動かした。

「ご、ご、ごめんなさい!!」

 俺の存在を確認すると顔面蒼白になり、素早い動きで勢いよく後ろに飛び跳ね、謝罪とともに深々と頭を下げる。

「だ、大丈夫か?」

 突然の出来事に呆然としていたが、やっと状況を把握し、頭を下げている令嬢に声をかけた。
 早い話、令嬢は俺の足につまずき、そのまま足の上に倒れこんだ。
 
 つまり……コケた……えっ? 令嬢が?

「えっと……大変失礼いたしました。あの……おケガはありませんか?」

 令嬢は顔を上げると、俺の足を心配そうな顔で見る。
 
 まぁ、痛かったけど……いきなり倒れてきたわけだし。でも俺の足につまづいたって事は、もしかして俺のせい……ってことになるんだろうか……

「私は大丈夫だよ。君は大丈夫なの?」
「はい、私は大丈夫です」
「でも、相当強く打ったんじゃ……」
「ええ、でも、あざができた程度ですわ。大丈夫です」

 彼女は俺の大丈夫という言葉を聞き、安堵した表情をしたあと、令嬢らしく微笑し、俺の質問に答えた。
 
 ……それは良かっ…………えっ!? あざ? 大丈夫じゃないだろ、それ。

「いや、それ……大丈夫じゃ……」
「大丈夫ですわ。心配無用です。こんなあざ、いつものことですもの」
「いつもの、こと……なんですか?」
 
 いつもの……こと?
 微笑みは令嬢だけど、セリフがぜんっぜん令嬢じゃないぞ!

 彼女はあっと、右手で口を押さえ、視線を外し、小声で「しまったぁぁ」と呟き、うつむいた。
 察するに令嬢らしからぬ事を言ってしまったのを反省しているようだ。

 顔を赤くして、うつむいている彼女の姿がかわいく見えた俺は王子スマイルを浮かべ、思わず彼女を誘ってしまった。

「こちらで一緒に座りませんか? 気持ちいいですよ」
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