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お出掛けすることになりました

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 そりゃあね、俺は王子だからさ、町に行くときに守護騎士がつくのは、まぁ、しょうがない。
 でもさ、普通はさ、王子のデートの邪魔をしないように、こっそりついてくるんだよなぁ……おいっ! なに、がっつりクラリスと話してるんだよっ!

「アルベルト様の守護騎士はエドワード様……?」
「クラリス、よろしくな」
「あの……て、天兄……いえ、エドワード様……まさか……」
「偶然だ。ぐ・う・ぜ・ん」
「もぉ!」

 なんだか楽しそうに話している2人を見て、疎外感を感じる俺。

 なに、2人で盛り上がってるんだっ!
 テンニイ? 何の話? 偶然? んなわけあるかっ! 王宮騎士トップのお前が王子の守護騎士を偶然やるわけないだろっ! お前に合った仕事しろっ!

「どこ行くんだ?」
「ん、と、文具店行って、カフェに行こうかと……」
「了解」

 2人で話を進めるなぁぁ。
 俺の存在……忘れてない?

 俺はクラリスの腕をガシッと掴み、引き寄せる。

「行くぞ、クラリス。エドワード、お前は隠れて見張ってろ。デート中は姿を見せるな。命令だ」

 仕方ない。あまり権力を振りかざしたくないが、邪魔されてなるものか。

「はい、王子」

 エドワードはにっこり笑うと恭しくお辞儀をし、歩き始めた。そして、すれ違いざまに俺の耳元に低い声で囁く。

「クラリスに手を出したら、王子といえど許しませんよ?」

 エドワードの本気の声に俺はゾクッとする。

 お前、どっちの守護騎士なんだよ!

 やっとクラリスと2人になり……まぁ、どこかでエドワードが見てるけどな。
 クラリスに目をむけると、薄っすら赤くなりうつむいていた。

「どうしたんだ?」
「アルベルト様がデートっておっしゃったので……デートだったんだ、と思いまして」

 えええ……なんだと思ってたんだよ……
 デートだろ、デート。俺達、婚約者同士なんだぞ。

限定ケーキ食べるんだろ? デートじゃないか」

 俺はクラリスの頭を帽子の上からポンポンと叩く。クラリスは薔薇色に頬を染め、満面の笑顔を俺にむけた。

「はい、カップル限定ですものね。デート、ですね」

 俺はクラリスのかわいさに直視できなくなり、そっぽをむき、クラリスの腕を再び掴むと、町の中心部にむかう。エドワードが見ている事も頭から吹っ飛び、俺はズンズン歩いていく。

 やばい……かわいい。
 今日、俺、平常心でいられるかな……
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