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隣国王子がやってきました

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「はい、僕、クラリスと仲良くなりました」

 はぁぁぁ!? めっちゃ接触してるじゃん!! ジェスターの態度がおかしかったのはこれかっ!

「セドニー王子、クラリスの義弟おとうとのミカエルです。義姉あねがなにか失礼をいたしましたら、すぐにでも席をお変わりください。本当にすぐにでも」
 
 口元だけは微笑みの形をとり、お辞儀をしながらセドニー王子に挨拶をするミカエル。
 身構えている俺達の事などまったく気づかず「ちょっとぉ、ミカエル、酷くない? 義姉ちゃん泣いちゃうよ?」とぶつぶつクレームをつけているクラリスを余所に俺達3人は額を寄せ合い、小声で揉める。

「どうして隣になったんだよ!?」
「僕だってわけわからないよ。先生の決定事項だ」
「ジェスター、何やってたのさ!?」

「1週間だけですし、僕はクラリスにテキストを見せてもらおうかな。いいですか? クラリス」
「ダメです」

 セドニー王子が俺達がコソコソ話しているのを笑顔で見ながら、クラリスに提案をするのが聞こえ、素早く俺が返事をした。

 そんなもん、ダメに決まってんだろ。隣の席っていうのだって我慢の限界なのに、テキストを一緒に見るだとぉ。なに、いけしゃあしゃあとクラリスと距離を縮めようとしてるんだよ!

「大切な王子様にご不便をかけるわけにはいきません。早急、速攻準備させます。あと……」

 俺は腹立ちを悟られないよう、いつもの王子スマイルを浮かべ、にこやかに穏やかに話す。クラリスをチラッと見て、セドニー王子に牽制の言葉を投げつける。

「このクラリスは私のでして……」

 ……だから、近づくなっ! 
 と言いたいが、王族の掟として、そこまで言えないのが悔しい。
 
「知ってますよ。アルベルト王子の婚約者なのは。はですけどね」

 セドニー王子は余裕たっぷりに目を細める。

 だよな……知ってて、手を出しに来たんだもんな。

 今まで、黙っていたクラリスがコソッと俺に耳打ちをした。

「婚約破棄が隣国まで噂になっているのでしょうか?」

 この戦闘態勢の中、痛恨の一撃をクラリスがぶっ込み、心のダメージ過多で意識が遠のきそうになるのを俺は必死にこらえていた。
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