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お出掛けすることになりました

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 王宮に着き、馬車がガタンと大きく揺れて、動きが止まる。

「到着致しました」

 婚約者同士の俺達に気を使ったのか扉の外から御者の声が聞こえ、俺は労いの言葉を添え、返事をした。
 クラリスを起こそうか、もう少しこのままでいるか思案しているとクラリスがモゾッと動き「ん、んー」と小さく声を漏らす。

「……あれ……アルベルト様?」
「起きたか? よく寝てたな」

 俺の肩に寄りかかっていた状況に改めて気がついたクラリスは目を見開き、バッと頭を上げた……本当にわかりやすい奴だな。

 そんな慌てた様子のクラリスを見て、俺はかわいらしく感じクスッと笑う。クラリスは顔をボッと赤らめ……赤らめ? 赤らめって……えっ?

「あの、アルベルト様……すみません……寄りかかってしまって……」
「……いや、気にするな」

 そもそも俺が寄りかからせたわけで……えっと……えっ? そんなに赤くなられたら、俺、どうしたらいい?

 クラリスは赤く染まった頬に手をあて、恥ずかしそうにうつむく。正直、クラリスからこんな女の子みたいな反応が返ってくるとは思わなかった俺は戸惑いを隠せない。

「すみません……本当に……アルベルト様にはジェスター様がいらっしゃるのに……」

 ……えっ?

 アルベルトサマニハジェスターサマガイラッシャルノニ……ジェスターサマガイラッシャルノニ……ジェスターサマガ…………エッ?
 ……
 ……
 ……そっちの誤解かぁぁ!!
 その誤解を解くのを忘れてたぁ!

「あのな、俺とジェスターはただの友人だ」

 俺は馬車の窓枠に肘をついて、少しブスッとクラリスに物申す。

 あんな反応されたら期待するだろ? 俺を意識しているのかも……なんてさ。思っちゃたわけですよ。それが、ジェスターに悪いからって……2重の意味でショックなんだけど。

「そう、なんですか?」
「そうだ。ああ、言っとくが、俺は男性に興味はないぞ」
「そう、なんですか?」

 ええ……そっからかよぉ。
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