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お出掛けすることになりました

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 今、俺はカフェのテラス席にいる。

 暑くもなく寒くもなく、たまに吹く風が心地よくて、気分がいい。町を行き交う人々を眺めた後、俺は正面に座っている人物に目線をむける。そこには笑顔の……


 ジェスター。そして、隣で微笑むミカエル。

 
 何故だ? どうしてこうなった?
 俺のデートはどこいったぁぁ!?


 ――15分前――

「さぁ、入りましょ」

 クラリスと手を繋いだまま入店すると、ピンクのかわいいコスチュームの店員さんが俺達に気がつき、挨拶をする。

「いらっしゃいませ~」
「あのっ、予約してあるのですが……」
「はい、伺ってます」

 クラリスはくりっとした目をキラキラさせて、カフェのお姉さんに声をかけた。あまりにもわかりやすく素直な表情に俺は思わず、プッとふきだす。
 
 よっぽど食べたかったんだな、ケーキ。

 俺は嬉しそうに話しているクラリスを見て、今、ここにいるのが俺で良かったと思う。クラリスを喜ばせるのはいつだって俺でいたいから。

 カフェのお姉さんはポケットからメモを取り出し、確認すると笑顔を絶やすことなく、話を続けた。

「お連れ様はもういらしてますよぉ~」
「お連れ様?」

 クラリスも覚えがないのか、目をパチクリさせながら俺を見る。俺もわけがわからず、首を振った。

「お連れ様……って……」
「あちらにお座りですよ~」

 俺とクラリスはお姉さんの視線の先を見て、驚愕した。

「あら……」
「はぁ?」

 そこには、ミカエルとジェスターが優雅に紅茶を飲み、俺達と目が合うと手をヒラヒラと動かす。
 俺はどっと疲れが押し寄せてきた……
 
 なんで、2人がいるんだよっーーー!

「あら、偶然ですね……」

 クラリスはニコニコしながら、早く席に着きましょうと俺に促し、あいつらに手を振った。

 えっ? あいつらと一緒にお茶するの? 偶然ですませちゃうの? クラリス、順応性早くない? 俺、まだ理解が追いつかないんだけど……今日、デートだよな?

 なぜ、バレた? ミカエルがメイドに聞いたのか? それにしても、このカフェに男2人で入ったのか?

 ある意味、お前ら…………勇者だな。
 
 俺は悶々とする気持ちを抑えながら、ジェスター、ミカエルと同じ席に着く。

 店員のお姉さんが「テラス席空いてますよ~、今日は気候も良いのでどうですかぁ?」と勧められ、みんなで移動……なんで、みんなでなんだよ!

 ジェスターとミカエルがクラリスの隣と前にサッと座り、出遅れた俺はクラリスとは斜めの席になる。

 そして、今に至る……
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