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隣国王子がやってきました

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 学園に着き、セドニー王子の事は先生に任せ、俺は自分のクラスの扉を開けた。授業中だったので静まりかえった教室に扉の音が響き、一斉にクラスメートが俺を見たが、公務で早退、遅刻はいつものことなので、俺がペコリと頭を下げると、何事もなかったかのように授業が再開される。
 自席に座り、テキストを机に広げていると、前の席の令嬢からスッとメモを渡される。ミカエルからのメモだった……

「なんでセドニー王子が義姉さまと同じクラスなの!? アルベルト、なにやってたんだよ!」

 顔を上げるとミカエルは恨みがましい目で俺を睨んでいる。その目だけで呪われそうだ……いい男が台無しだぞ。

 ミカエルの視線を無視し、俺は1週間ぶりの授業に集中…………できるかぁぁ!
 クラリスの事が心配で先生の声がまったく頭に入ってこない。とにかく早く授業が終われ……と祈り続けた。

 待ちに待った休憩になり、俺のところにすぐさまミカエルがやってきて、不服そうな顔をする。

「アルベルト、久しぶり。どういう事?」
「いろいろあったんだよ! ほら、セドニー王子の様子を見に行くぞ」

 今はミカエルと揉めている場合じゃない。俺は足早に教室を出て、クラリスの元へ急ぐ。

 クラリスの教室に入ると人だかりができていて、その中心にいるセドニー王子は、クラスメートから挨拶や質問などを受けて、にこやかに会話をしていた。
 教室のすみの方でクラリスとジェスター、あと、クラリスと仲の良いローザ嬢がコソコソと話しているのが目に入り、セドニー王子がクラリスに接触していない事に俺は胸をなでおろす。

「セドニー王子の様子を見にきたが……えらい囲まれてるな……」

 クラリス達に話しかけると、俺に気がついた3人は顔を見合わせた。微妙な空気の中、ジェスターがブスッとした顔で尖った口調で俺を咎める。

「セドニー王子は我がクラスで人気者だ。それより、アルベルト。大事な国のお客様だろ? 学園のテキストぐらい、ちゃんと用意しろよ。国の恥だぞ」

 はっ? テキストがない? そんなバカな……
 昨日しっかり確認したし、ナクサスがそんなミスをするはずが……

「準備万端だと係の者に聞いていたぞ……確認しとくが……」
「そっちで完璧に準備できてないと、こちらも困るんだが」

 苛々した様子で俺に文句を言ったジェスターが悔しそうに顔を歪める。たしかにテキストがなかったのはこちらのミスだが……ジェスターの様子がおかしい。どうしたんだ?

「わかった。すぐに準備するよう使いを出す……が、なんか他にあったか? お前、様子がおかしいぞ?」
「アルベルト王子!!」

 囲まれていた人だかりから、ひょこり顔を出すセドニー王子に名を呼ばれ、軽く会釈する。クラリスに近づいてほしくないので、人気者のセドニー王子はそのまま囲まれてて下さい。
 俺の願いに反し、王子は集まっていたクラスメート達に謝りながら、こちらにやってくる。

「セドニー王子、大丈夫ですか? テキストの件、聞きました。とんだ失礼をしてしまい、申し訳ございません。すぐに手配いたします」

 俺は王子に謝罪し、すぐ使いの者を呼ぼうとすると王子が満面の笑みを浮かべる。

「いえ、大丈夫ですよ。テキストは隣の席のクラリスに見せてもらいました。クラリスはとても親切ですね」
「そうでしたか、それは良かっ……えっ!? 隣の席の……」
「クラリスです」

 思わずニコニコと聞き流しそうになったが、隣の席のクラリス? クラリスの席と隣なのか!?
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