上 下
50 / 125
あの日、恋に落ちました

10

しおりを挟む
「義姉さま!!」
「クラリス!!」
「あ、ミカエル! ジェスター様!」

 クラリスが立ち上がる。膝枕直前で立たれた俺。

 おい、俺の頭どうしてくれるんだよ!

「何してたの!?」

 ミカエルがクラリスの腕を掴み、自分の方に引き寄せる。それを横目で見たジェスターはニコニコしながら、ミカエルの手の甲をひねり、ミカエルはジェスターを睨みながら、クラリスの腕を離す。
 そんな攻防戦が隣で行われていても、何も気づかないクラリス。たぶん、じゃれあってるのね、仲良しさん! とでも思っているに違いない……

 この鈍感……国宝級。

「アルベルト様がね、最近、眠れてないっておっしゃてたから、少しでも眠ってもらおうと思って……」
「ふーん、1人で寝かしときゃ、いいじゃん。なんで義姉さまが、その……ひ、膝枕なんてしてるの!」

 ミカエルの睨みの対象が俺に移り、俺はそっぽをむく。
 
 いや、お前らが邪魔したから、してもらってないからなっ!

「だって、枕がないと眠れないっておっしゃって……」

 言ってないよ? 俺、一言も言ってないから!

「ふーん……長年の付き合いだけど、そんな話、初耳だなぁ。いつから、お前、そんな繊細になったんだ?」

 ジェスターが俺の肩に手をのせ、にっこり笑う。もちろん眼鏡の奥の目は笑ってない……どころか大激怒だ。

「いや、その……未遂だぞ! お前らのせいで、未遂だ!」

 ミカエルとジェスターの視線にたまりかねた俺は、思いっきり叫ぶ。お前らタイミング悪すぎなんだよ!
 
 腕組したジェスターが冷ややかな視線を俺に浴びせ、怒りを潜ませた声音で口を開く。

「ほう。なるほど。触れ合いたいと……明日から3倍のリストを送るから、婚約者を早く決めろ」

 げっ! 今の3倍も婚約者候補リストあるのかよ! 
 シトリン家はどんだけ調べ上げたんだ!?

「アルベルトはこれを枕にして寝かしときゃいいよ!」

 ミカエルはキッと俺を見ると、どこからかレンガを持ってきた。

「ミカエル、ちょっとそれじゃ固すぎじゃ……」

 クラリスは、少し困惑したようにミカエルに意見する。

 そーだ、そーだ。クラリス優しい!
 ミカエル、それ、固すぎだぞっ。

「アルベルトは固い枕がいいって、前、言ってたよ」

 言ってねーよ!!

「それに、人がいると眠れないんだって」

 言ってねーよ!!

「だから、アルベルトの睡眠を邪魔したら、かわいそうだから、あっちでお茶しよっ」

 おい!!
 俺、ここで1人でレンガを枕にして寝るのかよ。
 寝れるかっ。

「俺も行……」
「はい! アルベルト、おやすみ。ゆっくり、寝てね」

 ミカエルは俺のセリフを遮るように言葉を発し、俺の言葉は跡形もなく消えてしまい、ミカエルがニコッとレンガを渡す。もちろん、目は怒り爆発だ……
 去りぎわ、ジェスターが俺の耳元で「明日のリストは僕が届けるから。楽しみしてろ」と言った。
 
 はぁぁぁ、明日、ネチネチ言われるのかぁぁ。 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

背広の話

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:20

蜂蜜色の初恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:360

宇宙人の冗談

O.K
エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

きょうのご飯はなぁ〜に?

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:404pt お気に入り:0

はかい荘のボロたち

青春 / 連載中 24h.ポイント:200pt お気に入り:2

僕は運命から逃れたい

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:56

雪降る季節が似合う人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,739pt お気に入り:1

そう それはあなたとの記憶

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...