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お出掛けすることになりました

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 静寂が車内を包み、馬車の車輪のカタン、カタンと回る規則的な音だけが響き渡る。
 
 どれくらい時間が経っただろう……ほんの数十秒かもしれないが、俺にはとてつもなく長い時間に感じた。
 
 クラリスからの返事は……

 無言。

 俺はこの静けさに耐えられなくなり、覚悟を決めてゆっくりとクラリスに目をむける……

 ……
 ……
 ……寝てるしっ!

 気が抜けたのとホッとしたのとで無意識に「なんだよ~」と言葉が漏れ、大きく大きく息を吐いた。

 俺の一世一代の求婚は空振りに終わったわけで……緊張が解け、よく寝ているクラリスを見ていたら、無性におかしくなって、起こさないように声を殺して笑う。

 本当に俺、情けねーな。

 今度は言葉と心の準備をして求婚するからな。もちろん、お前の意識がある時にだ。

 俺は眠っているクラリスの白く小さい手に触れ、再度の求婚を誓う。

 俺が触れていてもコクリコクリと首を前後に動かすクラリスに、男の前で熟睡するなよと苦笑しつつ、あの体勢は首を痛めないかと心配になった。

 クラリスの横に移動し、頭をそっと俺の肩に乗せると、すぅすぅ寝息をたてていたクラリスは楽しい夢でも見ているのか、頬を薄桃色に染め、にっこり笑った。俺は思わず視線を外したが、さっき求婚した時の鼓動(無効になったけど)とは、また違う鼓動が早鐘を打ち続け、俺の理性がグラグラ揺れてしまう。

 心臓、さっきからフル稼働してばかりなんだが、俺、早死にしない?

 長いブラウンの髪の毛が俺の腕にかかり、微かに甘い香りがして、俺は目眩がした。
 クラリスの柔らかそうな唇に目がいってしまい、チラッとでも、今、頭に浮かんだ事を必死に否定し続けるが、どうしてもクラリスの唇が目に入り…………ほら、だって俺も男だし…… 

 これくらいは許してほしいと……自分に言い訳をしながら、俺はクラリスの髪にそっとキスをする……
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