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お出掛けすることになりました

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「えっと……今のメモは……?」

 クラリスは困ったな……とつぶやき、エドワード様、ザラ様には内緒にしてくださいね。と口に人差し指を立てる。

「すみません。今日、エドワード様に渡されたメモでして……ザラ様、エドワード様が案を練ってから、アルベルト様にお話しするそうです……アルベルト様を喜ばせたいから秘密にと言われてまして……」

 クラリス、それ、嘘だから。
 あいつらぁ、なに陰で計画立てているんだよ。俺が潰しにかかるのを警戒して、上手いことクラリスを丸め込みやがって。

「それ……どんな計画なんだよ」
「実は私もまだ読んでなくて……」

 まぁ、とにかく陰で何かしら計画してるってことか。ふぅん………………よし、速攻潰そう。

 でも……

 物寂し気な夕刻の町の風景を眺めながら、小さくため息をついた。今まで誤魔化し続けてきた不安な気持ちが溢れ出てきてしまう。

 次から次に婚約破棄案が湧いてくるのは、俺がはっきりクラリスに言わないからだよな。 
 
 情けない事に俺の気持ちを伝え、クラリスの返事を聞くのが怖い。きっぱりと断られたら、もう俺には望みがないのか? 他の男とクラリスが結婚するのを黙って見てなくちゃいけないのか? 

 クラリスの笑顔が他の男のものになるなんて……考えたくない……でも、このままってわけにもいかない。そんなこと俺にだってわかってる。うん、わかってるさ……

 自分の手をギュと力強く握りしめる。血が出るのではないかと思うほど、爪が手のひらに食い込んでいたが、張り詰めた俺の心には、痛みなんてまるで感じなかった。

「なぁ、クラリス……婚約のことだが……その……破棄する気は俺にはないから」

 大きく大きく深呼吸をし、ゆっくり確実に言葉を繋げる。

「……だから……だから、俺との結婚を考えてくれ」 

 窓に映った自分の顔を見つめ、今まで言えずにいた言葉を声にした。ドッドッドッと打ち続けている鼓動の勢いで心臓が口から飛び出そうだ。

 クラリスの顔が怖くて見れない。もし、顔をしかめていたら? 困っていたら? 戸惑っていたら?
 辛い顔をさせてまで俺はクラリスと結婚したいか? 答えはノーだ。クラリスが困ることはしたくない。でも、諦めるのは嫌だ。絶対、嫌だ。だから……

「今すぐ返事をしなくていい。俺の気持ちを知ってほしかった」

 クラリスが俺の前からいなくなるかもしれない恐怖。他の男のものになるかもしれない恐怖……そんな思いが俺の心を支配する。

 今、この瞬間に決着がつくのは怖い……もう少し望みを持たせてくれ。
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